エッセイ

エッセイ「私の電撃体験」第18回

鎌池和馬

『とある魔術の禁書目録』にて2004年デビュー。『ヘヴィーオブジェクト』シリーズでもお馴染みの凪良とのコンビで贈る最新作『ヴァルトラウテさんの婚活事情』は今月発売!!

あ、面白い話思いついちゃった。
多分これを読んでいる皆様にもそんな時があるはず。一から十まで完成してはいなくても、断片的なワンシーンやちょっとした設定くらいなら。それが実際に形になるか、多忙な日々の中に消えてしまうのかはさておいて、朝、顔を洗っている時、通勤通学の最中、のんびりお風呂に入っている時など、ふとした瞬間にズビカァ!! と電撃みたいなのが走る事自体はそんなに珍しくはないと思います。
 ただ、その頭の中にあるものを、形として完成させる事のなんと大変な事か。……作家としてとんでもない事を言っているような気もしますが、でも基本的に創作活動って大変で、時間のかかるもので、神経をすり減らすもので、だからこそお金をいただけるのではないでしょうか。
 もちろん、大変でも楽しいと思えて、完成した時にきちんと達成感を得られると考えられるからこそ続けていけるものなんでしょうけど。
 すると当然、私の頭の中でズビカァ!! と来ても、その全てが作品として完成するはずもなく。とりあえずプロットだけまとめておこう、とか、忘れないように箇条書きしておけば、フリーズドライのスープみたいにいつでもすぐに温かい作品にできるさ、などという甘えた方向に流れていってしまいます。挙句、そのフリーズドライの備蓄だけで疲労感(=やり遂げた感)を手に入れてしまって満足してしまったり。……本来なら、最後の一ページまで原稿を全て揃えられなければ達成感もくそもないはずなんですけど、たまーにこういう気持ちの前借りみたいな現象が起こるんですよね。
 そういうフリーズドライに限って、後で読み返すとどこに面白さの軸があったかサッパリ思い出せなくなって後悔の渦に呑み込まれるのはお約束です。

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