あとがき



 そんな訳で吸血鬼の姉とゾンビの妹も四作目になりました。

 鎌池和馬です。

 学園都市、機動整備大隊、インテリビレッジ、トイドリーム35など、私はどうも作られた街(?)にロマンを覚えるようで。砂漠のど真ん中のラスベガスや海の上のヴェネチア、日本だと軍艦島など、普通そうならないだろ! という街を見ると問答無用で魂を引っ張られてしまうのです。馬鹿でかい空母や海底油田などもたまりません。


 アメリカらしい恐怖とは何ぞや。こちら、インテリビレッジの座敷童を手がけていた時も洋の東西のホラーの壁みたいなのを少し意識したりもしていたのですが、ネバダの軍事基地、南極から回収した謎生命、火力が足りなければ逃げ回るのではなくスケールを上げて空爆で吹っ飛ばすなどなど、今回は思い切り欧米のホラーを意識しています。

 シミュレータ上やリングを区切って限定したエンタメ格闘技と違い、何気に今回はリアルな街での本気のパンデミックになったというのもシリーズ内で大きなハードルを一個超えたのかなと。

 バーチャルではあれだけ飄々としていたサトリが、いざ無制限の実戦ではどれだけ振り回されるか。また、それほどの被害を出したアークエネミーをどう扱うのか。その辺りの落差も楽しんでいただければと思っております。


 ゲストヒロインのアナスタシアについては、飛び級で大学に通うミニマム天才少女、というこれまた日本の学校では出しにくいキャラに。後はIQ180と得体の知れないナゾの博士号があれば完璧ですね。

 種族は全身を総シルクのドレスで固めた家政婦妖精ことシルキーですが、こちらは西洋版座敷童という触れ込みで、機会があればインテリビレッジで使えないかなとストックしていたネタです。

(座敷童と違って本来のシルキーは絹のドレスが似合う淑女なのですが、作中では滅法ミニマムにしています。グラマラスな座敷童との対比ですね)

 調べてみた印象では、座敷童よりも攻撃的でわがままなのかなとも思いましたが。本編ではわりかし唯我独尊な美少女ハッカーだったアナスタシアですが、種族としての血に抗えずメイドをやっている姿などをイメージしていただく事でも萌えを補完していただければと。何気に『主人公のサトリ以外にマクスウェルの価値を正しく知るキャラクター』という意味でも大きな意味を持つ人物でもあります。


 舞台をアメリカに移しての特別編ですが、しれっと一巻から続くダムの底の秘密に触れたり、シミュレータの力を使ってカラミティに新しいアプローチを見出したり、大きなうねりを持つ四作目。単巻のみならずシリーズの連なりとしても楽しんでいただければと願っております。



 イメージイラストの真早さんと担当の三木さん、小野寺さん、阿南さんには感謝を。街どころか国を飛び出すほどスケールが大きくなってもやっぱりサトリはサトリ。このブレの少なさには、最初にいただいたキャララフによる力が強いのだと思います。ありがとうございました。

 そして読者の皆様にも感謝を。紙媒体の電子化ではなく、最初から完全web想定としての実験作で公開が始まった当シリーズですが、ここまで無事に定着できたのは応援してくれる皆様のおかげです。ありがとうございます。


 それでは今回はこの辺りで。


 ああ、マップとか辞典とかもバカスカ入れてみたい…… 鎌池和馬