エッセイ

エッセイ「電撃的 春夏秋冬」第15回

『夏海公司と6月の雨』 
夏海公司

【プロフィール】兵庫県出身。2007年『葉桜が来た夏』で第14回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>を受賞。近作に『なれる!SE』『ガーリー・エアフォース』シリーズ。最新作『ガーリー・エアフォースIII』は今月発売!

 6月と言えば梅雨ですね。花粉の飛散も終わり季候もよくなり、さぁやっと行楽日和! と思った瞬間ザバーッ。空気は湿気て不快指数は鰻上り、買ったばかりの靴は泥で汚れ、洗濯物も生乾きのまま。本当憂鬱な季節です。  そういえば昔、初めて買った車が納車されてきた時も梅雨時でした。まぁそんな時期に新車買うなって話ですが、キラキラのボンネットが埃を含んだ雨粒に汚されていくのをひどく悲しい気持ちで見ていたことを覚えています。おまけにその車、見栄を張ってマニュアルトランスミッションにしてしまい……ただでさえ半クラに不慣れな中、坂道発進を失敗しまくり足回りは泥だらけ。初ドライブを終える頃にはオフロードレースの終了時のようになっていました。  帰宅中、ひどく気分がふさいで手近な駐車場に車を止めました。座席を倒し靴を脱ぎ、不貞寝同然に休憩した時のことです。  リアウィンドウ越しに広い空が見えました。真上から雨粒が落ちてきてはガラスに当たり砕けていきます。水滴がレンズとなり淡い陽光をにじませていました。エンジンは止まっていましたから周囲に響くのはポツポツという雨音だけです。  そう、雨空を見上げる機会なんてあまりないので気づきませんでしたが、結構綺麗なんですよそういう時の大気って。ぼうっと空気が煙っている感じで、水や雲が光を孕んでいて。全てが曖昧模糊に混じりあっているというか、世界の輪郭が朧になっている感じで。  気づけば三十分くらいそうしていました。暗くなってきたので帰り支度を始めましたが、そうでなければずっと見とれていたかもしれません。帰りながら僕は「雨の日も悪くないな」と少し、ほんの少しだけ思っていました。  ちなみにこないだ洗車した翌日に雨が降ってきまして……普通に恨みましたけどね。畜生天気予報曇りって言ってたじゃんかよ! 雨なんか大嫌いだ!

NEXT

来月は7月10日発売『いでおろーぐ2』の椎田十三先生が登場!

※画像を無断転載することは一切禁止します。

PAGE TOP