エッセイ

エッセイ「電撃的 春夏秋冬」第11回

『鳩見すたと二月のバレンタイン』 
鳩見すた

【プロフィール】『ひとつ海のパラスアテナ』にて第21回電撃小説大賞<大賞>を受賞。注目のデビュー作は今月発売!!

 バレンタイン、僕は女の子から十個くらいチョコ貰ってました。

 ……オーケー、怒れる男たち。握った拳をまず開こう。そしてそのまま待機して。
 補足しますと、その世界ではバレンタインのことを「ヴァレンティオン」といいます。そして女の子からチョコ十個と言っても、半分以上は「中の人」が男です。
 そう、これはネットゲーム。とあるMMORPGの中でのお話です。あと半分以上って書きましたけど、自己申告なのでたぶん九割男です。さあ握手だボーイ。
 でもね、仮想世界のバレンタインというのもなかなか楽しいものでして。
 僕もセカンドキャラで女の子を使っていたので、その子から男友達にチョコを送るわけです。セカンドさんの調理スキルを活かして、チョコはもちろん素材も手作り。
 植木鉢に種を撒いてカカオを収穫。羊(モンスター)を追いかけまわして無理やり乳絞り。木工スキルで原木処理して砂糖を作ったら、最後にまとめて火にかけてドーン。
 そうしてできた無駄にクオリティの高いチョコを宅配ポストに放り込む。すると一ヶ月後には真っ白な高級ケーキがお返しに贈られてくる。
 送る方も送られる方も男。はじめは嫌がらせのつもりだったんですけど、僕の周囲ではいつの間にかそれが普通になっていました。数少ない女性フレンドも、セカンドの男キャラから僕のセカンドさんにホワイトデーのお返しをくれたり。
 リアルで女性なプレイヤーの場合、チョコ配りを面倒がる人でも、こっちからあげるとすごく喜んでくれたりするのが面白いです。まあお返しは豆腐とかですけどね。あの人たぶん白きゃなんでもいいと思ってる。
 というわけで。僕にとってのバレンタインは、男女問わず「チョコをあげたい人があげる」という仮想世界のカオスなお祭りでした。現実もこうだと楽しいのにね。

 ……僕のリアルですか? 男子校出身な僕のリアルを聞きたいんですか?(笑顔で握手に力を込めつつ)

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