吸血鬼の姉とゾンビの妹が割とガチで掴み合っているけどどうしましょう
……ヴァーチャルでだけど
【第四章】

著者：鎌池和馬

【Pick up】おしゃべり猫さんに録音された委員長の声【Net files】

　おとなりのサトリ君がさいきん元気がありません。

　お父さんとお母さんがケンカばかりなんだって。

　ちかく、かぞくがバラバラになってしまうかもしれない。そんなはなしをしているのを、こっそり聞いたことがあります。

　サトリ君はいつも笑っているけれど、たまにみんなの見ていないところでかおをくしゃくしゃにしていることがあります。

　私だって、そんな目にあったらどんなきもちになるか分かりません。

　だって、かぞくっていうのはぜったいであって、そんなのが目の前でこわれていくのを見ちゃったら、何をしんじていいのか分からなくなっちゃいそうだから。

　でも。

　せかいの全てがしんじられないようなきもちになっちゃったって、それでせかいがかわってしまうわけじゃないんです。きっと、しんじられるものはサトリ君のまわりにいっぱいあるはずなんです。ううん、つらいおもいをしているサトリ君だからこそ、そんなものといっぱい出会っていかなくちゃいけないはずなんです。

　たにんごとなんかじゃないぞ。

　だれかにきたいしているばあいなんかじゃないぞ。

　まずは私がそうなろう。

　たとえサトリ君のしんじるものがぜんぶガラガラくずれちゃっても、それでもぜったいにかれをうらぎらないもの、しんじられるもの、かわらないもの。

　私がそんなにんげんになってあげるんだ。

　ぜったいに。