編集部ブログ

1月10日発売!『東京ダンジョンスフィア』特別掌編その1!

2017.01.08

新年明けましておめでとうございます!
今年も電撃文庫をよろしくお願いいたします!

 

1月10日は2017年一発目の電撃文庫の発売日!

 

ということで、10日発売の新作、
『勇者のセガレ』&
『東京ダンジョンスフィア』
の二作品より、特別掌編をお贈りいたします!

 

今回は『東京ダンジョンスフィア』の特別掌編を公開!
本日3回更新いたしますので、是非チェックしてみてくださいね!

 

☆☆☆あらすじ☆☆☆

 

最新VR装置のような医療器具の暴走で、
使用者の脳内世界がダンジョンとなってしまった!?

ダンジョン攻略を行うギルドに軽い気持ちで入隊した
高校生の赤峰だったが、危険なダンジョンに四苦八苦!
曲者揃いのメンバーとパーティーを組み攻略を目指せ!

 

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⇒作品紹介はコチラ!
(※こちらのページは、10日に新作紹介&掌編が掲載予定!
あわせてチェックしてみてくださいね!)

 

☆☆☆特別掌編・その①☆☆☆

【あなたにとってどういう存在ですか?
 ~桜白香花の場合~】

 

「香花ちゃん、お疲れさま」

 放課後、用事を済ませて昇降口を出たところで声をかけられた。その方向を向くと、クラスメイトであり、小学生時代からの友人でもある梅朋(うめほ)の姿があった。

「ああ、梅朋ちゃん。待っててくれたんだ」

 笑顔を向けると、彼女は新緑で覆われた桜の木の陰を離れて傍に寄ってきた。

「ええ。一緒に帰ろうって約束したじゃない。それより、一時間も先生に何言われてたの?」

 桜白は梅朋と一緒に歩き出しながら、教師の言葉を思い出す。

「えっと……端的に言えば、冒険者を辞めなさいっていう話かな」

「ええ、またぁ? 『格式高い我が校には相応しくない活動』だって?」

「すごい、一字一句同じよ」

「すごくないよ、だって毎回同じこと言ってるじゃない。呆れ返っちゃうわね」

「そもそもバイトすら禁止されているんだから、怒られるのも無理はないわ」

「あのね、香花ちゃん。そのルールって学校のイメージを守るためにあるのよ。喫茶店みたいな可愛らしくて清楚なイメージのあるバイトは黙認されてるんだから」

「え、それ本当?」

「本当の本当よ。まったく、くだらないわ。教師連中は冒険者っていう仕事が粗野だとか野蛮だとか考えているようだけど、時代遅れよ。ダンジョンが現実に出現してから、もう五年も経ってしまったんだから」

 そう言って梅朋は視線を通りがかったマンションに向けた。

 何の変哲もない、見慣れた建物。校門から歩いてきて、幾つも通り過ぎてきた。下り坂に差し掛かったので顔を上げてみれば、遠くに数え切れないほど建っているのが見える。

 約十二万棟あるとされる東京のマンションのほとんどが、『精神干渉波発生装置』――『Mig』と呼ばれる機械の暴走で、異世界(ダンジョン)化してしまっている。

「まったく、何がイメージよ。冒険者はダンジョンに取り込まれた人を助ける大事な仕事よ? 命がけで人助けしている人に向かって、そんなことを言うなんて……」

 梅朋はそこで、「いや問題はそこじゃないわ」とかぶりを振った。

「香花ちゃんの事情を知っているのに、それを無視しているってことよ……」

「仕方ないわ。二十六歳以上の人はダンジョンの中に入れないから、どれだけ危険な仕事なのか分からないのよ」

「なら調べればいいのよ。専門誌とかあるんだから」

 それからしばらく梅朋は教師と学校への不満を述べていたが、不意に話題を変えた。

「ところで香花ちゃん、聞いていいかな」

「え? 何を?」

「五年前のあの日から……元気がないというか……ずっと怯えていたじゃない? 笑っているけど、どこか作ってるみたいで……」

「ああ、うん……気づいてたのね。梅朋ちゃんには隠しごと出来ないな」

「そりゃ長いつき合いだもの。私、辛かったんだから。苦しんでいるのに何もしてあげられなかったこともそうだし、冒険者になってからはずっと緊張しているから話かけづらくて、元気づけることすら出来なくて……でも最近になって、五年前に戻ったみたいに素直な笑顔を浮かべるようになったじゃない。一体何があったの?」

「そうね、何かあったというより……仲間が出来たからかな」

「仲間? 冒険者のってこと?」

「ええ。そうよ」

「ふーん? これだけ劇的に変えるなんて、どんな人たちなのかしら」

「どんな? そうね……」

 考えているうちに学校の最寄の駅に着いた。

 と、そこで見覚えのある姿が目に入る。

 人の良さそうな顔に乱雑な髪、身長は桜白より高く、同い年の男子高校生――自分が所属するパーティのメンバー、赤峰である。

「桜白、ちょうど良かった! 今メール送ろうとしてたんだよ!」

 こちらに気づいた赤峰は手を上げて駆け寄ってきた。

「今帰りか? って、そりゃそうか。制服着てるもんな」

「赤峰君はこんなところでどうしたの? 学校終わったの、結構前よね?」

「これからダンジョンに行くことになってるけど、その前に腹ごしらえしようかと思ってさ。せっかくだからみんなも誘おうかと思って、とりあえずここで桜白を待ってたんだよ。あーでも友達も一緒か。悪いな、いきなり話に割り込んじまって」

 と、赤峰は梅朋に視線を向けた。梅朋は急に話を振られたことに驚いたのか、「い、いい、いえいえ、お構いなくっ! どうぞ行ってきてちょうだい!」と慌てて一歩退いた。

「げ、元気のいい友達だな。それで、彼女はああ言ってくれてるけど、どうする?」

「そうね……じゃあ私も、ご飯、行こうかしら。お腹が減ったら戦は出来ないものね」

「よしよし、じゃあ後は二人だな。何食いたいか考えといて」

 赤峰が他のメンバーと連絡を取るため、『タリスマン』――ギルドから支給された特殊なスマートフォンを取り出して他所を向くと、すぐさま梅朋が袖を引っ張ってきた。

「つまり、そういうこと!?」

「えっ? つまりって……何のこと?」

「香花ちゃんが元気出たのは彼氏が出来たから!? 今、見たことないような可愛らしい笑顔を浮かべてたわよ!」

「え? ええ!? 違うわよ、全然そういうのじゃないわ! 元気になったのはみんなのおかげで――」

 そこで、桜白はふと思う。

 仲間はどんな人たちなのか。自分にとって仲間とはどういう存在なのか。

 それは自分にとって赤峰がどういう存在なのかで語れるのではないか、と。

 確かに他のメンバー、蒼倉と緑も今では自分を支えてくれる大切な人たちである。だが、そういう関係になれたのは、赤峰のおかげだった。彼が導いてくれなければ仲間を大切に思うこともなく、心強く思うこともなかっただろう。そしてそれは、蒼倉と緑も同じはずである。

「…………。梅朋ちゃん、あのね」

 桜白は言いながら、「あれぇ、二人とも出てくれねえなぁ」とぼやいている赤峰の背中を見つめる。

 そして、冒険者にならざるを得なかった理由を思い出し、五年間の苦悩を振り返りながらも、清々しい気持ちで言った。

「私の仲間は……真っ暗だった人生を照らし出してくれて、未来を信じさせてくれる……ヒーローみたいな人よ」


次回更新もお見逃し無く!

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