では、ここからは先はプロットの項にあった『タイトル、テーマ、人物、舞台や時期、用語、あらすじ』について、個々詳しく並べていきたいと思います。
まずはタイトルについて。
お話もできていないのにまずタイトルで悩むのか……? と疑問を感じた方は気にしないでください。仮でも良いからタイトルがないと始まらない! 本文に行けない!! という方向けです。ぶっちゃけ私もその一人です。……合理性は特に何もないのですが、タイトルを決める事で自分の中で作業時間や頭のリソースの割り振りが決まっていくような気がするんですよね。自分でも不思議なのですが、逆にファイル1、作品2、のままではおそらくまともに作業ができないと思います……。
タイトルをつける上での必須事項は、タイトルだけで『面白い』ではなく、タイトルを見ると中身が『面白そう』です。この二つは似ているようですが、実は全く違うものなのです。
読んでみれば分かります、試してみれば分かります……は、逆に言えば『読んでみなければ永遠に分からない=新規の読者さんは全く入ってこない。かつ、既存の読者さんは少しずつ離れていく』という、ちょっと危険な状況を示しています。
『あの商品の事は知らないけど、名前だけなら耳にしている。なんかあれ有名だよね』というのが理想。やはり誰だって自分が世に送り出した作品の人気は出て欲しいものですし、シリーズを少しでも長く続けていきたいものですよね。
となると、分かる人『だけ』分かるでは不親切、知らない人『でも』思わず手に取ってみたくなるようなものを……くらいの気持ちで取り掛かるのが大切なのではないかな、と。
その第一歩がタイトルなのです。
まずはこれを踏まえていただいた上で、さらに細かく条件を列挙していくと、
『作品のジャンルがそれとなく分かる』
『難しい字は使わなくても、ある種読みづらい言葉の並びにしてみる』
『どっかにカタカナを入れてみる』
……というのが、自分の中では引っかかりが良いでしょうか。
一つ目のジャンルについては賛否両論あると思いますが、これは油性ペンを思い浮かべれば分かりやすいのでは。お店の棚にずらりと並ぶペンの群れがどんな太さで何色のインクなのかも分からない、では手に取りようがないですよね。ある程度『ジャンル、作風』の見えるタイトルにすれば、キャップ部分にインクのカラーを施し、側面にペンの太さを数字で表記する事ができます。『赤ペン欲しかったのに黄色じゃねえか!』といった問題も自然とクリアできるはずです。
ジャンル、設定、世界観、あるいはいっそヒロインの名前などを盛り込む事で、タイトルだけでは完結せず本文の情報を滲み出させる、つまりはタイトルだけで『面白い』ではなくタイトルを見ると中身が『面白そう』なものに繋がっていくのかな、と。
二つ目、これは『とある魔術の禁書目録』『未踏召喚://ブラッドサイン』などが分かりやすいかも。するっと読めてしまうタイトルはそのまま流されてしまう事があり、読者さんの目を『留める』『止める』ためには、敢えて読みづらい箇所を一つ作っておくという方法があります(その点では、実は『ヘヴィーオブジェクト』はタイトルだけ見るとちょっと危ない訳ですが……)。ただ、字面が難解過ぎてそもそも読めない、ではどうにもならないので注意が必要ですね。
この点に関しては、漢字の使い方の他にも一定以上タイトル文字数を多くする、あるいは逆に少なくする、などでも同様の効果を生み出せるかもしれません。
ちなみにタイトルに特殊ルビを振る場合、『最初の一文字目にはルビを振らない』のがお約束だそうです。これは棚に差す時、あかさたな順だと面倒な事になるからだとか。
三つ目、これは特に統計を取った訳ではないのですが、やっぱり日本人ってカタカナの横文字要素がお好きなのかなあ、と。当時はあまり気にしていませんでしたが、改めてよくよく考えてみると、自分の作品はほとんど全てにカタカナ横文字要素が入っています。
それから、これより優先度が低い問題に『各章のタイトルをつける』といったものがあります。
こちらについては目次に並べた時に美しくなる仕上がりを意識しています。
例えば、『四章立てなら東西南北を組み込んでみる』『七章立ての場合は日月火水木金土を一つずつ割り振ってみる』などですね。
章タイトルについては、作品タイトルと違ってダイレクトに人気へ繋がるほどではありません。なので、考えるのが面倒なら書かない、という選択でも全然問題ないと思います。……私の場合だと、作品タイトルと同じで章タイトルもあらかじめ並べてしまった方が気分は乗りますが。
参考までに、自分の作品の章タイトルだと、
第一章 猫の手も借りたい Cat_or_Dog_Fight.
(とある魔術の禁書目録。日本語の短文+英語の短文。日本語については各章で文字数合わせたりも)
第一章 どこかに水着の姉ちゃんはいないのか >>オセアニア方面争奪戦
(ヘヴィーオブジェクト。日本語の短文+戦場の場所)
第一章 死神がやってくる@陣内忍
(インテリビレッジの座敷童。日本語の短文+誰の視点の物語かを明示)
(Stage 01 Open 04/01 00:00)
ステージ01 エイプリルフールと言ってくれ
「さあ、あにうえ」
「殺せるものなら殺してみろ」
(未踏召喚://ブラッドサイン。メインは日本語の短文で、章の開始時間と象徴的な台詞の引用)
などがあります。
割と自由にやっていますが、作品のイメージを連想しやすい形を意識しています。特に『ヘヴィーオブジェクト』では転戦するため場所を、『インテリビレッジの座敷童』では一人称視点が章ごとに切り替わるため人を、それぞれ強調したものにしています。
章タイトルが並ぶ目次の最大の意義は『本文をスラスラ読むための下準備』だと思いますので、単純にページ数を表記する他に、前段階としてあると便利な情報をさらっと書き込んでおく、というのも悪くない使い方ではないかな、と。
その中には、本文に入る前からすでにある種の期待や高揚を促す、といった効果も含まれる訳で。こちらは、お笑いライブなどの『前座さんのトークで本番前に客席を温めておく』というのと似たような感じかもしれません。