エッセイ

エッセイ「電撃的 春夏秋冬」第3回

『真代屋秀晃と6月の空』
真代屋秀晃

【プロフィール】『韻が織り成す召喚魔法』で第20回電撃小説大賞<金賞>を受賞し、同作でデビュー。最新刊『韻が織り成す召喚魔法2 -クレイジー・マネー・ウォーズ-』は今月発売!

 晴れていると元気になり、雨が降るとなんとなく憂鬱……空の様子は少なからず人の気分に影響を与えるが、じつは逆なんじゃないかと思うときがある。
 小学五年生の梅雨の季節。僕は恋心を寄せていたクラスメートのA子さんから、誕生日会のお誘いを受けた。しかも男子で誘われたのは、僕と友人のTくんのみ。「ひょっとしてA子さんも僕のことが……?」と、ちょっぴり期待してしまう心情をご理解いただきたい。超ハッピーになると同時に、連日雨だった空が一気に晴れ渡り、誕生日会の当日まで天候は一切崩れなかった。
 A子さんの誕生日会では、彼女の弟が僕に「ゲームしよう」と言ってきた。内気な少年だった僕は、A子さんに積極的に話しかけることができなかったので、スーパープレイを披露することで彼女の気を惹こうとした。
 しかし興味をもってくれるのはA子さんの弟のみ。「すげー真代屋くん! ボムなしで全面クリアしちゃった!」「そんなところに隠しアイテムが!? 真代屋くんマジすげー!」
 ふと気づくと、A子さんとTくんの姿が見当たらない。どこに行ったのか、参加者の女子たちに尋ねてみた。すると返ってきたのは驚愕の答え。なんとA子さんは、Tくんと二人で近所の公園へお出かけになられたとのことだった。
「じつはA子って、Tくんのことが好きでね。今日の誕生日会は真代屋くんを呼べば、Tくんも来てくれるんじゃないかって作戦だったの。今ごろTくんに告白してると思うよ」
 雷鳴が轟いた。天候はそこで一気に崩れ始めたのだ。「真代屋くん、次はこれやろうよ」と別のゲームを勧めてくるA子弟に僕は言った。
「ククク、それよりも『スト2』で対戦しようぜ?」
 ザンギエフでA子弟を投げまくったあと、僕は傘も借りずにさっさと家路についた。外は僕の代わりに泣いているような大雨。おかげで付き合うことになったA子さん、Tくんの二人組と玄関先でばったり出くわしても、涙を悟られずに済んだ。六月の空は優しかった。

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