エッセイ

エッセイ「私の電撃体験」第14回

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甲田学人

2001年『Missing 神隠しの物語-』で電撃文庫よりデビュー。以降、単行本にて『夜魔』、メディアワークス文庫にて『夜魔 -怪-』、電撃文庫にて『断章のグリム』シリーズを執筆。

年を取って大分マシになりましたが、私は子供の頃、自転車に乗っていると道中の記憶がなくなる子供でした。たとえば登下校中、ふっ、と考え事を始めると、没頭して周りのことが分からなくなるのです。気づいたら信号待ちをしていたり、家にいたり……。
 関心のないことは、とにかく目に入らない子供でした。運動に関心がなかったので、体育のサッカー中に考え事をして記憶がなくなりました。気が付いたら顔面にボールが当たってました。ボールが当たる前に記憶喪失とは順序が逆です。
 そんな子供が大学生になりました。せっせと毎日同じ駅に降りて、大学に通いました。最寄駅周辺は学生の町。年度でキャンパスが変わる学校でしたが、サークル活動などもあり、私は三年近くをその駅に通って過ごしたことになります。
 ……さて、卒業後十年ほどが経ち、用事があって、久しぶりにその町を訪ねました。町は変わっていたり、変わっていなかったり、いつも降りていた私鉄の駅に駅ビルとデパートができていて驚いたりで、そんなわけで後日、大学時代の友人にその懐かしい話題を、土産話にしたのです。それが私の電撃体験となることも知らずに……。
私「ああ、そういえば○駅、駅ビルとデパートができてたよ」
友「……なに言ってんの? そこ最初から駅ビルとデパートあったよ」
私「………………え?」
 そう、デパートに何の関心もなかった私は、三年近く利用した駅に『駅ビルとデパートがあることに全く気がついていなかった』のです。駅とスクールバスと、本屋と画材屋と飲み屋、私の頭の中の地図にあるのはたったこれだけで、恐ろしいことに他のものは全く目に入っていなかったのでした。
 ささやかながら電撃が走った体験。
 こんな人間でも作家になれば生きていけます。

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次回は『ストライク・ザ・ブラッド』の三雲岳斗先生が登場!

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