エッセイ

エッセイ「電撃的 春夏秋冬」第2回

『聴猫芝居と五月の夜』
 聴猫芝居

【プロフィール】『あなたの街の都市伝鬼!』で第18階電撃小説大賞<金賞>を受賞し、同作でデビュー。最新刊『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?Lv.4』は今月発売!

『五月病』なんて言葉もあるぐらい、人によっては憂鬱になる五月。私もその例に洩れず、学校に行くのが億劫でした。夜遅くベッドに入ってなかなか眠らず、寝ない限り明日は来ないんだ! なんて考えて必死に起きていたり。気がついたら眠ってしまって、きっちり明日はやってくるんですけどね。
 そんなある夜。窓を開けて寝ていた私は、風でカーテンが揺れるのをぼんやり眺めながら、ふと思いました。 
 そうだ! 歩いていれば絶対に寝ないんだ! 外に出よう! 
 いやいやそれは違うだろう、と思えるのは今だからで。その時の私はこれぞ名案と勇んで深夜の町へ繰り出したのです。五月の風は少し冷たく、ちょっとした冒険で高揚した体にとても心地よく感じられました。
 そんな冒険心とは裏腹に、深夜の町といっても田舎の住宅街。夜遊びではなくただの散歩でした。しかも歩いたのは毎日通っている通学路。学校に行きたくないはずが、癖で学校に来てしまったのです。
 しかしその学校ですが、深夜に見ると随分と趣が違いました。普段なら騒ぎ声に包まれている校舎は静寂を保ち、いつもは気にも止めないような暗闇が目について仕方ありません。それはまるっきり自分の知らない場所のようでした。私は身を一つ震わせ、振り返りもせず家へと帰り、倒れるように眠りにつきました。
 翌日は本当の本当に学校へ行きたくなかったのですが、休むこともできません。諦めて昼の住宅街を抜け、通学路を歩き、学校に着くと――もちろん、そこはいつも通りの騒がしい校舎でした。友達がいて、先生がいて、沢山の同級生がいました。
 何故だかわかりませんが、凄く凄くほっとしました。私の知っている学校が帰ってきたように思いました。結構学校のこと好きなんだなって、そう気づきました。
 憂鬱だな、頑張りたくないな、と思っている、私と同じような方。もしかしたら、あなたも意外と日常を気に入ってるのかもしれないですね。

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