【confidential】収監された窃盗団との面会記録【storage A51】



 ベガスのカジノは南米の銀行とは違う。もちろん覆面被って拳銃頼りで真正面から飛び込むなんて愚の骨頂だが、こっそり大金庫を狙うためにトンネルを掘るにも作法があるって事さ。

 アメリカは車社会だから地下鉄だらけの欧州と違って地中を開発する必要は特にない。そんな話もあるが嘘っぱちだ。実際にゃあ電気ガス水道はもちろん、この国の行政は人目についちゃまずいもんは何でもかんでも地面掘って埋めたがる風潮があるから、ベガスの地下は蜘蛛の巣みたいになってるぜ。宇宙人の解剖とかUFOの秘密研究所だって大抵は暗い地下って相場が決まってるもんだろ? みんな同じさ。変態犯罪者から政府高官まで、みんな秘密は地下に隠せば大丈夫って安全神話を本気で信じてやがる。

 俺がこうして捕まったのも、新入りの馬鹿がヘマしてガス管を傷つけやがったからだしな。

 で、前置きは良いとして、こんなトンネル堀りに何が聞きたい? 判決が出てから結構経つ。新聞テレビはもちろんネットニュースだって忘れている頃だから、今さら犯罪手記の執筆依頼なんて話でもねえんだろ。

 ま、何でも良いけど。

 とにかく、質問なら手早くな。明日も明後日も無条件で会えるだなんて思うなよ。何しろ俺達はトンネル堀りだ、その事実を忘れるんじゃあねえぞ。