午後二時はまったりタイム。
お昼ご飯が終わって三時のおやつまでのインターバル、緩急で言えば非常にゆるーい時間帯の話であった。
「ねえちゃーん」
今年で六歳になる陣内忍がかやぶき屋根のお屋敷の中をぱたぱたと走り回っている。
「姉ちゃんどこー?」
「どうしたの忍、そこは生ゴミ用のポリバケツよ」
あっ、姉ちゃん! と台所の隅っこでゴミバケツの蓋を閉めた忍が振り返る。
幼い彼は長い髪に真っ赤な浴衣、おまけに超絶グラマラスな座敷童の腰の辺りにひっついて、
「もー、姉ちゃんがいないと始まらないでしょ!」
「?」
「こっち来て。とにかくマッハで来て!」
ぐいぐいと手を引っ張られるままに座敷童は台所から居間を抜けて廊下へ。どうやらでかめのお茶の間に向かっているようだった。
座敷童の手を掴んでずんずん先を歩きながら、忍は途中で他にも声をかけていた。
「でっかい豚も来て」
「ぶー、任せておいて」
「『白き女王』もちょっと来て」
「うふふ、あにうえと戯れる事ができるのでしたら何だって」
んんっ? と座敷童の眉が不自然に動く。やばい気がする。またなんか始まろうとしているような。後になって思い返してみればあれが前触れだったのじゃ、の空気がビシバシと彼女の第六感を刺激しまくる。
そして広いお茶の間に到着するなり、いつの間にか居並んでいたヤツらを前に、六歳の忍はこう宣言していた。
「よし! 全員揃ったところで、これから『ごーこん』を始めます!!」
座敷童の思考が空白で埋まった。
とんでもない爆弾が投げ込まれた。
「えっ、あの。ちょっと!」
「何しろごーこんは最先端のアソビらしいからな! 俺もチェケラしなくちゃだ!!」
「ちぇけ??? し、忍? もうちょい詳しい経緯を……」
「この座卓に全員集合な。俺は男の子なのでこっち側、姉ちゃんは女の子なのであっち側!」
ちょっとー、という異議申し立ては完全に却下された。
ちなみにお茶の間を貫く細長い座卓に着いた愛の戦士達の顔ぶれはこんなもんだ。