エッセイ

エッセイ「電撃的 春夏秋冬」第23回

『松村涼哉と2月の大都市』
松村涼哉

【著者プロフィール】『ただ、それだけで良かったんです。』で第22回電撃小説大賞<大賞>を受賞し、同作にて電撃文庫からデビュー。

 2月がなぜ大都市かって? 私立大学の受験があるからさ!
 早慶上智、MARCH、関関同立、愛愛名中、日東駒専……私立大学の受験日はほとんど2月。地方で生まれ育った高校生が、たった一人でふらふらと東京、大阪、名古屋へと集まっていく時期なのです。
 かつての僕もそうでした。静岡の田舎から私立大学受験のため、のこのこ東京へとやってきて、その人の多さに腰を抜かしました。東京なんて小学校の修学旅行ぶり。駅のホームで、キャリーバック片手にお上りさん丸出しで呆然としておりました。エスカレーターも空いているという理由で、右側に立ち、先を急ぐビジネスマンに邪魔者扱いされる始末。その折は、本当にごめんなさい……。
 そうして、くたくたになりながらホテルへ辿り着き、毛布にくるまり「東京こわい……」と呻いて小一時間。でも、お腹が減れば、外へ食料調達しかない。そして、どうせなら美味しいものを。というわけで池袋まで電車で行ってラーメンの行列に並んで、ついでに、憧れの立ち食い蕎麦も経験しました。するとテンションが上がり、今度は原宿の喫茶店でまったりして。振り返ればなんだかんだで充実した東京の夜でした。
 おそらく、一人で新幹線に乗って、大都市のホテルに泊まることを大学受験で初経験する人も珍しくないはず。これから体験する人は、決して学力試験だけの宿泊と思わず、どうか試験前日の夜も楽しんで。18歳が一人で過ごす大都市の夜って、どこか魅力的。単語帳を放り投げて、ほんの少しだけ背伸びしながら散歩するのも悪くないですよー。
 ただ、そうやって試験前日に遊びすぎると、どんな未来が待っているか?
 もちろん僕のように、私立大学受験はすべて不合格に終わりますよ…………節度は守って、がんばれ受験生!

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