ほうかごがかり4 あかね小学校

三話 ⑩

「……そう……そっか……」


 かざのない『しおり』の表紙を見つめ、なや

 そして、やがて、ぽつりとは認める。


「そうだよね……仕方、ないよね……」

「うん。失敗は、いっしょにあやまろ。あやまる時は、わたしが前に立つから」


 はそれにうなずいて、はげました。

 あんした。これまでずっと、『かかり』の中心として二人でやってきた。だからがこの失敗を受け入れる強さは持っていると信じていたし、みんなから責められるかもしれないことも、にとっては絶対的に苦手なじようきようのはずだが、みんなの未来のためにかくしてくれると思っていた。


だいじよう、守るから」

「うん……」

「がんばろ」


 そろそろ、みんなが集まる時間だ。『しおり』に視線を落としたまま、暗い表情をしているうでに、やさしくれる。

 気持ちは分かる。にとって、これからのことは大変なストレスだ。

 失敗のことだけではない。対人関係にきようのあるにとって、これから引き合わされるけいは何よりも苦手な初対面の人間だった。

 それに────まだ理由がある。

 というよりも、そちらの方がはるかに問題だった。いまたち『かかり』は、

 むしろ『しおり』や失敗やけいとの対面は、おまけだ。

 おまけというよりも、その大問題を解決する手がかりを求めて行き着いた結果なので、実際には問題のうちには入っていなかった。

 これからみんなが集まる。

 だがその大問題のせいで、顔を合わせるのが気が重い。

 夏休みに入って、わざわざ集まらなければ顔を合わせられないじようきようは、解決のためにはい状態ではなかったが、正直に言えば心は楽だった。

 何が起こったのか。

 それこそが────あかね小学校『ほうかごがかり』をおそった、夏休み前の三つのおそろしい出来事の、

 時間が来て、公園に『かかり』のみんなが集まってくる。

 徒歩だったり自転車だったり。あいさつをして、そして全員がそろって会話も少なくただ待っていると、ほどなくしてけいが、公園に姿を現した。


「…………」


 キャップをぶかにかぶり、絵の具でよごれたはんのリュックサックを背負って、折りたたみ式のイーゼルをかたにかけ、空いた手をジーンズのポケットに入れて、たちの方へと歩いてくる、けい

 が進み出て、むかえる。


「来てくれてありがとうございます」

「ああ」


 けいは短く答えると、顔を上げ、しかしの方には目もくれずに、まず真っ先に集まった他のみんなの方を見た。

 見知らぬ人間の視線に身をすくめる

 協力者だとは聞かされているが、不安そうにけいを見る

 そして────


「なるほど、この二人が?」


 けいはそう言って、三人から視線をどおりさせて。


「この二人が────ってわけか」

「…………!」


 きんちようの表情で、けいを見返しながら並んで立っているの二人を見て────けいはそう言って見下ろすと、疑わしげに観察するように、右目を少し細めた、あの左右たいしようの表情をした。


【5巻に続く】


刊行シリーズ

ほうかごがかり5 あかね小学校の書影
断章のグリム 完全版3 赤ずきんの書影
断章のグリム 完全版2 人魚姫の書影
断章のグリム 完全版1 灰かぶり/ヘンゼルとグレーテルの書影
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