【Search Engine】警備会社提携のインターフォンより【Absolute NOAH】
「……行っちゃったね、お兄ちゃん」
玄関に残されたアユミはぽつりと言った。
「お姉ちゃん、ほんとは分かっていたでしょ? このままお兄ちゃんがかち合っても勝ち目なんかないって。十中八九失敗して、命だって危なくなるって」
「まあ、現実はメロドラマじゃありませんからねえ」
でも、と。
エリカは言葉を繋げる。
「……止められる訳がないでしょう。私だって、アユミちゃんだって、あの暗い地下でずっとずっと願っていたじゃないですか。祈っていたじゃないですか。いつか、いつの日か、何の脈絡もなく白馬の王子様が助けに来てくれないかって、そんな事を」
その王子様は、彼女達には間に合わなかったけど。
エリカもアユミもたくましくて、自分で自分の生き残る道を切り拓いたけど。
もしも。
今からでも、誰かが王子様になると言うのなら。かつての自分達のように、何の脈絡もなく白馬の王子様の到来を願うしかない女の子がいるのなら。
「……仕方がありませんよね、まったく」
「とか言って、ほんとにお兄ちゃんが光十字に捕まったらどうする訳?」
「あら、アユミちゃんだってそのつもりでしょう?」
姉妹は仲良く笑う。
そして夜の住人達は同時に言った。
「「そんな展開になったら、世界を血の海に沈めるに決まってるし?」」