【confidential】防腐薬品の予算申請【storage A51】
先日起きた船外活動中の不幸なデブリ事故は、我々に新たな懸念を提起する事となった。仮に実験中に飛行士が死亡した場合、遺体はどこに置いてどう処理するか。船内の衛生環境はどのようにして維持し続けるべきか。感染症の蔓延は絶対に阻止したい。単に飛行士の健康面はもちろんだが、場合によっては月面などを地球由来の細菌類で汚染してしまうリスクも考えられるためである。
宇宙が無の領域であるという認識は、建築、造船技術の向上によって改められつつある。一定以上の体積のステーションが乱造されれば、我々人類は自らの天敵を宇宙空間で醸成させてしまう恐れすらあり得る。
エイリアンは地球人が作ってしまうかもしれないのだ。元は何の変哲も無い腸内細菌であっても、宇宙線や無重力など地球外環境の影響は未知数であり、決して捨て置けない。我々の手でスペイン風邪やペストのような被害を生み出す訳にはいかないのである。
この問題に対し、ロシア側では偉人の防腐加工技術の応用に着目している事が挙げられる。我々としてもハーバルサイエンス社とコンタクト。アークエネミー用に開発されていた防腐技術の一部貸与を迫る方向で、実証試験に入る事を決定する。