エッセイ

エッセイ「私の電撃体験」第24回

鴨志田一

2007年『神無き世界の英雄伝』にてデビュー。『さくら荘のペットな彼女』最新9巻は今月発売!!

彼女と出会ったのは、高校に入学してすぐのことでした。クラスが同じだったというわけではなく、たまたま昇降口でばったり遭遇したのです。お互いに無言で、「おはよう」の一言もありませんでした。ただ、上履きに履き替える際に距離が近づいて、一瞬だけ指先が触れ合い、ピリッと来たのをよく覚えています。
 その後、彼女とは毎朝、昇降口で顔を合わせるようになりました。イニシャルはS。少しお堅い印象のSさんです。Sさんの視線を感じつつ、うっかり触れ合ってまたピリッと来ないように気を付けながら、上履きに履き替える日々。別に話をしたいとか、付き合いたいなどと考えることはありませんでした。
 Sさんとの間には何も起こらないまま、最終学年である三年に進級しました。相変わらず、昇降口で毎朝顔を合わせるだけの関係。1ミリも進展はなし。きっと、このまま卒業するんだろうなあと思っていました。
 けれど、卒業も目前に迫った三年の冬、電撃体験が待ち受けていたのです。
 やけに寒く、とてもとても乾燥した冷たい風が吹いている日のことでした。いつも通りに登校すると、これまたいつも通りにSさんの姿が昇降口にはありました。
 もうすぐ卒業。卒業したら、Sさんに会うことは恐らくないでしょう。残された高校生活もあとわずか。それがわかっていても、このままでいいか、という気持ちは変わりませんでした。だから、何も言わずに、上履きを取り出そうと手を伸ばしました。
 でも、次の瞬間、Sさんに接近した指先に、「バチッ!」と鋭い痛みが走ったのです。今日まであれほど、ピリッと来ないように気を付けてきたのに大失態でした。思わず「いって!」と声を上げるはめに……。
 卒業までの短い期間、Sさん=shoe rackさんには、より一層の警戒心を持って接するようになったのでした。静電気こわいこわい。おあとがよろしいようで。座布団は投げないでください。

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次号は『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン』の宇野朴人先生が登場!

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