エッセイ

エッセイ「私の電撃体験」第19回

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和ヶ原聡司

『はたらく魔王さま!』にて第17回電撃小説大賞<銀賞>を受賞しデビュー。最新6巻は今月発売!! ほかに、「月刊コミック電撃大王」「電撃マオウ」各誌でコミカライズ連載中!

小学校四年生になるまで、私は読書が大嫌いな子供でした。
 そうなってしまった原因は、読書人の母の勧めてくる本が、小学生の私にはあまりに難解すぎたからだと今でも思っています。
 分量を見るだけで眩暈がしそうな『ナルニア国物語』全巻。ページ数が千を超える『古事記・日本書紀』。文化背景への造詣が全くない『小公女』等々……。
ファミコン、ジャンプ、ドラえもんに心奪われていたクソガキに古事記はねぇだろうと今でも思います。
 私の読書嫌いを察した母は、今度はゲーム関係のワード満載の『北欧神話』やアニメにリンクさせて『怪盗ルパン』など児童向け文学を用意し始めました。しかし当時の児童書特有のおどろおどろしいタッチの挿絵を嫌った私は結局漫画とゲームに逃げ、母を大いに落胆させました。
 そんな私を、祖父に連れられて行った書店でのある本との出会いが変えました。
『ドラゴンクエストIV 摩起黎明』。今尚尊敬してやまない久美沙織先生がお書きになった、ファミコンソフト・ドラゴンクエストⅣの文庫ノベライズの一巻目でした。
我を忘れて熱中したドラゴンクエストの小説があることを知ったあの日の興奮は今でも忘れません。それにタイトルはドラクエでも中身は小説です。これなら普段漫画ばっかり読んでることを快く思わない親も許してくれるに違いない。
 祖父にねだって買ってもらった全四冊を、読書嫌いの私が一日で読み終えました。
 既知の物語を追っているはずなのに、ゲームとは全く違う新しい物語の世界がそこにはありました。
小説がゲームにも漫画にもない世界や、学校で教わらない言葉を教えてくれることを知った私は、その時初めて文字から世界を想像する術を身に着け、そこから私の読書人生は幾何級数的な広がりを見せ、そして二十年後の現在、本を書く仕事をしています。
 ところでこのエッセイを書いていて、母に勧められた本を一冊だけ、今に至るも読んでいないことに気付きました。
『トムは真夜中の庭で』。
 二十年前に出会っていたはずの新しい物語を探しに、これから書店に出かけたいと思います。

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次号は『彼女はつっこまれるのが好き!』のサイトーマサト先生が登場!

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