編集部ブログ

電撃文庫1月刊は『霊感少女は箱の中』に大注目!

2017.01.11

皆さん明けましておめでとうございます。

お正月は寝正月になってしまった電撃文庫編集部のわらふじです。

今年も電撃文庫をよろしくお願いいたします。

 

ということで、新年が始まりさっそく電撃文庫1月刊が発売されました!

アニメ放送間近の人気作品から話題作まで豪華ラインナップでおくる電撃文庫1月刊をぜひ手に取ってみてください!

 

今回は2017年わらふじのオススメ作品1発目としまして、電撃文庫1月刊のなかより

この寒い季節をさらにぞっとさせる……甲田学人さん待望の最新作

『霊感少女は箱の中』(著/甲田学人、イラスト/ふゆの春秋)

をピックアップ!

 

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鬼才・甲田学人が描く新たなる学園心霊ファンタジー、開幕

霊感少女は箱の中

著者/甲田学人 イラスト/ふゆの春秋
定価(本体650円+税)

試し読み

 

あらすじ

――――――――――――――――――――

「おまじないを誰かに見られたら、五人の中の誰かが死ぬ」
 銀鈴学院高校に転校してきた少女・柳瞳佳。前に心霊事故に遭遇し退学処分となった瞳佳だが、初日から大人しめの少女四人組のおまじないに巻き込まれてしまう。
 人が寄りつかない校舎のトイレにて、おそるおそる始めたおまじない。人数と同じ数を数え、鏡に向かって一緒に撮った写真。だが、皆の画面に写っていたのは、自分たちの僅かな隙間に見える、真っ黒な長い髪をした六人目の頭だった。
 そして少女のうちの一人、おまじないの元となる少女が、忽然と姿を消してしまい……。
 少女の失踪と謎の影が写る写真。心霊案件を金で解決するという同級生・守屋真央に相談することにした瞳佳は、そこで様々な隠された謎を知ることになる──。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

転校初日して早々に柳瞳佳は、銀鈴学院に通う少女たちのなかで流行る不気味なチェーンメールに巻き込まれ――

 

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このチェーンメールをきっかけに始まった、彼女たちの周りで起こる不可思議な現象。

瞳佳と同じ学校に通い、心霊相談を生業とする少年・守屋真央。

そして、彼を中心として活動する『ロザリア・サークル』の存在。

……物語の真実はご自身の目でお確かめください!

 

さ・ら・に!

イラストを担当するのは、スタイリッシュかつ透明感のあるイラストで名高いふゆの春秋さん!

 

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瞳佳が表紙のカバーイラストはもちろん!

 

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芸術的なタッチで描かれる本文中のイラストにもご注目下さい!!!!!!

 

現代ファンタジー小説の旗手・甲田学人が描く『霊感少女は箱の中』をぜひお見逃しなく!!

 

作品特集ページは下記をクリック!

 

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ただいま電撃文庫1月刊が発売中です!

2017.01.10

みなさんこんちはっす! 電撃文庫編集部です。

2017年最初を飾る、

電撃文庫の初売りですよ~!!

七福神まで踊り出す、御利益満点!! おもしろさも満点です!!

今年一発目となる電撃文庫1月刊、期待の新作をピックアップしてご紹介します!

まずは、電撃文庫が毎月一押しの作品を紹介する“激オシ!!”

今年一冊目の“激オシ!!”タイトルはこちら!

 

新作!!

霊感少女は箱の中

鬼才・甲田学人が描く新たなる学園心霊ファンタジー、開幕!

霊感少女は箱の中

少女の失踪と謎の影が写る写真。心霊案件を金で解決するという同級生・守屋真央に相談することにした瞳佳は、そこで様々な隠された謎を知ることになる──。

 

さらに今月はなんと7つの新作がラインナップです!!

勇者のセガレ

家族団らん>>>>>>世界平和!?
『はたらく魔王さま!』コンビが贈る、新たなる庶民派ファンタジー開幕!

勇者のセガレ

 

迷宮料理人ナギの冒険 〜地下30階から生還するためのレシピ〜

『魔王なあの娘』ゆうきりん最新作!
料理スキルを駆使して、無限に続く地下迷宮から脱出せよ!

迷宮料理人ナギの冒険 〜地下30階から生還するためのレシピ〜

 

だれがエルフのお嫁さま?

まじめだけどちょっぴりエッチ!?
電撃文庫MAGAZINEで評判を博したファンタジックラブコメディ!!

だれがエルフのお嫁さま?

 

《ハローワーク・ギルド》へようこそ!

《転職ギルド》の面々と依頼者たちが贈るファンタジーお仕事コメディ!

《ハローワーク・ギルド》へようこそ!

 

ドリームハッカーズ コミュ障たちの現実チートピア

相手の脳をハッキングして、世界を変えろ!
ちっぽけな中学生の過激なる学園生活!!

ドリームハッカーズ コミュ障たちの現実チートピア

 

東京ダンジョンスフィア

VR技術の暴走でダンジョンが発生!
創造主の脳内世界を攻略せよ!

東京ダンジョンスフィア

 

ぼくらはみんなアブノーマル

“バグ持ち”美少女たちを救え!
問題だらけの青春ラブコメ!!

ぼくらはみんなアブノーマル

 

その他新刊はこちら!!

エロマンガ先生(8) 和泉マサムネの休日

今語られる、和泉兄妹の過去!
シリーズ最大の謎が明かされる人気シリーズ第8巻!

エロマンガ先生(8) 和泉マサムネの休日

 

なれる!SE15 疾風怒濤?社内競合

今度のミッションは立華&藤崎が相手の社内競合案件!?
萌えるSE残酷物語、波乱の展開!

なれる!SE15 疾風怒濤?社内競合

 

俺を好きなのはお前だけかよ(4)

最近のラノベに退屈したなら、読んでみてくれ。
これが、イマドキのラブコメだ。

俺を好きなのはお前だけかよ(4)

 

そのほか新刊は!エンペロイダーを巡る戦いは最終局面へ―― 『螺旋のエンペロイダー Spin4.』、初遭遇モンスター大出現!?『新フォーチュン・クエストII(8) 月の光とセオドーラ』など、待望の最新作が続々と登場です!

螺旋のエンペロイダー Spin4. 新フォーチュン・クエストII(8) 月の光とセオドーラ

 

エロマンガ先生(8) 和泉マサムネの休日』/『なれる!SE15 疾風怒濤?社内競合』/『俺を好きなのはお前だけかよ(4)』/『螺旋のエンペロイダー Spin4.』/『新フォーチュン・クエストII(8) 月の光とセオドーラ』/『勇者のセガレ』/『霊感少女は箱の中』/『迷宮料理人ナギの冒険 〜地下30階から生還するためのレシピ〜』/『だれがエルフのお嫁さま?』/『《ハローワーク・ギルド》へようこそ!』/『ドリームハッカーズ コミュ障たちの現実チートピア』/『東京ダンジョンスフィア』/『ぼくらはみんなアブノーマル

 

試し読みページはこちらから!

 ◆電撃文庫公式サイト 新刊情報ページ

http://dengekibunko.jp/newreleases/

電撃文庫の最新刊を読めちゃうのは電撃文庫公式サイトだけ!

 

みなさん気になる新刊は試し読みしてチェックしてみてくださいね♪

電撃文庫からの耳より情報でした~。

1月10日発売!『勇者のセガレ』特別掌編第四弾!

2017.01.10

『勇者のセガレ』特別掌編、最終第四弾の公開です!

 

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⇒作品紹介はコチラ!
(※ページの一番下には試し読みもありますよ!)

 

☆☆☆掌編・第四弾!☆☆☆

 自然はどこでも美しい

 

「ああっ!?」

「んん?」

 間もなく和香が通う中学校、北平中学に到着しようとした頃。

 少し開けた場所でディアナが大きな声を上げて立ち止まった。

「ノドカ! あれ! あれ!」

 興奮した様子のディアナは、慌ててサングラスを外して遥か遠くを指差した。

 和香はディアナが指さす先よりも、ディアナの目の周りが若干赤くなってしまっていることが気になった。

だが、それを指摘するとディアナは顔中真っ赤にしてしまいそうなので言わないでおく。

 仕方なくディアナが指さす先を見るが、

「……ん? 何?」

 家、町並み、少し茶畑。ビル。

「何?」

 ディアナが何を指差しているのか本当に分からず、ディアナが興味を覚えそうなものを必死に探すが、それでも全く分からない。

「あれ! あれってフジサンですよね!?」

「え!? 富士山!? どこに見えるの!?」

 二人がいるのは思い切り街中、しかも特に高台というわけではない。

 冬、晴天に恵まれると、学校の上階から富士山が見えることは知っていた。

 だが、通学路の途中でしかもこんな街中から富士山が見えるポイントがあったのだろうか。

「あれ、あれそうですよね!」

「えぇ…………え、ええええ!?」

 ディアナと顔を寄せて、指差す先を必死で眺めて驚いた。

 低層のビルとビルの隙間。

 本当にたまたまそこだけのぞき穴のように開いたところから、確かに冠雪した富士山の山頂が覗いていた。

「よ、よく気づいたねあんなの」

「私、日本に来たら一度は見てみたいなって思ってたんです! とても美しい山だと伺っていましたから!」

 典型的な外国人観光客のようなことを流暢な日本語で言いながら、光線で少し灼けた目の周りも気にせずにはしゃぐディアナ。

 その明るい顔と声に、和香は少しだけほっとする。

 先日の戦いで、ディアナは心に大きな傷を負っている。

 だが少なくとも、ふとした瞬間に見せる明るい表情に、あの戦いや異世界の化け物が影を落とした気配は見られない。

 どこまでも、前向きなのだ。

 こんな姿を見ていると、本当にお兄ちゃん特にいらないよなーと思ってしまうが、それを今口に出しても脈絡のない悪口でしかないのでぐっとこらえる。

「来る前から、富士山知ってたんだ」

 今のディアナの言い方は『フジサン』という名の山について、日本に来てから情報を仕入れたのではなく、ずっと以前から知っている者の言い方だった。

「勿論です! フジサンは、アンテ・ランデの人々にとっては神の山なんです!」

「そうなん…………ん?」

 そうなんだー、と何気なく返事をしようとして、和香はあることに気づき背筋が寒くなる。

「待って、まさかディアナさん、それって」

「はい! もちろんヒデオとマドカの故郷にある山、という意味で!」

「……」

 富士山は静岡県と山梨県にまたがる活火山であり、父も母もその親戚も、静岡にも山梨にも全く縁が無いから『ヒデオとマドカの故郷にある山』という表現には違和感を覚える。

「今ではアンテ・ランデの多くの山に『フジ』や『フジサン』の名がつけられています」

「……やっぱり」

「前にもお話した、ヒデオとマドカの旅を描いた絵画『霊峰に暁を臨む勇者ヒデオ』に描かれた山は、今やヒデオ・フジと別称されているほどです!」

 

 

「……ってことらしいんだけど」

「嘘だろ……」

「嘘でしょ……」

 その夜、ディアナからの衝撃の告白を何気なく教えると、父も母も頭を抱えて食卓に突っ伏してしまった。

「なんだヒデオ・フジって……」

「知らないわよ。そんな四股名の力士でもいたんじゃないの」

 現実逃避する両親を、頼りなげに見る中三の娘。

「あれだよな。その絵って、もしかしなくてもガザディの北壁の……」

「多分そうよ。尾根を下ってるときに、トルジェーソの生き残りだって画家さんと会ったじゃない」

「あの野郎余計なことを」

「なんかレスティリアの国宝なんだってさー」

「別に絵がどう扱われてても構わんが、何でそれでガザディの北壁がフデオ・フジになるんだよ。あれ山脈じゃないか」

「というかあなた、どこかで富士山の話なんか人にしたの?」

「覚えてないよそんなの。お前こそ誰かに話したんじゃないのか?」

 勇者と大魔導士の白熱する責任の押し付け合いに、和香も苦笑するしかない。

「どうせどこか旅先で見た山が富士山に似てるとかそういう話したんじゃないの? ディアナさんのお父さんとかお母さんあたりにさ」

 世間話の範疇として、有り得ない話ではない。

 和香には海外旅行の経験は無いが、もし将来海外留学でもして日本の光景と似た風景を発見したら、きっとそういう話を現地の人にするだろう。

 父と母の場合、相手が国の重鎮であったため、彼らが迂闊に何かを語ればその情報は瞬く間に巷間に流布してしまうだろう。

「いいじゃん別に。どうせアンテ・ランデの話なんでしょ? 向こうの人が勝手にやったことなんだしさ」

「和香、お前な、考えてみろ。お前が何か凄いことして功績が認められたとして、お前の出身地だからこの辺りの住所地を『所沢市和香町』にするとか言われたら困るだろ?」

「……う、それは」

「お前の功績を讃えて所沢駅を和香駅にしようとか言われたら、勘弁してくれって思うだろ」

「絶対やめてほしいわそんなの」

「康雄がもし本当にアンテ・ランデで勇者になったとしたら和香も他人事じゃないぞ。自分が全く知らない国で、康雄の勇者としての功績を讃える流れでお前の名前が川とか建物とかにつけられたりとか、可能性十分にあり得るぞ」

「……お兄ちゃんが勇者になれるとか私全く思ってないけど、今初めて本気でやめて欲しいって思った」

 やや古びた蛍光灯が黄色い灯りを落とすリビングの中で、かつての勇者と大魔導士とその娘が、今まさにトレーニングに出ている勇者候補の少年を思い、重いため息を漏らしたのだった。

 

 

「そういうわけで、私ノドカを学校にお送りした後、少しだけ散歩して富士山が見える場所を探したんです」

「あ、そ、そー……」

 その日夜の、ランニング中、ティアナは朝の出来事を嬉々として語るが、今日も康雄は、相槌を打つのすら苦労するほどに息が絶え絶えである。

 先日の腕時計騒ぎのときもそうだったが、ディアナはランニング中にもよく喋る。

 康雄にとっては走っている最中に呼吸を乱すように喋るなどあり得ない事態だ。

 しかしよく考えれば、戦闘行動は運動である。

 運動中に冷静な意志疎通ができなければ、それだけで命が危険に陥る可能性がある。

 そう言われてはいるのだが、大体はまともな会話にならずに最後にはただ無言で走るだけで終わる。

 まだトレーニングを始めて一週間であるということを考えればやむを得ないところはあるが、これでは勇者どころか一兵卒になれるかどうかすら怪しいものだ。

ちなみにディアナは、魔法か何かで既に目の周りの治療は終えたらしく、康雄が学校から帰宅した頃にはもうサングラスをしていなかった。

「そん……なに……富士山……みたがっ……」

「もちろんです!」

 息一つ乱さず力強く拳を握るディアナ。

「ふ、ふーん…………ふーん……」

 アンテ・ランデの多くの山に『フジサン』と名付けられてしまっている、という話に、何か聞き覚えがある気がして、言葉少なに走る間、康雄はずっと考えていた。

「……あ……はあ、はあ……おぼい……思い出した……富士山……」

「はい?」

 ランニングを終えた玄関で吐き気すら覚えながら、康雄はようやく思い出した。

「近くに…………ふ、富士山、あ、ある……」

「えっ!?」

 ディアナの大きな瞳が、より一層大きく見開いた。

 

 

 それはどう見ても単なる築山だった。

 普段滅多に使うことのない家のパソコンを起動し、康雄は『所沢』『富士山』で検索する。

 すると狭山丘陵にある富士山を模した富士塚、『荒幡富士』がヒットした。

「昔、学校の校外学習かなんかで行ったんだけどさ。こういうの、富士塚っていうんだ」

「フジヅカ?」

「ああ。昔は富士山の麓に行くことだって難しいだろ? でも日本中あちこちから富士山は見えたし、あの印象的な山の形は絵とかでも簡単に伝わる。だからまぁ、親父や母さんもアンテ・ランデでそういう話をして、雪被った山とか、高い山とか、似たような形とか、そういうのが今、そっちでなんとか富士って呼ばれてるんだろ。こっちも一緒」

 解説を読んでいくと、所沢市内にある『荒幡富士』は明治期に合祀された神社にあった富士塚が移転されたもので、元々のものより大きくなっているらしい。

「まぁ、今はもうそんな役割は負ってないけど、昔からみんな富士山って山には、特別な思いを抱いていたんだ……って、まぁ昔学校の先生に聞いた話の受け売りだけど」

 言いながら康雄は、ブラウザを閉じて電源も落とす。

「だから何だって話じゃないけどさ、なんだろう、未だに全然ディアナの足元に及ぶ気もしないけど、勇者の偉業にかこつけて富士山の名前つけちゃうような、そういう根っこの精神性が似てるって話を聞けただけでも、ちょっとやる気出て来た。別にこれに限らず、なんとか富士って日本中にあるから」

「今見せてくださったアラハタフジには、登れるんですか?」

「いや、確かダメだったと思う。一応神社の御神体的な扱いだった気がするし、登るのは罰当たりなんじゃないかな。それくらい神聖視されてたってことなんだろうけど」

「……でも、分かります。憧れる気持ち。遠くから見ただけでも、美しい山だと私も思いましたから」

 そう言うと、ディアナは小さく微笑む。

「私も、ヤスオに見て頂きたいレスティリアの自然が沢山あるんです。ヒデオもマドカもきっとご覧になった、美しい風景を」

「……自分が言ったことだし、頑張るよ」

 康雄がアンテ・ランデに行くことがあったら、それは決して物見遊山ではない。

 かの地に赴くということは、父の名代として勇者を名乗り、これまで全く縁の無かった戦いの世界に身を投じるということだ。

「でも、予防線張るようで格好悪いけど、本当期待はしないでくれな。俺自身、自分がそこまで出来るのか全く分からないんだから」

「はい。でも、もしヤスオが勇者でなくても、是非一度、レスティリアには来てもらいたいと思います。そのときは勿論、私が案内しますから」

「お、おう……」

 衒いの無い美しい笑顔でそんなことを言われたら、頑張るしかないではないか。

 康雄は急に気恥ずかしくなり、シャワーを浴びると告げてさっさとその場を逃げ出してしまった。

「富士山、か」

 ディアナは日本最大の霊峰の名を、もう一度口の中で転がす。

「トレーニングに使うには、ちょっと遠いかな」

 そして悪戯っぽい笑顔で、康雄が逃げ出したリビングの扉を振り返ったのだった。

 

 

 翌朝、昨夜のこともあり、また連日のトレーニングの成果か、ほんの少しだけ疲れの残り方が少なくなったような気がした康雄は、いつもよりすっきりとした目覚めを迎え意気揚々と部屋を出たが、

「お兄ちゃん」

 何故か外で和香が待ち構えていて、

「お兄ちゃん、やっぱ向いてないって。勇者なんかガラじゃないよ」

 開口一番そんなことを言い出し、

「康雄、あんたそろそろ限界見えてるんじゃない? ギブアップするなら今の内よ?」

 と洗面所で顔を合わせた母が意気を挫くようなことを言い、あまつさえ、

「康雄。本当に勇者になることを後悔しないのか?」

 と食卓で父が真剣な顔で意思確認をしてくる。

「な、な、何なんだよみんな! 人がやる気になってる時に何言い出すんだよ!」

 自分が勇者に立候補したことを家族がもろ手を挙げて賛成したわけではないのは分かっていた。

 だがこんな表だって、しかも徒党を組んで翻意を促してきたのは初めてだったため、康雄としても怒るより先に混乱してしまう。

「やれる所まではやるって言ったろ? どうしたんだよ一体!」

「いや本当やめといた方が」「だってねぇ」「まぁ、決心が固いならいいが、うむ」

 煮え切らない態度には取り合わず、康雄は、

「それじゃあ行ってきます!! 親父、極力携帯離すなよ!」

 肩をいからせながら家を出てしまう。

「いってらっしゃいませー」

 未だ壊れたままの玄関先を掃除していたディアナがそんな康雄の背に明るい声を掛け、康雄はその声に押されて新たな朝に踏み出す。

「あーぁ、駄目だあれ、めっちゃやる気。ディアナさんも無意識に焚きつけるタイプだし」

「思い出したわー。そう言えばお父さんもアレックスも、結構エリーゼのそういう天然っぽいところにノせられてたわー。ねぇ?」

「な、何でそこで俺に振るんだ!」

 明るい未来を目指し走る勇者候補の背に、残る家族たちのささやき声は、幸か不幸か全く届かなかったのだった。

『はたらく魔王さま!』コンビによる待望の新シリーズ!
ぜひ書店やネットで手に入れてくださいね!

1月10日発売!『勇者のセガレ』特別掌編第三弾!

2017.01.09

『勇者のセガレ』特別掌編、第三弾の公開です!
最終第四弾は明日10日のお昼頃公開予定!
そちらも忘れずにチェックしてくださいね!

 

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⇒作品紹介はコチラ!
(※こちらのページは、10日に新作紹介&掌編4本目が掲載予定!
あわせてチェックしてみてくださいね!)

 

☆☆☆掌編・第三弾!☆☆☆

 世の中、知らないことは沢山ある

 

 母が目から光線を出したことがある。

 そんな過去など知りたくなかったのに、知ってしまった以上、今後どのように母と接すればいいのだろう。

 母を見る目が変わってしまいそうだ。

 いや、変わったと言えばディアナがやってきてからの一連の出来事で、もう見る目とかそういう問題ではなくなっているのだが、それはそれとして。

「大体、何をどうすればそんなことしようと思うの」

「あ、あの、すいません、あまり追及しないでもらえると……」

 和香の隣で、サングラス姿のディアナが恥ずかしげに顔を伏せている。

 明らかに周囲からの人目を避けようとする意志が見え見えだが、一応彼女は和香の登校に護衛として付き添っているはずだ。

 そんなことでいきなり異世界の怪物シィが現れたら、対処できるのだろうか。

 というか黒いサングラスをかけながら、黒い影そのもののシィと戦うつもりなのか。

 そんなことを考えながら自分より少し背の高いディアナを見上げる和香の目に、朝日を浴びてキラキラと光るディアナの金色の髪が映る。

「……むー」

「……あの、ノドカ?」

「不公平だ」

「は?」

「それ、お父さんの運転用のサングラスでしょ?」

「はい。そう伺ってますが」

「美人は得よねー。ミスマッチなはずなのに、何でか格好良くなっちゃうんだもん」

「からかわないでくださいっ!」

「いやー、割と私マジですよ? 何か年末年始にハワイに行く芸能人みたい」

「ハワイ、というと、トットリという地域にあるという……?」

「何でディアナさんそういう変なことばっかり知ってるの」

 鳥取県に羽合【はわい】温泉という観光地があるのは近年ネットなどを通して有名になりつつある。

だが日本に関する情報が最低でも三十年は更新されていないはずのアンテ・ランデからの来訪者が、どうしてそんな温泉の名前を知っているのか。

「あ、昨日実はテレビで……」

「ディアナさん、実は結構テレビっ子だよね」

「そうですね。やはり私達の世界には存在しないものですし、沢山の情報を大きく文字で表示してくれるので、音と文字をすり合わせやすいのです」

「あー、字幕があるとなんか英語が聞き取れてる気分になるあれかー」

 和香が把握している範囲で、ディアナが視聴している番組は多岐に渡っている。

 ニュース、ドキュメンタリーあたりはまだ分かるが、時にはバラエティやお笑い、旅番組や通販番組を無言で見ていることがある。

「旅番組とか通販とか面白い? ディアナさん、まだ日本の地理とかよくわかんないでしょ」

「面白いかどうか……はあまり関係ありませんね」

「へ?」

「通販は、単純に物の価値と貨幣価値のバランスが把握できます。そして旅番組は、この世界の移動手段が紹介されますよね。デンシャとか、ばす、とか、そういうものに乗ってみたい、という思いがあります。あとは地理情報とか、そういうことがイメージとして入って来やすいのです。もちろん教科書的に学ぶ必要はありますが、それ以上に私にとって大事なのは、私の中の感覚と日本の方の感覚を早いうちに擦り合わせることなんです。そのためには、旅番組が最適だと思いまして」

「ん? 感覚?」

「はい。私がヤスオのご友人にご無礼を働いたことがあったじゃありませんか」

「ああ、お兄ちゃんの塾の知り合いを恫喝しそうになった、あれね」

 ディアナが日本に来て間もない頃、康雄の中学校時代の同級生である帯刀翔子を、敵であると勘違いして恫喝してしまったことがあった。

「旅番組に出演している方は、ノドカが今仰った、芸能人、つまりは有名な方なんですよね」

「まぁ、そうね。メジャー度合いに差はあるだろうけど」

 すると、ディアナは軽く上着のポケットあたりを叩いて、微笑んだ。

「この日本は、そのような方も、周囲のスタッフの方も、どこに行くにも武装する必要が無い国だということを一刻も早く体に染みこませないといけません。治安の良し悪しは、そのまま治安維持や防衛行動に直結しますから」

「ぶ、武装!?」

 ディアナが羽織る母のパーカーの下には、彼女の魔導機士としての『武機』である双刃の片割れ、ポルックスが隠されている。

 先の戦闘で壊れてしまったカストゥルは、今は剣崎家の母の部屋に放置されていた。

「恥ずかしながら、レスティリア王国領内には、我ら魔導機士はもちろん、官憲の手が及ばず治安が乱れている地域や地区が多く存在します。犯罪組織の温床になっていたり、凶暴な野生動物が跋扈していたり……そのような場所が、日本には全く無いのですね」

「全く無い、わけじゃないと思うけどね」

「いいえ、ありませんよ」

 ディアナは薄く微笑む。

「だってノドカは、身を守るために武装をしたことはないでしょう? 日頃生活していて、武装する必要は無いでしょう?」

「そりゃ……まぁ。てか、武器持つのって犯罪だしね……」

「親を亡くし路上で生きる子供が道行く人を襲い金品を奪う。徒党を組んだ野盗が街道を行く商人に襲い掛かり殺してしまう。そんなことが日常茶飯事な場所、日本には無いでしょう?」

「……さすがに、無いかな」

 目を覆いたくなるような無残な事件の報道は頻繁にある。

 だが、そんなことが常態化している場所は、いかに和香が世間知らずでもさすがに無いと断言できる。

「だから、私はこの国がそういう場所であるということを理解しなければならない。ヤスオが……そういう国で生まれ育ったことを、理解しなければならない」

「ああ。なーる」

 本物の悪意や殺意に触れた経験が異様に乏しい康雄が挑もうとしているのは、平時ですらそのような修羅の巷が存在する『異世界』の『危機』だ。

「こう言っちゃなんだけどさ、あんまり期待しない方がいいと思うよ。お兄ちゃん根性ないもん」

 和香の、人生を賭けた努力の宣言をした兄への辛辣な評価に、ディアナは微笑んで首を横に振るだけだった。

「そんな世界で生まれた私も、貴族社会で甘やかされて育ちましたから、そのような現実や軍人としての根性を学ぶまでに随分と時を要しました」

「……ま、ディアナさんがいいならいいんだけどさ」

 康雄の決心が変わらず、ディアナの意志も変わらないのなら、これ以上和香がどうこう言えることではない。

 父のアンテ・ランデ行きを強固な意志で反対した和香だが、兄の修行については特別思うところが無いのである。 

 その理由は和香の中ではっきりしているのだが、ふと気づいたことがあり話を変えることも兼ねて尋ねてみた。

「あのさ、ディアナさん日本語ペラペラだけど、アンテ・ランデやレスティリアで話されてる言葉って、日本語じゃないよね」

「違いますね」

 その宣告に、和香はぽつりと言う。

「お兄ちゃん、英語ダメだよ」

「……知ってます。でも、レスティリアの公用語は英語じゃありませんし、ヒデオとマドカのおかげで僅かですが日本語も導入されています」

「僅かって……」

「その、食べ物の名前とか……」

「……」

 それは『スシ』とか『テンプラ』の音がそのまま英語に輸入されているのと同じ話で、日本語が通じると言う話ではないのではなかろうか。

「こう言っちゃなんだけどさ、あんまり期待しない方がいいと思うよ」

「……全てはこれからです」

 そう言い切ったディアナの目はサングラスに隠れているが、絶対泳いでいると、和香は確信しているのだった。

 

最終回の第四弾は明日のお昼頃に公開です!

1月10日発売!『勇者のセガレ』特別掌編第二弾!

2017.01.09

『勇者のセガレ』特別掌編、第二弾の公開です!

 

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⇒作品紹介はコチラ!
(※こちらのページは、10日に新作紹介&掌編4本目が掲載予定!
あわせてチェックしてみてくださいね!)

 

☆☆☆掌編・第二弾!☆☆☆

 目は口ほどに色々出す

 

 風呂を上がった康雄は、ディアナがリビングでテレビを見ているところに出くわした。

 異世界からやってきた魔導機士がリビングでテレビを見ている姿にも、最近ようやく慣れてきた。

「何見てんの。ニュース?」

 丁度CMに入っているのか、何の番組をやっていたのか分からないが、冷蔵庫を開けながらそう声をかける。

 先日康雄の心を派手に乱した腕時計のCMだったのが少し心臓に悪かったが、

「……ヤスオ……」

 振り返ったディアナの顔色が青かったのが、もっと心臓に悪かった。

「ど、ど、ど、どうした?」

「ヤスオ……大変です」

「な、な、何が?」

 CMがいわゆる高機能高価格帯の商品であったため、全く明後日の方向の心配が首をもたげるが、ディアナの次の台詞は更にその上を行った。

「ウチュウジンが」

「は?」

「ウチュウジンがこの世界を調べているらしい……のですが」

「…………は?」

 意味が分からず呆然とした康雄は、冷蔵庫のドアが開けっ放しを警告する音を発するまで、真剣にディアナが何を言っているか分からず眉根を寄せて考えていたのだった。

 

 

その言葉を聞かなくなってはや何年だろうか。

 康雄はディアナが言うのが『宇宙人』であると気づくのに、更に五分ほど時間を要した。

「あの、何か、この世界のことを調べているっていうウチュウジンのお話が先ほど流れてて、それで……わ、私も異世界の人間なのであまり大きなことは言えないのですが、同じ異界から来た者同士、何かの拍子にぶつかりはしないかと……」

 先日の腕時計もそうだが、こういうとき本気で疑問を抱いたり困惑しているディアナを見ると、本当に異世界の人間なんだと実感する。

 日本のセンスと全く縁の無い外国人なんだな、と思わないのは、やはり日本語が完璧なせいだろう。

 何故ディアナが突然宇宙人などと言い出したか、答えにたどり着いた康雄は思わず吹き出してしまった。

「や。ヤスオ!?」

「それ、あれだろ? 缶コーヒーの……」

 宇宙人が地球を調査、というフレーズで気づくべきだった。

 有名なハリウッド俳優を起用した、缶コーヒーのCMのことだ。

「大丈夫だよ。宇宙人じゃないから。地球の人だから」

「で、でも目から光線を発射してましたよ!? それに、耳に人間では有り得ない隔壁のようなものが……」

 隔壁、などという日本語をどうやって学んだのか。

そう言えばオヒョウという魚を知っていたり、たまにディアナの日本語の語彙は良く分からない。

「CGだよそれは」

「しぃじ?」

 初めて知る横文字を噛みしめるように復唱する姿は、可愛いと思ってしまう。

「CG。コンピューターグラフィックス。合成映像」

「つまり、作られた映像ということですか? とてもそうは見えなかったのですが……」

「まぁ、俺達は分かって見てるからあれだけど、知らなきゃそうなのかもなぁ。あの宇宙人役の人、海外の俳優だよ。それにCGで色々付け足してるだけ」

「そうですか。本当に驚きました。この世界の人は魔導や魔法を持っていないというお話でしたから……」

「テレビの台の下に映画のDVDとか沢山あるからさ、もし気になったら見てみたら。やり方は教えるから」

 折角CGが話題になったので、CGアニメやVFX効果が売りの映画のディスクを何枚かピックアップして、デッキの使い方を説明する。

 時間も時間なので今日これから見ると言うよりは、今後、時間を持て余したら見ればいい、くらいの気持ちだったのだ。

 

 

 翌朝。

「な、何それ、どうしたんだ!?」

「すいませんすいません見ないで下さいごめんなさいごめんなさい何でもないんです!」

 食卓に座ったディアナは何故か全く似合わないサングラスをかけている。

 確か父が運転するときたまに使う度無しのもののはずだが、ディアナの顔立ちと父のサングラスでは『目立つ変装』をワザとしているようにしか見えない。

 それともまさか、昨夜勧めた、主要登場人物がサングラスをかけているVFXが有名な映画の真似をしているわけでもないだろう。 

 第一そんな目立つ格好していて見るなってどういうことだ。

 すると母の円香が、いくばくかの呆れ顔とともに言った。

「康雄。そっとしておいてあげなさい」

「ええ……ああ、うん」

 追求したいのはやまやまだが、追求しても何ら得られるものがなさそうなので康雄は黙って朝食を食べ、先に出ていた父に、一応今日も万一のときはよろしくとメッセージを飛ばして学校へと向かった。

 康雄が出かけるのを確認してから、円香は小さく溜め息をついてディアナの正面に座った。

「いい、ディアナちゃん」

「はい……」

 ディアナはサングラスの下で顔を真っ赤にしながら俯いてしまう。

「魔導機士のあなたにこんなこと今更だけど、目はデリケートなのよ。小さい頃に太陽を真っ直ぐ見ちゃだめって言われたでしょうが。そんなとこから光線出したら最悪目が見えなくなっちゃうかもしれないのよ? 瞼の軽い火傷で済んで、しかも私がすぐに治せたからよかったようなものの」

「はい……」

「目から光線出すのはCGとか特撮だけの話。レスティリアでそんなことやってる人見たことないでしょ? どうして突然そんなことしたの」

「はい……その、好奇心に勝てなくて……」

「とにかくもう目から魔法出そうとしちゃ絶対駄目よ? 分かった?」

「……はい……申し訳ありません」

 最早消え入りそうなディアナの返事。

「ああ、あれそういうこと」

 シリアスな空気を感じてリビングに入るのを躊躇っていた和香だが、玄関に置いてある、断面が融解したような奇妙な壊れ方をした植木鉢を見て頷く。

 頷いてから、異世界の魔導機士でも目から光線は出せないのか、と少し残念な気分になり、

「熱いのよ、あれ。私が昔やったときには、眉毛もまつ毛も焼けたもの」

「マドカ!?」

「お母さん!?」

 母のとんでもない告白に、和香は我慢できずにリビングに飛び込んでしまったのだった。

 

次回更新もお楽しみに!

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