編集部ブログ

水野良も推薦! 1月刊注目作『ゼロの戦術師』の裏側を著者に語ってもらいました!

2018.01.14

皆さんこんばんは。

電撃文庫編集部のわらふじです。

 

TVアニメ大好評の『グランクレスト戦記』の著者・水野良先生が推薦する1月刊注目作『ゼロの戦術師』大好評発売中!

ということで……

前回に引き続き本日も著者の紺野天龍が語る『ゼロの戦術師』が刊行されるまでの経緯を教えちゃいます☆

 

 ――担当氏から拾い上げのお電話を頂いたのは、夜風が凛烈たる趣を見せ始めた11月の終わりのことだった。
 この年、初めて電撃小説大賞に応募した僕は、拾い上げというシステムも知らず、担当氏から頂いた丁寧な連絡に恐縮しきりだった。
 当初は、応募者全員サービスの一環で、「応募してくれてありがとう! 来年もよろしくな!」的なご挨拶かとも思ったがどうにもそういうわけではないらしい。
 とにかくお話を伺ってみると、出版の確約はできないけれども改稿して共に出版を目指そう、という主旨の連絡であることがわかった(これを『拾い上げ』というらしい)。
 何だかよくわからないけれども、ありがたいお話だ。
 ただ、そのお話を頂いたとき、
「あ、そうなのですか。ご丁寧にありがとうございます」
 と、ものすごく淡泊なお返事をしてしまったことを密かに今でも悔やんでいる。
 余談だけれども、紆余曲折の末、出版が決定したときも、
「あ、そうなのですか。良かったです」
 と、ものすごく淡泊なお返事をしてしまった。
 感情表現がド下手クソで本当に申し訳なく思うばかりだ。
 閑話休題。
 とにかく、年末の忙しい時期に恐縮だけれども一度編集部まで来てほしい、ということなので、仕事終わりの21時という無茶な時間に約束を取り付け、最初のコンタクトは終了した。
 それから二週間、特に何事もなく本職に忙殺され、ひょっとしてマジで死んじゃうのではなかろうか、と危惧し始めたところで、約束の初打ち合わせとなった。
 打ち合わせ、というものをそもそもしたことがないので、いったい何をすれば良いのか疑問だったが、基本的には投稿作に関する雑談だった。
 投稿作『ウィアドの戦術師』とは、王都の建国祭に紛れ込んだ謎の少女を、絶対に脱出不可能な状況から見事脱出させる、というファンタジィの皮を被ったミステリィだった。
 実を言うと、僕は高校一年の冬に気まぐれで文章を書き始めてからずっとミステリィばかりを書いていた。
 しかも、今どき流行らない(失言)本格テイストのロジックミステリィだ。
 島田荘司先生のような壮大で派手なトリックは書けないけれども、論理的(あるいは屁理屈という)に謎を解明していく物語は比較的得意であると自己分析している。
 そこで培った屁理屈(論理性とはやや離れた)を駆使して書いたのがこの『ウィアドの戦術師』だった。
 担当氏はこの物語を評価してくれながらも、一貫して王都の中だけで物語が進行して終了するのは、動きがなさすぎる、と評した。
 なので、読者を楽しませるための物語にするには、少し構成を変える必要があるという。
 改稿、というのはやったことがないけれども何だか面倒くさそうだ。
 それよりは、同じ設定で一から物語を書いたほうが楽そうだし、たぶん早い。
 そんなこんなで、恐る恐る提案してみたら、あっさりと了承を得た。
 そこで担当氏は、「では、新しいプロットを提出してください」と当たり前のようにそう言ったのだが――。

 

「――プロットって何ですか?」

 

 恐るべき情弱である僕は、首を傾げるばかりだった。
 理系の人間が、プロットと聞いて真っ先に思い浮かぶのはグラフのことだろう。
 ただこの状況でグラフを書かされるのもおかしいので、おそらく違う意味合いの言葉なのだろう。
 困惑する僕に、担当氏はより一層の困惑を滲ませながら尋ねる。

「……プロットというのはあらすじのことです。投稿していただいたとき、書いていただきましたよね?」
「ああ、梗概のことですか。でもあれ、書き終わってから書くものですよね?」
「いや……それはそうなのですが……。紺野さん、もしかして本文を書き始めるまえに、あらすじを書き起こしたりはしないのですか?」
「しませんね……そもそも、書きながら考えていますし……。物語がどうなるのか実は僕も知らずに書いています」
「……でも、ずっとミステリィ書かれていたのですよね? 登場人物のタイムテーブルとかトリックのための伏線とか、事前に書き起こさないのですか……?」
「描写しているシーン以外で、ほかの登場人物がどこで何をしているのかとか知りませんし……。舞台と登場人物だけは最初に決めますが、あとは成り行き任せです。トリックもよくわからずに書いています。とりあえず、印象的な不可能犯罪を作り上げて、あとは探偵役と一緒に推理しながらトリックを考えます。伏線はトリックを思い付いたあと戻って付け加えますし……特にこの書き方で不都合を感じたことはないですね。どうしてもトリックが思い付かないときは、天狗の仕業にしてしまえば良いのですよ、ははっ」
「…………」

 絶句する担当氏。どうやらよほど埒外な小説の書き方をしていたらしい。
 今まで小説の書き方を誰かに師事したことはないし、いわゆるハウツー本さえ読んだことさえないのである。
 結果的に小説ができあがればそれでいい、という極めて雑な思考回路でここまでやってこられてしまったのだから仕方がない。
 ともあれ小学校で習った文章作法以上のものを何も知らないド素人の僕に担当氏は懇切丁寧に一般的な小説の書き方、というものを伝授してくれた。
 ようするに、あらかじめ担当氏に『こういう展開の物語を書きますが如何でしょう?』というのを確認するためにプロットというのは必要らしい。
 なるほど。確かに一人で好き勝手書いていた頃と異なり、これからは担当氏と力を合わせて物語を作っていくのだから、それは当然必要な手順だ。
 己の無知を恥じ、僕は担当氏の指示に従うことにする。
 とりあえず、初打ち合わせは無事に終了した。
 それから、新プロットをいくつか提案しその中で一番出来の良いものを採用して貰ってから、早速執筆に入る。
 ――さて。
 その後、約一ヶ月で書き上げた新たな物語は、六回の改稿の末(ゲラで直しまくったので結果的には八回だが)、本作『ゼロの戦術師』として完成した。
 果たして投稿作の概要とどれほど異なる物語に仕上がったのか――。
 興味のある方は、お手にとってそこはかとなくご確認頂ければ幸いです。

 それでは、お目汚し失礼いたしました。
 本年も皆さまにとって良き一年となりますよう――。

2018年1月1日自宅 無音にて
『ゼロの戦術師』著者 紺野天龍

 

各所で話題を呼んでいる『ゼロの戦術師』が気になった方はぜひ手に取ってみてください!

伝承の少女と《ウィアド》の戦術師が出会い――

正統派戦記ファンタジーが登場!

ゼロの戦術師

著者/紺野天龍 イラスト/すみ兵
定価/(本体630円+税)

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