【Search Engine】五戦目の分析【Absolute NOAH】
「う……」
天津アユミは呻き声と共にゆっくりと瞼を開けた。
どうやら自分が大の字になって転がっているのが分かる。気絶していたのは何分だったか。どっちみち、相手が本気なら全身の縫い目を外されてバラバラにされていただろう。
倒れたままぐらつく頭を振ると、何だか馬鹿デカい山があった。
というか、彼女の身長よりも大きな触腕の山の中から、か細い手がぴこぴこ振り回されている。
「あ、あ、あ、アユミちゃーん……」
「うわあ気持ち悪い! あたしそっちじゃなくてほんとに良かったー……」
「ふぎゅぐぐぐ。だ、ダメだ出られない。いくら噛み付いても簒奪もできない。あ、アユミちゃん、もし良かったらこいつに噛みついてみてほしいんですけど」
「やだよそんなぬるぬるしたの! ふっ、ふぐうー!! あとあたしのゾンビの場合はお姉ちゃんと違って支配できないから思いっきり締め上げられるだけだと思うけど」
幸か不幸か、触腕自体は元の持ち主から完全に切り離されている。トカゲの尻尾と同じでしばらくはのた打ち回るが、いつかは勝手に力尽きるだろう。
触腕の山の中で、天津エリカがこんな風に言ってきた。
「……それにしても、とんでもなかったですね、彼女」
「そだね」
「どうやって五戦の絶壁を乗り越えたんだと思います?」
「光十字の話が正しければ、あの魔女にとってこの一戦が運命の五戦目。でも、あたしとお姉ちゃんが同時に当たったじゃない? そこで数がズレたのかもよ」
「ああ、つまり一段飛ばしのプラス二で存在しない六戦目を戦っていた、とみなされた可能性ですか」
「ま、こんな不自然なリングの上じゃなくて自由に広がるオープンワールド、供饗市全体を使ったら全然結果は違ったんだろうけど、でも、結果は結果か。くそー、挑戦者からやり直しの気分……」
彼女達は彼女達で、とある理由から『一番のアークエネミー』という座に強いこだわりを持つ。それが発端になって姉妹同士で掴み合いになる事さえ。
そこに突如現れたダークホース。
戦闘条件はかなり突飛とはいえ、やはりこの結果は捨て置けない。
「というか、高校生のくせに中学生で妹なあたしより小動物系の匂いがぷんぷんしてるし」
「金髪部分も被ってますし!」
「何だもーお兄ちゃんてばあたし達を足して二で割ったパーフェクトアイドルでもスカウトしてきたっていうのか、ふぐうー!」
「お隣の委員長ちゃん以外にも脅威の数が増えるとか勘弁してほしいんですけどねえお姉ちゃんとしては!!」