エッセイ

エッセイ「私の電撃体験」第8回

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ゆうきりん

執筆の励みは、玩具と映画と美味しいもの。最近は料理を作るために台所に立つ時間がどんどん長くなってます。時間のあるときは、浅草、秋葉原、新宿などによく出没します。暗黒面は需要の関係もあり、封印して充電中。

えー、『私の電撃体験』というお題でエッセイを書きませんか、と言われて、これでおいらも一人前の電撃作家だ! と喜んで飛びついたものの、思い返してみると意外とない。なのでふたつほど。ひとつめは小学生の頃。私の周りでは都市伝説の走りのような『口裂け女』が広まっていて、夜、外を歩くのが怖かったんです。でも塾には行かなくちゃならない。私は公団住宅──いわゆる団地に住んでいたんですが、これがまたどの棟も判を押したように同じ造りなんです。しかも外灯も少なくて暗い。で。ある日の夜、塾から帰ってきて三階に上がっていったら、自分の家がない。表札の部屋番号(棟番号はないんです)はあってるのに名前が違う。なんで? どうして? もうパニックです。何がおきたのかわからない。慌てて外に出てもそこにはまったく同じ造りの建物が何十とずらりと並んでいる。建物には棟番号がついているんですがこれが暗くて見えない。異世界に迷い込んでしまったんじゃないかと本気で思いました。『口裂け女』にこういう世界に連れ込まれたんじゃないか? 殺される! と泣きそうになりながら必死に家を探しました。まあ、結局はひとつ通りを間違えて別の棟に入ってしまっただけだったんですが、通りを含めてまったく同じ造りで、家を区別するものが表札の名前以外になかったので本当に怖かったです。で、ふたつめ。高校の国語で『短編小説を書く』という授業があったんですが、その時に担当の先生が私の書いた短編を誉めてくれ、皆の前でそれを読んで涙するということがありました。表面上は『やめてくれ、はずいー』的な態度を取っていた私ですが、本心ではめちゃくちゃ興奮してました。自分の書いたもので泣いてくれるなんて、と。作家になりたいと思うようになるのはもう少し後なんですが、あれは本当に電撃的な体験でした。自分の書いたものをおもしろかったと言ってもらえる悦び──あの電撃体験がこれからも続くようがんばっていこう、と私はいつも思っています。

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