エッセイ

エッセイ「私の電撃体験」第9回

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佐島 勤

西暦19XX年、日本の片田舎に生まれる。和洋のスペースオペラを糧に少年時代を過ごす。青年時代、ファンタジーと伝奇小説に転向。卒業後、企業戦士(ただし雑兵)として現実世界に魂を売り渡すも、西暦2011年、遅れてきたジュブナイル作家として空想世界に帰還を果たす。(本プロフィールには虚偽と誇張表現が含まれています)

それは、とある蒸し暑い真夏の夜のことでした。そろそろ「若手」を卒業しようかという頃、初の隔地転勤を命じられた私は、夏の日も既に落ちきった刻限、仮の住処(すみか)となるアパートへたどり着きました。靴を脱いだ先は転勤先の同僚(予定)が見つけてくれた築二十年の安アパートです。しかし古いとはいえ鉄筋コンクリ、小さいながらも風呂トイレ付き、壁や天井から音が漏れてくることもなく、電気も水道もガスもきちんと通っていました。とはいえ備え付けのエアコンなど無く、職場で電器屋さんの情報を仕入れて買いに行かなければなりませんでしたけど。
 食事を外ですませていた私は、サッサとお風呂に入って休むことにしました。しかし、サッパリ汗を流したところまでは良かったのですが、何分季節は真夏です。エアコンの無い室内は、体感でサウナの一歩手前。入浴前にすませておくんだったと自分の不手際を呪いつつ、まだ箱詰めされたままの扇風機を出して暑さを凌ぐことにしました。暑気と湿気にイライラしながら扇風機を組み立て、ようやく涼を取れる、と思ったその時のことです。
「あちっ!」
 それは他ならぬ自分の口から漏れた悲鳴でした。指先からじんわりと広がる痺れと痛み。赤く腫れた右手を見て、ようやく認識が現実に追いつきました。そうです。扇風機のプラグをコンセントに差し込んだ時に飛び散った火花で火傷したんですね。
 幸いその火傷は軽微なものでした。しかしこの人生初の感電事故以来、私は妙に帯電体質と言いますか、静電気に悩むようになってしまいました(きっと関係ない)。冬場は玄関や自動車のドアで無言の悲鳴を上げること数知れず、セルフスタンドでは何度も何度も静電気除去シートに手を擦り付けます。
 今日も忘れず、パソコンに電源を入れる前に掌を机の脚に押し付けて……と。さて、この原稿を打ち込むことと致しましょう。

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