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1月10日発売!『勇者のセガレ』特別掌編第二弾!

2017.01.09

『勇者のセガレ』特別掌編、第二弾の公開です!

 

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⇒作品紹介はコチラ!
(※こちらのページは、10日に新作紹介&掌編4本目が掲載予定!
あわせてチェックしてみてくださいね!)

 

☆☆☆掌編・第二弾!☆☆☆

 目は口ほどに色々出す

 

 風呂を上がった康雄は、ディアナがリビングでテレビを見ているところに出くわした。

 異世界からやってきた魔導機士がリビングでテレビを見ている姿にも、最近ようやく慣れてきた。

「何見てんの。ニュース?」

 丁度CMに入っているのか、何の番組をやっていたのか分からないが、冷蔵庫を開けながらそう声をかける。

 先日康雄の心を派手に乱した腕時計のCMだったのが少し心臓に悪かったが、

「……ヤスオ……」

 振り返ったディアナの顔色が青かったのが、もっと心臓に悪かった。

「ど、ど、ど、どうした?」

「ヤスオ……大変です」

「な、な、何が?」

 CMがいわゆる高機能高価格帯の商品であったため、全く明後日の方向の心配が首をもたげるが、ディアナの次の台詞は更にその上を行った。

「ウチュウジンが」

「は?」

「ウチュウジンがこの世界を調べているらしい……のですが」

「…………は?」

 意味が分からず呆然とした康雄は、冷蔵庫のドアが開けっ放しを警告する音を発するまで、真剣にディアナが何を言っているか分からず眉根を寄せて考えていたのだった。

 

 

その言葉を聞かなくなってはや何年だろうか。

 康雄はディアナが言うのが『宇宙人』であると気づくのに、更に五分ほど時間を要した。

「あの、何か、この世界のことを調べているっていうウチュウジンのお話が先ほど流れてて、それで……わ、私も異世界の人間なのであまり大きなことは言えないのですが、同じ異界から来た者同士、何かの拍子にぶつかりはしないかと……」

 先日の腕時計もそうだが、こういうとき本気で疑問を抱いたり困惑しているディアナを見ると、本当に異世界の人間なんだと実感する。

 日本のセンスと全く縁の無い外国人なんだな、と思わないのは、やはり日本語が完璧なせいだろう。

 何故ディアナが突然宇宙人などと言い出したか、答えにたどり着いた康雄は思わず吹き出してしまった。

「や。ヤスオ!?」

「それ、あれだろ? 缶コーヒーの……」

 宇宙人が地球を調査、というフレーズで気づくべきだった。

 有名なハリウッド俳優を起用した、缶コーヒーのCMのことだ。

「大丈夫だよ。宇宙人じゃないから。地球の人だから」

「で、でも目から光線を発射してましたよ!? それに、耳に人間では有り得ない隔壁のようなものが……」

 隔壁、などという日本語をどうやって学んだのか。

そう言えばオヒョウという魚を知っていたり、たまにディアナの日本語の語彙は良く分からない。

「CGだよそれは」

「しぃじ?」

 初めて知る横文字を噛みしめるように復唱する姿は、可愛いと思ってしまう。

「CG。コンピューターグラフィックス。合成映像」

「つまり、作られた映像ということですか? とてもそうは見えなかったのですが……」

「まぁ、俺達は分かって見てるからあれだけど、知らなきゃそうなのかもなぁ。あの宇宙人役の人、海外の俳優だよ。それにCGで色々付け足してるだけ」

「そうですか。本当に驚きました。この世界の人は魔導や魔法を持っていないというお話でしたから……」

「テレビの台の下に映画のDVDとか沢山あるからさ、もし気になったら見てみたら。やり方は教えるから」

 折角CGが話題になったので、CGアニメやVFX効果が売りの映画のディスクを何枚かピックアップして、デッキの使い方を説明する。

 時間も時間なので今日これから見ると言うよりは、今後、時間を持て余したら見ればいい、くらいの気持ちだったのだ。

 

 

 翌朝。

「な、何それ、どうしたんだ!?」

「すいませんすいません見ないで下さいごめんなさいごめんなさい何でもないんです!」

 食卓に座ったディアナは何故か全く似合わないサングラスをかけている。

 確か父が運転するときたまに使う度無しのもののはずだが、ディアナの顔立ちと父のサングラスでは『目立つ変装』をワザとしているようにしか見えない。

 それともまさか、昨夜勧めた、主要登場人物がサングラスをかけているVFXが有名な映画の真似をしているわけでもないだろう。 

 第一そんな目立つ格好していて見るなってどういうことだ。

 すると母の円香が、いくばくかの呆れ顔とともに言った。

「康雄。そっとしておいてあげなさい」

「ええ……ああ、うん」

 追求したいのはやまやまだが、追求しても何ら得られるものがなさそうなので康雄は黙って朝食を食べ、先に出ていた父に、一応今日も万一のときはよろしくとメッセージを飛ばして学校へと向かった。

 康雄が出かけるのを確認してから、円香は小さく溜め息をついてディアナの正面に座った。

「いい、ディアナちゃん」

「はい……」

 ディアナはサングラスの下で顔を真っ赤にしながら俯いてしまう。

「魔導機士のあなたにこんなこと今更だけど、目はデリケートなのよ。小さい頃に太陽を真っ直ぐ見ちゃだめって言われたでしょうが。そんなとこから光線出したら最悪目が見えなくなっちゃうかもしれないのよ? 瞼の軽い火傷で済んで、しかも私がすぐに治せたからよかったようなものの」

「はい……」

「目から光線出すのはCGとか特撮だけの話。レスティリアでそんなことやってる人見たことないでしょ? どうして突然そんなことしたの」

「はい……その、好奇心に勝てなくて……」

「とにかくもう目から魔法出そうとしちゃ絶対駄目よ? 分かった?」

「……はい……申し訳ありません」

 最早消え入りそうなディアナの返事。

「ああ、あれそういうこと」

 シリアスな空気を感じてリビングに入るのを躊躇っていた和香だが、玄関に置いてある、断面が融解したような奇妙な壊れ方をした植木鉢を見て頷く。

 頷いてから、異世界の魔導機士でも目から光線は出せないのか、と少し残念な気分になり、

「熱いのよ、あれ。私が昔やったときには、眉毛もまつ毛も焼けたもの」

「マドカ!?」

「お母さん!?」

 母のとんでもない告白に、和香は我慢できずにリビングに飛び込んでしまったのだった。

 

次回更新もお楽しみに!

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