あとがき



 そんな訳で吸血鬼の姉とゾンビの妹も五冊目となりました。

 鎌池和馬です。

 今回のテーマは家出少年と巨大ザメ。……これだけ並べるとサメが癒してくれそうで不思議。歯は永遠に生え替わる、電気で獲物を知覚する、コバンザメ含む寄生生物だらけ、と色々面白い特徴を持つこいつに、今回は潜水艦と空母の合いの子みたいなイメージを与えてみました。

 また、サメのホラーと言ったらやっぱり主要登場人物を海中に引きずり込むところが花形ですので、ここをさらに尖らせるにはどうすればよいのかを考えていく内に、水を起点に別の領域へ引きずり込んで嬲り殺しにする、という設定に繋がっていきます。


 今回は家出と放浪が示す通り、サトリにとっての迷いを露わにする巻でもありました。アークエネミーに泣いてほしくはないけど、絶対服従を誓った訳でもない。危ういバランスの中で行ったり来たりしていたサトリは完璧人間ではないので、ちょっと何かの歯車が狂えば光十字のようになってしまったかもしれません。セイレーンやリヴァイアサンと対峙した時の落としどころ、妥協点からもそんな不安定な人間らしさを感じていただければと。


 さて、今回で自分の迷いと直面し、正しいか間違っているかはさておいて一応の答えを出したサトリ少年。故にいつものお遊び要素である『最後の選択』もちょっとひねってみました。これからいよいよアブソリュートノア、というより彼らをも振り回すカラミティを見据えていく事になります。そもそも世界の終末とは何なのか。史上最大の親子ゲンカはどこへ転がっていくのか。その辺りもご期待いただければと。



 イメージイラストの真早さんと担当の三木さん、阿南さん、小野寺さんには感謝を。最初の一冊目から積み上がってまいりました。一つの世界観を様々な角度から眺め、新しいものを作っていく過程では様々なイラストやキャララフなどがこの上ない材料となっています。具体例を挙げますと、セイレーンの髪の毛設定などは元となる人魚の黒山ヒノキがいなければ活きなかったでしょうし。ご助力本当にありがとうございました。

 そして読者の皆様にも感謝を。バーチャルの中で好き放題しようぜ! そうだゾンビだ、吸血鬼だ!! というフラッシュアイデアから始まったこのお話も、気づけば少年が世界の終末と直接対峙するようなスケールになってきました。ここまで膨らませる事ができたのも、応援してくださる皆様のおかげだと感じております。今回もありがとうございました。


 それでは今回はこの辺りで。


 一番成長してるのはサトリよりもマクスウェルのような?  鎌池和馬