- 魔法科高校
- ブルーム、ウィード
- フォア・リーブス・テクノロジー
- トーラス・シルバー
- エイドス〔個別情報体〕
- イデア〔情報体次元〕
- 起動式
- サイオン〔想子〕
- プシオン〔霊子〕
- 術式補助演算機
- 十師族
- 数字付き
- 数字落ち
- 九校戦
- スピード・シューティング
- クラウド・ボール
- バトル・ボード
- アイス・ピラーズ・ブレイク
- ミラージ・バット
- モノリス・コード
- 様々な現代魔法
- 魔法と魔法師
- 日本魔法協会主催『全国高校生魔法学論文コンペティション』
- 魔法剣
- 2095年の世界情勢
- 2095年時点の戦略級魔法師・十三使徒
- パラサイト
- 魔法技能師開発研究所
- 九校戦 新ルール
- ロアー・アンド・ガンナー
- シールド・ダウン
- スティープルチェース・クロスカントリー
- 四葉家家系図
- 『人間主義』と国際情勢
- フリズスキャルヴ
- 顧傑
- 顧傑の暗躍
- 顧傑の特性
- 一条将輝転校日記
- 人工島『西果新島』
- 慰霊祭
- 日本と大亜連合の休戦協定
- オーストラリアの国策
- イギリスとオーストラリアの関係
- 十三使徒とその戦略級魔法師
- 二十八家の若手会議
- ディオーネー計画
- 『ディオーネー計画』を構成する4つのスキーム
- 2097年現在の宇宙開発情勢
- 誓約―オース―
- ESCAPES―エスケイプス―計画
- 恒星炉
- パラサイドール
- 周公瑾
- 鬼門遁甲
- スターズ
- アンジー・シリウス暗殺を企てた隊員たち
- 魔法式の新モジュール『チェイン・キャスト』
- 新戦略級魔法『海爆』―オーシャン・ブラスト―
- 司波達也の新スーツ『フリードスーツ』
- 国防陸軍第一師団所属・遊撃歩兵小隊――通称『抜刀隊』
- 古式魔法『蹟兵八陣』
- イリーガルMAP
- アストラル・ディスパージョン
- 忍術の衰退
- SMAT
- リーナの憂慮
- 北西ハワイ諸島
- パールアンドハーミーズ米軍基地
- ミッドウェー監獄
- シンクロライナー・フュージョン
- 氷河期―グレイシャル・エイジ―
- 術式斬壊―グラム・スラッシュ―
- 雷獣
- 接触型術式解体
魔法科高校
現代の魔法使い『魔法師』を養成することを目的とした国策高等学校の名称。
全国に九校設置されている。設置場所は以下の通り。
この内、第一から第三までが一学年定員200名で一科・二科制度を採っている(第三高校では一科のことを『専科』、二科のことを『普通科』と呼んでる)。一科生と二科生の違いは指導教員の有無であり、教員の個人指導を受けられない点を除けば、一科と二科のカリキュラムは同一となっている。第四~第九は一学年100名であり、全員に指導教員が付くが、その質は第一~第三に比べてワンランク落ちると言われている。各校のカリキュラムは基本的に国立魔法大学の定める要綱に従っているが、特色のある校風を掲げる学校もある。例えば第三高校は戦闘系の魔法実技を重視しており、それと対照的に、第四高校は魔法工学的に見て意義の高い複雑で工程の多い魔法を重視している。魔法の方向性だけでなく、それが使用される環境で特色が表れている学校もある。第七高校は水上・海上で実用性の高い魔法を通常のカリキュラムとは別に教えており、第八高校は寒冷地帯や高山地帯といった厳しい生活環境において有益な魔法の野外実習を取り入れている。
ブルーム、ウィード
第一高校における一科生、二科生の格差を表す隠語。
一科生の制服の左胸には八枚花弁のエンブレムが刺繍されているが、二科生の制服にはこれがない。
▲一科性のエンブレム
フォア・リーブス・テクノロジー
国内CADメーカーの一つ。もともと完成品よりも魔法工学部品で有名だったが、シルバー・モデルの開発により一躍CADメーカーとしての知名度が増した。
トーラス・シルバー
わずか1年の間に特化型CADのソフトウェアを10年は進歩させたと称えられる天才技術者。
エイドス〔個別情報体〕
元々はギリシア哲学用語。現代魔法学においてエイドスとは、事象に付随する情報体のことで、『世界』にその『事象』が存在することの記録で、『事象』が『世界』に記す足跡とも言える。
現代魔法学における『魔法』の定義は、エイドスを改変することによって、その本体である『事象』を改変する技術とされている。
イデア〔情報体次元〕
元々はギリシア哲学用語。現代魔法学においてイデアとは、エイドスが記録されるプラットフォームのこと。魔法の一次的形態は、このイデアというプラットフォームに魔法式を出力して、そこに記録されているエイドスを書き換える技術である。
起動式
魔法の設計図であり、魔法を構築するためのプログラム。
CADには起動式のデータが圧縮保存されており、魔法師から流し込まれたサイオン波を展開したデータにしたがって信号化し、魔法師に返す。
サイオン〔想子〕
心霊現象の次元に属する非物質粒子で、認識や思考結果を記録する情報素子のこと。
現代魔法の理論的基盤であるエイドス、現代魔法の根幹を支える技術である起動式や魔法式はサイオンで構築された情報体である。
プシオン〔霊子〕
心霊現象の次元に属する非物質粒子で、その存在は確認されているがその正体、その機能については未だ解明されていない。
一般的な魔法師は、活性化したプシオンを『感じる』ことができるにとどまる。
術式補助演算機
通称CAD。デバイス、アシスタンス、ホウキ(法機)とも呼ばれる。大きく分けて、汎用型、特化型の二タイプが存在する。魔法を発動する為の起動式を、呪文や呪符、印契、魔法陣、魔法書等の伝統的な手法・道具に代わり提供する、現代の魔法技能師に必須のツールである。起動式を展開するスピード、展開できる情報量はCADのハードとしての性能、どれだけ精妙で有効な起動式を展開できるかはCADに組み込まれたソフトの性能に依存する。性能の劣ったCADでも、起動式を簡略化して魔法演算領域内の処理を増やすことで発動速度を上げることはできるが、それは上級者の場合であり、一般的には、CADの処理能力が魔法発動速度の一次的な制約条件となる。
汎用型CADは、多様性を重視したCADで、系統の組合わせを問わず一度に最大99種類の起動式をインストールできる。ブレスレット形態が最も広く普及しているが、携帯端末形態の物も普及しており、操作時に両手が塞がることを嫌う現場肌の上級魔法師に好まれている。
特化型CADは、多様性を犠牲にする代わりに魔法の発動速度を重視したCADで、照準補助のサブシステムと一体化している物が主流。系統の組合せが同じ起動式を一度に最大9種類インストールできる。拳銃形態、小銃形態を取ることが多い。実弾銃で銃身にあたる部分には照準補助システムが組み込まれており、『銃身』が長いCADほど照準補助機能が充実している。司波達也が持つ、シルバー・ホーンのチューンナップモデル『トライデント』もその一つ。
▲司波達也のCAD
▲ 司波深雪のCAD
十師族
日本で最強の魔法師集団。
表の権力を放棄する代わりに、政治の裏側で不可侵に等しい権勢を維持する、というのが十師族の基本スタンスである。一条(いちじょう)、一之倉(いちのくら)、一色(いっしき)、二木(ふたつぎ)、二階堂(にかいどう)、二瓶(にへい)、三矢(みつや)、三日月(みかづき)、四葉(よつば)、五輪(いつわ)、五頭(ごとう)、五味(いつみ)、六塚(むつづか)、六角(ろっかく)、六郷(ろくごう)、六本木(ろっぽんぎ)、七草(さえぐさ)、七宝(しっぽう)、七夕(たなばた)、七瀬(ななせ)、八代(やつしろ)、八朔(はっさく)、八幡(はちまん)、九島(くどう)、九鬼(くき)、九頭見(くずみ)、十文字(じゅうもんじ)、十山(とおやま)の二十八の家系から四年に一度の『十師族選定会議』で選ばれた十の家系が『十師族』を名乗る。選定会議で選ばれなかった十八の家は師補十八家(しほじゅうはっけ)と呼ばれ、十師族各家を補佐する立場に回る。現在十師族を構成する家は、『一条』『二木』『三矢』『四葉』『五輪』『六塚』『七草』『八代』『九島』『十文字』。たまたま一から十までの数字が揃っているが、これは十師族という序列が生まれてから初めてのことで、今までは二つ三つの重複・欠番があるのが当たり前だった。
2096年の十師族選定会議にて、九島家が十師族から退き、七宝家の十師族入りが決定した。
▲十師族会議メンバー
数字付き
十師族の苗字に一から十までの数字が入っているように、百家の中でも本流とされている家系の苗字には“『千』代田”、“『五十』里”、“『千』葉”家の様に、十一以上の数字が入っている。数値の大小が力の強弱を表すものではないが、苗字に数字が入っているかどうかは、血筋が大きく物を言う、魔法師の力量を推測する一つの目安となる。この様に苗字に数字が含まれている魔法師の家系は、十師族、百家本流を一括して『数字付き(ナンバーズ)』の隠語で呼ばれている。
数字落ち
エクストラ・ナンバーズ、略して『エクストラ』とも呼ばれる、『数字』を剥奪された魔法師の一族。かつて、魔法師が兵器であり実験サンプルであった頃、『成功例』としてナンバーを与えられた魔法師が、『成功例』に相応しい成果を上げられなかった為に捺された烙印。今では『数字落ち』という名称自体、公式に使用することは禁止されている。『数字落ち』であることを理由に差別取扱いをすることは、魔法師のコミュニティにおいて重大な反モラル行為とされている。
九校戦
正式名称『全国魔法科高校親善魔法競技大会』。
その名の通り、第一高校~第九高校までの魔法科高校生たちが全国から集い、熾烈な魔法勝負を繰り広げる団体競技である。
種目は、『スピード・シューティング』、『クラウド・ボール』、『バトル・ボード』、『アイス・ピラーズ・ブレイク』、『ミラージ・バット』、『モノリス・コード』の6つ。
※『モノリス・コード』は男子のみ、『ミラージ・バッド』は女子のみの競技。
各校から一つの競技にエントリーできる人数は3名で、一人の選手が出場できる競技は2種目までと決められている。
大会の開催期間は10日間で、一年生のみが出場する競技『新人戦』も設けられている(本選は学年制限無し)。『新人戦』は4日目から8日目にかけて行われる。
九校戦の勝敗/順位は各競技のポイントの合計で決まる。1位が50ポイント、2位が30ポイント、3位が20ポイントという配分である。スピード・シューティング、バトル・ボード、ミラージ・バットは4位が10ポイント、クラウド・ボールとアイス・ピラーズ・ブレイクは4位から6位までの順位が決まらないので1回戦敗退3チームに各5ポイントが与えられる。九校戦の花形競技、モノリス・コードは1位チームに100ポイント、2位チームに60ポイント、3位チームは40ポイントが与えられ、ポイント上で最も比重の大きな競技になっている(『新人戦』のポイントは2分の1にして総合順位に加算される)。
スピード・シューティング
選手たちからは『早撃ち』と略される競技。
クレー射撃のように空間に射出された標的を魔法で破壊する。紅白の標的が100個ずつ用意され、自分の色の標的を破壊した数を競う。予選は5分の制限時間内に破壊した標的の数を競う、各個人のスコア型。準々決勝以降は対戦型。
▲スピード・シューティング
クラウド・ボール
選手たちからは『クラウド』と略される競技。
圧縮空気を用いたシューターから射出された直径6センチの低反発ボールを、ラケットまたは魔法を使って制限時間内に相手コートへ落とした回数を競う競技。1セット3分の試合時間で、透明な箱にすっぽり覆われたコートの中へ20秒ごとにボールが追加射出され、最終的には9個のボールを選手は休みなく追いかける。女子は3セットマッチ、男子は5セットマッチで行われる。
▲クラウド・ボール
バトル・ボード
選手たちからは『波乗り』と略される競技。
元々海軍の魔法師訓練用に考案されたもので、選手はサーフィンのような1枚のボードに乗り、加速魔法などを駆使して全長3キロの人口水路を3周し、勝者を競うレース。バトル・ボードのルールとして、他の選手に魔法で干渉することは禁じられている。予選を1レース4人で6レース、準決勝を1レース3人で2レース、三位決定戦を4人で、決勝レースを一対一で競う。
▲バトル・ボード
アイス・ピラーズ・ブレイク
選手たちからは『棒倒し』と略される競技。
選手は、自陣奥に設置された高さ4メートルの櫓の上に立ち、12メートル四方の自陣に配置された氷柱12本を守りながら、12メートル四方の敵陣の氷柱12本を先に倒す、あるいは破壊するという競技。選手は純粋に遠隔魔法のみで競い、肉体を使う必要はない。そのため、この競技に参加する選手のユニフォームは自由で、規制は唯一つ『公序良俗に反しないこと』。結果、昨今では女子のピラーズ・ブレイクは九校戦のファッション・ショーとも言われる。
▲アイス・ピラーズ・ブレイク
ミラージ・バット
選手たちからは『ミラージ』と略される。女子のみの競技。
空中に投影したホログラム球体に目掛け、魔法を使って飛び上がりスティックで打つ競技。九校戦で試合数が最も少ない競技だが、試合中、選手は絶え間なく空中に飛び上がり魔法を発動し続けるため、選手に掛かる負担はフルマラソンに匹敵するとも言われている。九校戦のミラージ・バットは女子のみの種目で、凝った衣装を身にまとった女子選手が飛び回る姿は妖精のようだと評される。
▲ミラージ・バット
モノリス・コード
選手たちからは『モノリス』と略される、男子のみの競技。
『ステージ』と呼ばれる試合会場で、敵味方各々3名の選手によって『モノリス』を巡り魔法で争う。相手チームを戦闘続行不能にするか、敵陣にあるモノリスを二つに割り隠されたコードを送信することで勝敗が決まる。相手チームへは、魔法攻撃以外の直接戦闘行為は禁止されている。モノリスを割りコードを読み取るためには、無系統の専用魔法式をモノリスに打ち込まなければならない。その種目内容から、九校戦でもっとも人気があり、白熱する競技である。
▲モノリス・コード
様々な現代魔法
〇飛行魔法
重力制御により空中を移動する魔法。長らく実行は不可能とされてきたが、持続時間をごく短時間(デフォルトで0.5秒)に設定した魔法を連続発動するスキームにより、飛行状態変更の都度より強力な干渉力が要求される障碍をクリア。術者の魔法力が続く限り飛行し続けることが可能となった。
〇雲散霧消[ミスト・ディスパージョン]
物質の構造情報に干渉することにより、物質を元素レベルの分子またはイオンに分解する魔法。構造情報に対する直接干渉は最高難度の魔法に属する。
〇術式解散[グラム・ディスバージョン]
魔法の本体である魔法式を、意味の有る構造を持たないサイオン粒子群に分解する魔法。魔法式は事象に付随する情報体に作用するという性質上、その情報構造が露出していなければならず、魔法式そのものに対する干渉を防ぐ手立ては無い。その反面、魔法式を分解する為にはその構造を認識できなければらなず、コンマ数秒で発動を完了する現代魔法で魔法の発動前に魔法式を解析するには『視る』だけで魔法式の構造を認識できる特殊な情報処理能力が必要。あらかじめ使用される魔法が分かっている実験ならともかく、実用化は不可能と一般に考えられている。
〇術式解体[グラム・デモリッション]
圧縮されたサイオン粒子の塊をイデアを経由せずに対象物へ直接ぶつけて爆発させ、そこに付け加えられた起動式や魔法式などの、魔法を記憶したサイオン情報体を吹き飛ばしてしまう無系統魔法。魔法と言っても、事象改変の為の魔法式としての構造を持たないサイオンの砲弾であるため情報強化や領域干渉には影響されない。また、砲弾自体の持つ圧力がキャスト・ジャミングの影響もはね返してしまう。物理的な作用が皆無である故に、どんな障碍物でも防ぐことはできない。
〇氷炎地獄[インフェルノ]
対象とするエリアを二分し一方の空間内にある全ての物質の振動エネルギー、運動エネルギーを減速、その余剰エネルギーをもう一方のエリアへ逃がし加熱することでエネルギー収支の辻褄を合わせる熱エントロピーの逆転魔法。隣接するエリアに灼熱と厳寒を同時発生させる。
〇ニブルヘイム
振動減速系広域魔法。領域内の物質を比熱、相(フェーズ)に関わらず均質に冷却する。応用として、ダイヤモンドダスト(細氷)、ドライアイス粒子、そして時に液体窒素の霧すらも含む大規模冷気塊を作り出し攻撃対象にぶつけるという使用法もある。
▲様々な現代魔法(ニブルヘイム)
〇ドライ・ブリザード
空気中の二酸化炭素を集め、ドライアイスの粒子を作り出し、凍結過程で余った熱エネルギーを運動エネルギーに変換してドライアイス粒子を高速で飛ばす魔法。
〇這い寄る雷蛇[スリザリン・サンダース]
ドライアイスの礫を発生させる『ドライ・ブリザード』によりドライアイス気化によって水蒸気を凝縮させ、気化した二酸化炭素を溶け込ませた伝導性の高い霧を発生させた上で振動系魔法と放出系魔法により摩擦電気を発生させ炭酸ガスが溶け込んだ霧や水滴を導線として敵に電撃を浴びせるコンビネーション魔法。
〇爆裂
対象物内部の液体を気化させる発散系魔法。生物ならば体液が気化して身体が破裂、内燃機関動力の機械ならば燃料が気化して爆散。燃料電池でも結果は同じ。可燃性の燃料を搭載していなくてもバッテリー液や油圧液や冷却液や潤滑液など、およそ液体を搭載していない機械は存在しないため、『爆裂』が発動すればほぼあらゆる機械が破壊され停止する。
魔法と魔法師
〇魔法師
『魔法技能師』の略語。魔法技能師とは、実用レベルで魔法を行使するスキルを持つ者の総称。使用する魔法の種類が現代魔法であっても古式魔法であっても、一括りで『魔法技能師』と呼ぶ。但し、古式魔法の遣い手は自ら表現する際、『魔術師』『陰陽師』『行者』『忍び』などの伝統的な名称を好む。魔法師の資質を持つ者の比率はティーンエイジで千人に一人、成長期のストレスによる能力喪失で成人後は一万人に一人と言われているが、これはあくまでも『実用レベル』であって、『実戦レベル』の能力を持つ者になると更に希少な存在となる。
〇魔法式
事象に付随する情報を一時的に改変する為の情報体。魔法師が保有するサイオンで構築されている。事象に付随する情報もサイオン情報体であり、魔法式はこれを改竄するコンピュータウイルスのようなものと言える。『世界』には時間的連続性を保とうとする修復力があり、その為に魔法式の効果は永続的なものとならない。但し、世界の修復力は時間的連続性を保つものであるから、十分な長期間、魔法による『改竄』が続けば、それが『事実』として『世界』に『定着』することもある。魔法治療は、この性質を利用している。
〇魔法式の出力プロセス
魔法式の出力は次のプロセスをたどる。①起動式をCADから受信する。これを『起動式の読込』という。②起動式に変数を追加して魔法演算領域に送る。③起動式と変数から魔法式を構築する。このプロセスは魔法演算領域で自動的に行われ、魔法師本人にとってもブラックボックスである。④構築した魔法式を、無意識領域の最上層にして意識領域の最下層たる『ルート』に転送、意識と無意識の狭間に存在する『ゲート』から、イデアへ出力する。⑤イデアに出力された魔法式は、指定された座標のエイドスに干渉しこれを書き換える。単一系統・単一工程の魔法で、この五段階のプロセスを半秒以内で完了させることが、『実用レベル』の魔法師としての目安になる。
〇魔法の系統
伝統的な魔法は、発生させる現象を象徴元素に当て嵌めて術式を分類していた。代表的な分類は、『地』『水』『火』『風』の四大に『空』を加えた五輪、『木』『火』『土』『金』『水』の五行など。『光』『闇』『虚』『無』『天』『月』『雷』『山』『沢』等が付け加えられることもある。超能力研究を端緒とする現代魔法は、現象をその見掛けの性質ではなく作用面から分析し分類した。即ち、〔加速・加重〕〔移動・振動〕〔収束・発散〕〔吸収・放出〕以上、四系統八種類である。無論、分類には必ず例外があって、現代魔法学においても四系統八種に分類できない魔法が認められている。例えば四系統八種は作用面に着目した分類だから、超心理学にいうESP、知覚器官外認識力、いわゆる『超感覚』は『知覚系魔法』として四系統魔法とは別分野の魔法とされており、この分野では超心理学的アプローチも未だ健在である。学問研究上、魔法系統は細かく分類されているが、『事象に付随する情報を書き換えてその改竄を事象に反映させる』ことが魔法の唯一の本質であり、系統魔法もそれ以外の魔法もこの意味で同じものである。
〇魔法の工程
現代魔法において工程という言葉には、魔法を発動するプロセスそのものと、目的とする事象改変を行う為に組み合せられた複数の魔法の、一つ一つの魔法処理の二通りの意味を持つ。後者の意味では、例えば卵をキッチンからテーブルへ魔法で移動させる場合、加速、移動、加速、移動の四工程が必要となる。移動魔法は物体の速度と線形の座標を書き換える魔法であり、加速の工程を省略すると対象物に慣性を無視した加速が掛かる。卵であれば、割れてしまう。移動の工程を省いて加速と減速だけで処理しようとすると、卵は放物線起動で飛んでいくことになり、恐ろしく精密な減速制御が必要になる。工程が増えても、加速魔法である程度まで減速をかけて、移動魔法で速度をゼロにする方が容易なのである。この四工程を合わせて、『卵をキッチンからテーブルへ移動させる』という一つの魔法になる。一般論で言えば、民生用魔法は戦闘用魔法より多段階の工程が必要とされる。
〇魔法の評価基準〔魔法力〕
サイオン情報体を構築する速さが魔法の処理能力であり、構築できる情報体の規模が魔法のキャパシティであり、魔法式がエイドスを書き換える強さが干渉力、この三つを総合して魔法力と呼ばれる。この他の要因、例えば保有するサイオンの量(魔法の発動回数限界に影響)や処理できる変数の数(魔法の自由度に影響)は魔法の評価に影響しない。魔法師はライセンス制度で管理されており、ライセンスA級~E級の査定もこの基準で行われる。
〇魔法演算領域
魔法式を構築する精神領域。魔法という才能の、いわば本体。魔法師の無意識領域に存在し、魔法師は通常、魔法演算領域を意識して使うことは出来ても、そこで行われている処理のプロセスを意識することは出来ない。魔法演算領域は、魔法師自身にとってもブラックボックスと言える。
▲魔法と魔法師
日本魔法協会主催『全国高校生魔法学論文コンペティション』
全国の高校生が魔法学、魔法工学の研究成果を発表する場。注目度も高く、発表チームの代表が魔法研究機関からスカウトされるというだけでなく、発表された論文がそのまま魔法大全に収録され大学や企業に利用されることもある。しかし全国高校生といっても、正規の教育課程で魔法理論を教える高校は魔法大学付属高校の九校以外に無い。この論文コンペも実質的には九校で競う催し物であり、九校戦が『武』の対抗戦であるとしたら、論文コンペはこれと双璧をなす『文』の九校間対抗戦と言える。
非魔法科高校を対象とした弁論大会や研究発表会と『全国高校生魔法学論文コンペティション』の最大の違いは、発表内容の実演がプレゼンテーションに含まれるという点にある。つまり論文の発表には、魔法装置を作って壇上で魔法を実演することが含まれる。実演のためには、魔法装置の設計から術式補助システムも製作、それを制御する為のソフト、搭載する為のボディなど、高度かつ手間のかかる準備が必要となる。コンペ直前の時期ともなれば、各高校総じて、技術系クラブ、美術クラブはもちろんのこと、純理論系のクラブや実技の成績上位者も本番の成功へ向けて総動員される。
開催日は毎年十月の最終日曜日と決められており、開催地は京都と横浜で交互に行われる。これは日本魔法協会の本部が京都、副本部的な位置づけの関東支部が横浜にあるからで、2095年の会場は横浜国際会議場である。
第一高校では、論文コンペの出場者は校内の論文選考会で決定され、論文の作成とプレゼンの準備は選出された3人が共同で取り組む。基本的には、方向性の統一のためメインの執筆者1名とサブ2名の役割分担をしたチーム構成となる。今回のメインは、市原鈴音。論文テーマは『重力制御魔法式熱核融合炉の技術的可能性』である。
▲日本魔法協会主催『全国高校生魔法学論文コンペティション』
魔法剣
魔法による戦闘方法には魔法それ自体を武器にする戦い方の他に、魔法で武器を強化・操作する技法がある。銃や弓矢などの飛び道具と組み合わされる術式が多数派だが、日本では剣技と魔法を組み合わせて戦う「剣術」も発達しており、現代魔法と古式魔法の双方に魔法剣とも言うべき専用の魔法が編み出されている。
1.高周波ブレード〔こうしゅうはブレード〕
刀身を高速振動させ、接触物の分子結合力を超えた振動を伝播させることで固体を局所的に液状化して切断する魔法。刀身の自壊を防止する術式とワンセットで使用される。
2.圧斬り〔へしきり〕
刃先に斬撃方向に対して左右垂直方法の斥力を発生させ、刃が接触した物体を押し開くように割断する魔法。斥力場の幅は1ミリ未満の小さなものだが光に干渉する程の強度がある為、正面から見ると刃先が黒い線になる。
3.ドウジ斬り〔どうじぎり〕
源氏の秘剣として伝承されていた古式魔法。2本の刃を遠隔操作し、手に持つ刃と合わせて3本の刃で相手を取り囲むようにして同時に切りつける魔法剣技。本来の意味である『同時斬り』を『童子斬り』の名に隠していた。
4.斬鉄〔ざんてつ〕
千葉一門の秘剣。刀を鋼と鉄の塊ではなく、『刀』という単一概念の存在として定義し、魔法式で設定した斬撃線に沿って動かす移動系統魔法。単一概念存在として定義された『刀』はあたかも単分子結晶の刃の様に、折れることも曲がることも欠けることもなく、斬撃線に沿ってあらゆる物体を切り裂く。
5.迅雷斬鉄〔じんらいざんてつ〕
専用の武装デバイス『雷丸(いかづちまる)』を用いた『斬鉄』の発展形。刀と剣士を一つの集合概念として定義することで接敵から斬撃までの一連の動作が一切の狂い無く高速実行される。
6.山津波〔やまつなみ〕
全長180センチの長大な専用武器『大蛇丸(おろちまる)』を用いた千葉一門の秘剣。自分と刀にかかる慣性を極小化して敵に高速接近し、インパクトの瞬間、消していた慣性を上乗せして刀身の慣性を増幅し対象物に叩き付ける。この偽りの慣性質量は助走が長ければ長いほど増大し、最大で10トンに及ぶ。
7.薄羽蜻蛉〔うすばかげろう〕
カーボンナノチューブを織って作られた厚さ五ナノメートルの極薄シートを硬化魔法で完全平面に固定して刃とする魔法。薄羽蜻蛉で作られた刀身はどんな刀剣、どんな剃刀よりも鋭い切れ味を持つが、刃を動かすためのサポートが術式に含まれていないので、術者は刀の操作技術と腕力を要求される。
2095年の世界情勢
世界の寒冷化を直接の契機とする第三次世界大戦、二〇年世界群発戦争により世界の地図は大きく塗り替えられた。現在の状況は以下のとおり。
USAはカナダ及びメキシコからパナマまでの諸国を併合してきたアメリカ大陸合衆国(USNA)を形成。
ロシアはウクライナ、ベラルーシを再吸収して新ソビエト連邦(新ソ連)を形成。
中国はビルマ北部、ベトナム北部、ラオス北部、朝鮮半島を征服して大亜細亜連合(大亜連合)を形成。
インドとイランは中央アジア諸国(トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、アフガニスタン)及び南アジア諸国(パキスタン、ネパール、ブータン、バングラデシュ、スリランカ)を呑み込んでインド・ペルシア連邦を形成。
他のアジア・アラブ諸国は地域ごとに軍事同盟を締結し新ソ連、大亜連合、インド・ペルシアの三大国に対決。
オーストラリアは事実上の鎖国を選択。
EUは統合に失敗し、ドイツとフランスを境に東西分裂。東西EUも統合国家の形成に至らず、結合は戦前よりむしろ弱体化している。
アフリカは諸国の半分が国家ごと消滅し、生き残った国家も辛うじて都市周辺の支配権を維持している状態となっている。
南アメリカはブラジルを除き地方政府レベルの小国分立状態に陥っている。
2095年時点の戦略級魔法師・十三使徒
現代魔法は高度な科学技術の中で育まれてきたものである為、軍事的に強力な魔法の開発が可能な国家は限られている。その結果、大規規模破壊兵器に匹敵する戦略級魔法を開発できたのは一握りの国家だった。
ただ開発した魔法を同盟国に供与することは行われており、戦略級魔法に高い適正を示した同盟国の魔法師が戦略級魔法師として認められている例もある。
2095年4月段階で、国家により戦略級魔法に適性を認められ対外的に公表された魔法師は13名。彼らは十三使徒と呼ばれ、世界の軍事バランスの重要ファクターと見なされていた。十三使徒の所属国、氏名、戦略級魔法の名称は以下のとおり。
●USNA
アンジー・シリウス:『ヘビィ・メタル・バースト』
エリオット・ミラー:『リヴァイアサン』
ローラン・バルト:『リヴァイアサン』
※この中でスターズに所属するのはアンジー・シリウスのみであり、エリオット・ミラーはアラスカ基地、ローラン・バルトは国外のジブラルタル基地から基本的に動くことはない。
●新ソビエト連邦
イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフ:『トゥマーン・ボンバ』
レオニード・コンドラチェンコ:『シムリャー・アールミヤ』
※コンドラチェンコは高齢の為、黒海基地から基本的に動くことはない。
●大亜細亜連合
劉雲徳『霹靂塔』
※劉雲徳は2095年10月31日の対日戦闘で戦死している。
●インド・ペルシア連邦
バラット・チャンドラ・カーン:『アグニ・ダウンバースト』
●日本
五輪 澪:『深淵(アビス)』
●ブラジル
ミゲル・ディアス:『シンクロライナー・フュージョン』
※魔法式はUSNAより供与されたもの。
●イギリス
ウィリアム・マクロード:『オゾンサークル』
●ドイツ
カーラ・シュミット:『オゾンサークル』
※オゾンサークルはオゾンホール対策として分裂前のEUで共同研究された魔法を原型としており、イギリスで完成した魔法式が協定により旧EU諸国に公開された。
●トルコ
アリ・シャーヒーン:『バハムート』
※魔法式はUSNAと日本の共同で開発されたものであり、日本主導で供与された。
●タイ
ソム・チャイ・ブンナーク:『アグニ・ダウンバースト』
※魔法式はインド・ペルシアより供与されたもの。
パラサイトとは
〇発生源
パラサイトたちは、精神に由来する情報生命体と目されている。もともとは異次元で形成されたエネルギー情報体で、北アメリカ合衆国テキサス州ダラス郊外で行われたマイクロブラックホール生成・蒸発実験によって次元の壁が揺らぎ、この世界に侵入した、と考えられている。
〇ネーミングの由来
事件発生時、犠牲者に目立った外傷が無いにも拘わらず、体内から大量の血液が失われていたことから。これは、パラサイトたちが伝奇小説に登場する『吸血鬼』のように血を吸うためではなく、自身の増殖に失敗した副作用に依るもの。
〇増殖のプロセス
宿主となる可能性を認めた人体に自分の一部を切り離し送り込む。分離体は血液中の想子と霊子を吸収しながら血管に沿って広がり、自分自身と血液を置き換えることで肉体に浸透していく。それが完了すれば、その情報体である幽体も掌握できる……はずだったが、現状まで成功例はない。
〇目的
パラサイトたちに指揮官に該当するものは存在せず、個別の思考能力を持ちながら、意識を共有している。パラサイト同士で交信を行い、ある程度の範囲における仲間の居場所特定も可能。生命体を宿主とした場合、その最も根源的な欲求に影響を受ける。つまり、『生き延び、仲間を殖やす』という本能に基づき、行動していた。
〇総数
こちらの世界にやって来たパラサイトの数は、総計で12体と推測されている。個体増減は以下の通りである。USNA本国でリーナが3体を処分(処分とは言っても、宿主を処分しただけで、パラサイト自体は精神体として抜け出したに過ぎない)。サリバン、ミアを含む残り9体が日本に逃亡した。別件調査のために日本にやってきていたリーナがパラサイトであるサリバンを処分、さらに魔法科高校内でミアが自爆する。続いて黒羽貢とその配下が残り7体全てを処分した。一方、USNA国内では処分した3体が宿主を見つけ復活し、日本に来日する。日本で処分された9体の蘇生を試みて、ピクシー以外の8体を蘇生させた。その後、達也たちとの交戦で3体のパラサイトを封印することに成功。残り8体となるも、宿主3体ごと防諜第三課に奪われ、そこで再びパラサイト3体は復活した。現状、残り11体。
▲パラサイト
魔法技能師開発研究所
西暦2030年代、第三次世界大戦前に緊迫化する国際情勢に対応して日本政府が次々に設立した魔法師開発の為の研究所。その目的は魔法の開発ではなくあくまでも魔法師の開発であり、目的とする魔法に最適な魔法師を生み出す為の遺伝子操作を含めて研究されていた。
魔法技師開発研究所は第一から第十までの10ヶ所設立され、現在も5ヶ所が稼働中である。
各研究所の詳細は以下のとおり。
●魔法技能師開発第一研究所
2031年、金沢市に設立。現在は閉鎖。
テーマは対人戦闘を想定した生体に直接干渉する魔法の開発。気化魔法『爆裂』はその派生形態。ただし人体の動きを操作する魔法はパペット・テロ(操り人形化した人間によるカミカゼテロ)を誘発するものとして禁止されていた。
●魔法技能師開発第二研究所
2031年、淡路島に設立。稼働中。
第一研のテーマと対をなす魔法として、無機物に干渉する魔法、特に酸化還元反応に関わる吸収系魔法を開発。
●魔法技能師開発第三研究所
2032年、厚木市に設立。稼働中。
単独で様々な状況に対応できる魔法師の開発を目的としてマルチキャストの研究を推進。特に、同時発動、連続発動が可能な魔法数の限界を実験し、多数の魔法を同時発動可能な魔法師を開発。
●魔法技能師開発第四研究所
詳細は不明。場所は旧長野県と旧山梨県の県境付近と推定。設立は2033年と推定。現在は封鎖されたこととなっているが、これも実態は不明。旧第四研のみ政府とは別に、国に対し強い影響力を持つスポンサーにより設立され、現在は国から独立しそのスポンサーの支援下で運営されているとの噂がある。またそのスポンサーにより2020年代以前から事実上運営が始まっていたとも噂されている。
精神干渉魔法を利用して、魔法師の無意識領域に存在する魔法という名の異能の源泉、魔法演算領域そのものの強化を目指していたとされている。
●魔法技能師開発第五研究所
2035年、四国の宇和島市に設立。稼働中。
物質の形状に干渉する魔法を研究。技術的難度が低い流体制御が主流となるが、固体の形状干渉にも成功している。その成果がUSNAと共同開発した『バハムート』。流動干渉魔法『アビス』と合わせ、二つの戦略級魔法を開発した魔法研究機関として国際的に名を馳せている。
●魔法技能師開発第六研究所
2035年、仙台市に設立。稼働中。
魔法による熱量制御を研究。第八研と並び基礎研究機関的な色彩が強く、その反面軍事的な色彩は薄い。ただ第四研を除く魔法技能師開発研究所の中で、最も多くの遺伝子操作実験が行われたと言われている(第四研については実態が不明)。
●魔法技能師開発第七研究所
2036年、東京に設立。現在は閉鎖。
対集団戦闘を念頭に置いた魔法を開発。その成果が群体制御魔法。第六研が非軍事的色彩の強いものだった反動で、有事の首都防衛を兼ねた魔法師開発の研究施設として設立された。
●魔法技能師開発第八研究所
2037年、北九州市に設立。稼働中。
魔法による重力、電磁力、強い相互作用、弱い相互作用の操作を研究。第六研以上に基礎研究機関的な色彩が強い。ただし、国防軍との結びつきは第六研と異なり強固。これは第八研の研究内容が核兵器の開発と容易に結びつくからであり、国防軍のお墨付きを得て核兵器開発疑惑を免れているという側面がある。
●魔法技能師開発第九研究所
2037年、奈良市に設立。現在は閉鎖。
現代魔法と古式魔法の融合、古式魔法のノウハウを現代魔法に取り込むことで、ファジーな術式操作など現代魔法が苦手としている諸課題を解決しようとした。
●魔法技能師開発第十研究所
2039年、東京に設立。現在は閉鎖。
第七研と同じく首都防衛の目的を兼ねて、大火力の攻撃に対する防御手段として空間に仮想構築物を生成する領域魔法を研究。その成果が多種多様な対物理障壁魔法。
また第十研は、第四研とは別の手段で魔法能力の引き上げを目指した。具体的には魔法演算領域そのものの強化ではなく、魔法演算領域を一時的にオーバークロックすることで必要に応じ強力な魔法を行使できる魔法師の開発に取り組んだ。ただしその成否は公開されていない。
これら10ヶ所の研究所以外にエレメンツ開発を目的とした研究所が2010年代から2020年代にかけて稼働していたが、現在は全て封鎖されている。また国防軍には2002年に設立された陸軍総司令部直属の秘密研究機関があり独自に研究を続けている。九島烈は第九研に所属するまでこの研究機関で強化処置を受けていた。
九校戦 新ルール
2096年度より種目が変更。『ロアー・アンド・ガンナー』、『シールド・ダウン』、『スティープルチェース・クロスカントリー』の3種目が追加され、『バトル・ボード』、『クラウド・ボール』、『スピード・シューティング』の3種目が削除されている。
ロアー・アンド・ガンナー
ボート上から水路に設置された的を破壊しながらゴールするタイムを競う。ペアは一人がボートを走らせ、一人が的を撃つ。ソロはこれを一人で行う。水路はバトル・ボードの物を使う。的は水路の脇と頭上に設置され、水上をミニチュアボートの標的が走り回る。
同時に複数の選手(ペア)が出走する競争ではなく一人(1組)ずつ走る完全なタイムトライアル方式。
出走順による有利・不利をなくす為、1周目は練習走行に当てられ2周目が本番となる。
ゴールタイムから破壊した的の個数に応じた時間を差し引き、差引合計時間が最も短いチームが優勝。
▲ロアー・アンド・ガンナー
シールド・ダウン
プレーヤーは盾を手に持つかあるいは腕に着け、相手の盾を攻撃する。盾の装着位置は肩から先。
先に相手選手を失格させると勝利。ペアの場合は先に相手チームを2名とも失格させると勝利。
失格条件は盾の破壊、場外落下、反則。盾は1枚の板でなければならない。ただし2つ以内のハンドルを付けることが許される。
盾の形状に制限は無し。曲面も可。ただし曲げの方向が逆転してはならない。半球のような曲面は認められているが、波形の板は認められない。
盾は男子0.5平方メートル、女子0.3平方メートル以上で、重さ、厚さに制限なし。材質は木材であれば制限無し。ただし樹脂その他の補強材の注入は禁止。補強材を注入しない圧縮は可。魔法による強化も可。盾の総面積の3割以上が失われた状態を破壊済みと定義する。
▲シールド・ダウン
スティープルチェース・クロスカントリー
林間コースに障害物を配置して行うクロスカントリー競技。コースは2040年代に建設が始まった富士東演習場の人工林を使用。
障害物は岩壁、落とし穴、泥沼といった古典的なものから自動射撃装置、ネット弾当的装置、国防軍魔法師による妨害といったこの競技ならではの物も取り揃えられている。
コースは幅4キロ、長さ4キロのエリアで、そのエリア内であればどこを通ってもよく、スタート地点もゴール地点も、横に4キロのライン上であれば何処から出発、何処に到着しても有効。選手は成層圏プラットフォームを利用した広域測位システム(WPS:Wide area Positioning System)連動の発信器を身に着け、審判はその信号をトレースすることで各選手配置を把握する。
コースを逸脱した選手は失格。また木の高さより上に飛び上がることも反則で失格となる。
木と木の間にネットが数多く張り巡らされ、障害物を避けて不用意に飛び上がるとネットに衝突してダメージを受けたりネットに絡まって時間をロスしたりする。
得点配分は男女別に1位:50点、2位:30点、3位:20点、4位~6位:5点となっている他、1時間以内にゴールした選手全員に1点が与えられる。この競技は全選手(男女各12名)エントリー可能。つまり最高で男女各121点が獲得できることになり、モノリス・コードを上回る逆転勝利の可能性を秘めた最終競技になっている。
2096年の九校戦から採用される競技で攻略戦術はまだ確立していないが、障害物を排除するためにチームで挑む学校と、何度の高い障害物に遭遇するリスクを分散するためにソロまたはペアで挑む学校に分かれる。
▲スティープルチェース・クロスカントリー
四葉家家系図
▲四葉家家系図
『人間主義』と国際情勢
一般的な認識は『人間は人間に許された力だけで生きよう』と主張し反魔法主義を掲げるキリスト教亜種(異端)のカルト運動。またはそれを建前とした、魔法師排斥運動である。その虚偽の一部を紹介すると、『奇跡は神にのみ許された御業であり、神が定めた自然の摂理を神ならざるものが捻じ曲げるのは悪魔の所業である。人は、人に許された力でのみ生きなければならない』というもの。
西暦2097年2月。日本の箱根で行われていた魔法師たちによる『師族会議』中に、大規模な爆弾テロが起きた。このテロの原因は魔法師同士の争いであると主張する人間主義者達は、市民を見殺しにした日本の魔法師に対して、その排斥運動をより活発に、より過激に行うようになった。そして、十師族の長らは、その対策に苦慮している現状がある。
フリズスキャルヴ
USNA軍が運用する全地球通信傍受システム『エシュロンⅢ』に潜むシステムのこと。『七賢人』と呼ばれる7名のオペレーターがそのアクセス権を持ち、世界中の通信システムから望みの情報を盗み取る。フリズスキャルヴの端末は脳波とジェスチャーで操作するVR型のHMDで、カメラが指先の動きをとらえ、バーチャルな視界にその軌跡を映し出す。オペレーターは仮想の空中に光の文字で検索条件を記し、脳波アシストにより選択と決定のコマンドを送り情報をつかみ取る、世界最高峰の盗聴システムなのである。
ただし、そもそも『七賢人』の名称を使っているのはフリズスキャルヴのオペレーター内でも、一人しかいない。それが『フリズスキャルヴ』のアドミニストレーターと唯一のつながりを持つ、レイモンド・S・クラークだった。
顧傑とは
ジード・ヘイグこと顧傑(グ・ジー)は大漢の魔法師開発機関である崑崙方院に所属していた。崑崙方院で『不老の術法』を開発した顧傑が、日本魔法界を、そして崑崙方院をつぶした四葉一族を復讐のターゲットとしている理由は不明(どのような心理機構が作用したのか、本人も既に、覚えていないかもしれない)。
顧傑は現在97歳。だがその外見は50歳程度にしか見えない。周公瑾を弟子に持つが、しかし顧傑個人の直接的な戦闘力は低い。大陸の古式魔法の使い手だが、習得している魔法は敵と直接干戈を交えるものではなかった。彼が得意としているのは『ソーサリー・ブースター』のような人間を部品として魔法的な道具を作り出す技術、『ジェネレーター』のような人間を道具に変える技術、そして今回のテロに使用した死体を操る技術などである。
加え『七賢人』の一人として裏社会に君臨する顧傑は、様々な反社会的組織を支援している。反魔法国際政治団体『ブランシュ』、国際犯罪シンジケート『無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)』などもその中の一組織だった。しかし、これらもすでに壊滅状態となっている。
そして、顧傑自身に残された時間も、もう長くない。
顧傑の暗躍
顧傑。別名ジード・ヘイグは何年も前から、虎視眈々と日本を狙っていた。
彼を総帥とする反魔法師主義国際結社『ブランシュ』は、その下部組織『エガリテ』を第一高校内でつくり上げて、反乱騒ぎを起こさせた。
2095年の九校戦では、リチャード・孫に支援して作らせた国際犯罪シンジケート『無頭竜(ノー・ヘッドドラゴン)』を使い、彼が開発した魔法師生体兵器ジェネレーターを会場に送り込んだ(さらに、『ソーサリー・ブースター』と呼ばれる魔法の威力を増幅する危険な魔法補助具も提供した)。
顧傑最後の弟子である周公瑾は、横浜事変を起こした大亜連合破壊工作部隊を手引きし、去年の九校戦では『パラサイドール』事件を起こし、混乱をもたらした。
そして、2097年の師族会議会場でのパペット・テロは顧傑が得意とする死体を操る魔法によって起こされた。
全ては、四葉へ、日本魔法界への復讐のため。しかし、その動機はすでに本人にも定かではない。古式と現代式による魔法の考え方の違いにより、彼と敵対していた崑崙方院を壊滅に追いやった四葉家は、むしろ『敵の敵』といえる存在だったはずだったのだが……愛国心の故か、復讐の相手を奪われたことに逆恨みしたのか……わかっていることは、かつて生前の周公瑾が評したように、顧傑の精神は『怨霊』にふさわしい妄執に凝り固まっていることだけである。
顧傑の特性
顧傑が得意としているのは『ソーサリー・ブースター』のような人間を部品として魔法的な道具を作り出す技術、『ジェネレーター』のような人間を道具に変える技術、死体を操作する魔法『僵尸術』である。そしてもう一つ、不老の術法も得意とする。だがそれは、見かけ上の不老を保証するだけで、長寿を保証するものではない。この術法は、顧傑が崑崙方院で開発し、古式魔法師が崑崙方院を追われる原因となった魔法でもあった
一条将輝転校日記とは
国立魔法大学付属第三高校の男子生徒であり、新ソビエト連邦による佐渡侵攻事件にて『クリムゾン・プリンス』の異名を受けた、一条家の長男で次期当主、一条将輝がひそかにしたためている日記のことである。
そこには、学業の合間に思い付いた高度な魔法理論や、魔法師戦闘における戦術、十師族の今後など、俊才である彼独自の考えが綴られている……と言われている。
現在の彼は父親である剛毅と第三高校の前田校長の計らいによって、達也や深雪が所属する第一高校に通っている。そのため、日記にはそこでの出来事が書き記していると考えられる。
ちなみに、親友であるカーディナル・ジョージこと吉祥寺真紅郎ですらも、その存在を知らない。
人工島『西果新島』
『西果新島(さいかしんとう)』とは国産資源開発のために日本が建設した人工島である。沖縄の久米島沖に位置し、国内有数の企業グループが多数のプロジェクトに参画している(北山雫の父親の会社もその一社である)。この人工島は海底資源採掘基地として国家的に重要な意味を持つため、災害対策として刻印魔法が使用されている。事前に刻印を施しておけば、極短時間で建材の耐火性や耐衝撃性を、一時的にだが飛躍的に高められるからである。この刻印魔法は、その分野の権威である五十里家が担当した。
ゆえに『西果新島』の竣工記念パーティーには、北山家と五十里家が招待されている。
慰霊祭
2092年8月に発生した大亜連合による沖縄侵攻事件での犠牲者鎮魂のため、2097年8月に実施される行事。四葉真夜の指示により、司波達也、深雪も十師族の公務、四葉家の代表として出席する予定。今回はその準備会議に出席。達也には、この沖縄遠征で別の『仕事』も指示されている。
日本と大亜連合の休戦協定
2095年10月末の『灼熱のハロウィン』で、大亜連合は海軍拠点を一つと多数の艦艇を失った。これを受けて、大亜連合に対する勝利を決定的なものとする為に、日本の国防海軍は11月半ばに佐世保から艦隊を出撃させた。そこには日本が公認する戦略級魔法師、『十三使徒』の一人、五輪澪も同行していた。日本にとっても、事実上の総力戦の構えだった。しかし、日本軍と大亜連合軍は実際に砲火を交えることなく、大亜連合からの申し入れにより休戦は成立した。
2096年3月、日本の主張をほぼ受け入れる形で大亜連合との間に講和条約が速やかに締結された。協定は結ばれたものの、一部にはその講和を壊し戦争状態に復させようとたくらむ思想を持つ者たちもいる。
オーストラリアの国策
第三次大戦後、オーストラリアは国外との交流を極端に制限する政策をとっている。具体的には、出入国審査、税関審査をきわめて厳しくし、外国との人的交流、物的交流の双方を事実上禁止する状態にまで抑圧している。このオーストラリアの姿勢を非難する国も多いが、第三次世界大戦において、旅行者を装ったテロリストや投資を装った軍事拠点建設が横行しているため『自衛の為』という名目で主張されれば反論が難しいのが現状である。結果、海外旅行に行きたいという国民も少なく、結果としてオーストラリア人の姿を見る機会は稀になっている。
イギリスとオーストラリアの関係
二国間では、魔法師の技術提供がかつて行われていた。イギリスのVIP、ウィリアム・マクロードがその指揮をとっていた。『イギリスの戦略級魔法師十三使徒の一人からのオーストラリア軍への魔法師製造の指導』という形で行われていたそれは、調整体だけでなく自然発生した魔法師の強化にもマクロードのノウハウが活かされている。戦後のオーストラリア軍魔法師部隊をここまで育て上げたのは、彼の功績といっても過言ではないほどである。
十三使徒とその戦略級魔法師
『十三使徒』とは、国家に公認された戦略級魔法師の通称。
戦略級魔法師とは、『戦略級魔法』を発動することができる魔法師を指す。
『戦略級魔法』の定義は、『一度の発動で人口5万クラス以上の都市を破壊する、または一艦隊を壊滅に追い込む』魔法のことである。
●アンジー・シリウス
USNA軍統合参謀本部直属魔法師部隊スターズ総隊長。
『使徒』として最も若くして加入した魔法師。本名はアンジェリーナ・クドウ・シールズ。
使用する戦略級魔法は『ヘヴィ・メタル・バースト』。
発動地点から全方位にプラズマ放射する系統魔法。十三使徒の中でも最強クラスの威力を誇る。魔法兵器『ブリオネイク』を使うことで収束ビームとして発射することが可能。
●イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフ
新ソビエト連邦科学アカデミーにおける魔法研究の第一人者。
公的な地位は一科学者でありながら、国内における発言力は国防大臣に匹敵するといわれている。
使用する戦略級魔法は『トゥマーン・ボンバ』。
十三人の魔法師が使う十種類の戦略級魔法の内、唯一効果も見た目も明かされていない。
●ミゲル・ディアス
ブラジル軍所属の軍人。『十三使徒』の中で最も顔が知れている戦略級魔法だが、その露出ぶりに反して家族情報は神経質なほど厳重に秘匿されている。
使用する戦略級魔法は『シンクロライナー・フュージョン』。
攻撃目標の上空で水素プラズマ雲を衝突させることにより核融合反応を引き起こし、その熱と衝撃はで対象地域を破壊する。ブラジル軍が積極的にデモンストレーションで使用してきたため、戦略級魔法の中でもその性質がよく知られている。
●ウィリアム・マクロード
イギリスの大学教授。国外の有名大学教授資格を複数持つ才人。
戦闘魔法師育成と調整体魔法師製造の権威でもある。
使用する戦略級魔法は『オゾンサークル』。
高濃度のオゾンガスを素早く大量に発生させ、相手を急性中毒によるマヒ状態にする。遠隔での発動が比較的容易で応用力が高い。
マクロードによるレクチャーで、本人ほどの威力ではないが『オゾンサークル』を使える魔法師も多い。
沖縄で達也と交戦したジャスミン・ウィリアムズもその一人。
●カーラ・シュミット
ドイツ連邦、ベルリン大学に研究所を構える教授。戦略級魔法師の中では例外的に、軍とは距離を置いている。ドイツ連邦政府の強い要請により、『十三使徒』に名を連ねているが、本人はあくまで魔法の平和利用の道を探索している。
使用する戦略級魔法は『オゾンサークル』。
マクロードが開発した魔法だが、協定により旧EU諸国に公開されたため、広く知られている。
二十八家の若手会議
2097年4月14日、横浜魔法協会関東支部にて開催。
2097年3月31日、南アメリカ大陸旧ボリビア、サンタクルス地区にて戦略級魔法『シンクロライナー・フュージョン』がブラジル軍の手により使用された。
これにより、『魔法が使えない人々』による反魔法主義運動はさらに勢いを増していくこととなる。
魔法師に対する香華劇的なプロパガンダの増殖を危惧した、七草弘一、十文字克人らの呼びかけにより、十師族および師補十八家の若手を集めた対策会議が開催された。
次代の魔法師のトップが集まるサミットともいえるこの会議には、『二十八家』から23名が参加。参加メンバーは大半が20歳~30歳未満で、10代は克人、達也、将輝、琢磨の4人のみであった。
ディオーネー計画
USNA国家科学局(NSA:National Science Agency)所属の技術者であるエドワード・クラークが提唱する国際プロジェクト。
魔法技術と魔法師を用いて、木星圏の資源で金星をテラフォーミングしようという壮大な宇宙開発プロジェクトである。
金星の直径は地球の0.95倍。重力は0.9倍。
この点では火星よりも人類の移住先として都合がいいが、分厚い二酸化炭素の大気と硫酸の雲、温室効果によるもの推定される高温の為、環境改造は困難と判断されている。
通常技術では極めて困難な金星の大気改造を、魔法技術で実行しようというのが、『ディオーネー計画』の趣旨である。
加えて、これを上回る温室効果を持つ水(水蒸気)やメタンに包まれることになる金星を冷却するために、ガリレオ衛星の一つであるカリストの地表から氷を切り出して金星に向け射出、金星の大気圏に放り込むことによって気温を下げる。この巨大氷塊の切り出しと運搬に魔法を使用する。
『ディオーネー計画』を構成する4つのスキーム
①地上から宇宙に資材や組み立て済みのプラントを打ち上げる際に、加重系・加速系魔法を利用する。宇宙に大規模構造物を建造するにあたって最大の障害となる、地球の重力を脱するため、既存のロケットを魔法で補助し、大質量を宇宙に運ぶ。
②小惑星帯からプロジェクトに必要な金属資源を魔法師の手で採掘する。無重力空間での資源採掘において、移動魔法を用いることで推進剤の問題を解決する。
③木星から水素を採取し、金属に運ぶ運搬手段として魔法を使う。高温高圧下で水素と二酸化炭素を反応させ水とメタンを作り出すサバティエ反応で水の無い金星に水をもたらし、同時に二酸化炭素を減らそうというスキーム。②で採掘したニッケルはその触媒となる。
④上記③の結果、二酸化炭素に加えて、これを上回る温室効果を持つ水(水蒸気)やメタンに包まれることになる金星を冷却するために、ガリレオ衛星の一つであるカリストの地表から氷を切り出して金星に向け射出、金星の大気圏に放り込むことによって気温を下げる。この巨大氷塊の切り出しと運搬に魔法を使用する。
2097年現在の宇宙開発情勢
世界の寒冷化による社会混乱と、それに続く戦争の所為で中断してしまった宇宙開発は、依然として停滞したままである。有人宇宙飛行については二十一世紀初頭からむしろ後退していると言える。
誓約―オース―
達也の『マテリアル・バースト』を封じていた系統外・精神干渉系魔法。
術者は四葉の分家、津久葉家当主・津久葉冬歌。
達也はこれにより、最大の武器を封じられているだけでなく、魔法力そのものを約半分に制限されていた。
この魔法は本来、特定の能動的意思決定を禁止するものであり、魔法力の制限は副次的な効果である。
また、この魔法の特異性は術をかけられる本人、または被術者とペアになる第三者の魔法力を使って維持される点にあり、意思決定の制限が半永続的なものであれば被術者本人、一時的に制限の解除が必要となる場合は被術者の身近にいる第三者が魔法力を提供することとなる。
達也の場合は、ペアとなっていたのは深雪であり、一時的な制限を解除するための『鍵』が深雪にゆだねられていた。
現在は誓約[オース]そのものが解呪されている。
ESCAPES―エスケイプス―計画
2097年5月31日、FLT本社で行われた『トーラス・シルバー』の記者会見で明かされた、恒星炉を用いた海水資源化プラント開発計画。それは、エドワード・クラークが提唱する『ディオーネー計画』に対抗すべく、達也が発表した計画であった。
正規名称は未定だが、達也は『Extract both useful and harmful Substances from the Coastal Area of the Pacific using Electricity generated by Stellar-generator』の頭文字をとり、『ESCAPES計画』と仮称している。
魔法恒星炉、重力制御魔法による核融合炉を実用化し、家庭用、産業用に広くエネルギーを供給する目的としており、それは、ある視点から見れば魔法師による独立国家をも可能にするプロジェクトといえる。
達也はこのプラントを離島、あるいは海上に建設することを想定している。
恒星炉
常駐型重力制御魔法を用いた継続熱核融合炉の構想。
重力により原子核を接触させて核融合を引き起こす点が恒星内部の核融合反応と共通していることから『恒星炉』と名付けられているが、そのプロセスは恒星の核融合とは全く異なる。また使用される魔法も重力制御魔法だけでなく、電磁的斥力中和魔法も大きな役割を担っている。
2096年4月25日に国立魔法大学付属第一高校にて実験がなされた。
パラサイドール
パラサイトを用いた自律人形兵器。元々は通称『第九研』の構想としてあった式神術を応用した自律兵器であったが、式神や人造精霊では機体を動かすことはできても期待通りの魔法技能は発揮できず、パラサイトが利用されることとなった。
周公瑾
表向きは横浜中華街にある人気店のオーナーで、貴公子のような麗しい外見を持つ。だが、その裏では大亜連合からの亡命を手引きし、横浜事変では大亜連合工作部隊の日本での活動を支援していた。さらに、パラサイトの日本への密入国を手引きした人物でもある。
2096年、10月に死亡が確認されているが――。
▲左から周公瑾、陳祥山、呂剛虎
鬼門遁甲
周公瑾が得意とした精神干渉系の古式魔法。
時間と方角の組み合わせにより術者の望む方向への対象意識を誘導する。
スターズ
USNA統合参謀本部直属の魔法師部隊。12の部隊があり、隊員は星の明るさに応じて階級分けされている。
部隊の隊長はそれぞれ一等星の名前を与えられている。
①各隊に上下関係はない。
②指揮権は総隊長に集約されているが、実際には基地司令が命令を下すケースも多い。
③各隊隊長の下に、恒星級、星座級、惑星級、衛星級の隊員が配属されている。総隊長直属の部下はいない。
④プラネットスタッフは惑星級隊員で構成される支援部隊。構成級隊員を使わずにプラネットスタッフのみを出動させることもある。シルヴィアはプラネットスタッフ所属。
⑤スターダストは所属基地が違う。
アンジー・シリウス暗殺を企てた隊員たち
●アレクサンダー・アークトゥルス
第三隊長 大尉 北アメリカ大陸先住民のシャーマンの血を色濃く受け継いでいる。
レグルスと共に叛乱の首謀者とされる。
●ジェイコブ・レグルス
第三隊 一等星級隊員 中尉 ライフルに似た武装デバイスで放つ高エネルギー赤外線レーザー弾『レーザースナイピング』を得意とする。
●シャルロット・ベガ
第四隊長 大尉 リーナより十歳以上の年上であるが、階級で劣っていることに不満を抱いている。
リーナとは折り合いが悪い。
●ゾーイ・スピカ
第四隊 一等星級隊員 中尉 東洋系の血を引く女性。『分子ディバイダー』の変形版ともいえる細くとがった力場を投擲する『分子ディバイダー・ジャベリン』の使い手。
●レイラ・デネブ
第四隊 一等星級隊員 少尉 北欧系の長身でグラマラスな女性。
ナイフと拳銃のコンビネーション攻撃を得意とする。
魔法式の新モジュール『チェイン・キャスト』
イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフが使用した戦略級魔法『トゥマーン・ボンバ』の基幹技術を解析し、司波達也が再現した魔法技術。
『ループ・キャスト』が魔法演算領域で、魔法式自体に起動式を組み立てる機能を与え魔法の連続発動を可能にするのに対し、『チェイン・キャスト』は魔法の発動対象のエイドス上に元となる魔法とは異なる座標変数・時間変数で魔法式が魔法式を組み立てる技術である。
言い換えれば、『ループ・キャスト』は全く同じ起動式を複写するだけのものであったが、『チェイン・キャスト』は異なる変数が入力された小規模な魔法式を連鎖的に複写することで、空間的に大規模な魔法を発動させることを可能にしたといえる。
『トゥマーン・ボンバ』にはこの技術が用いられており、水を水素と酸素に分離し点火する小規模な魔法を連鎖的に多数構築した後、遅延発動術式を組み込むことで一斉に発動、大爆発を引き起こすものとみられている。
しかし、元になる魔法式を複写展開する副次的魔法式の情報量があまりにも膨大であるため、扱う魔法師にも膨大な魔法力が求められる。
新戦略級魔法『海爆』―オーシャン・ブラスト―
吉祥寺真紅郎が司波達也からもたらされた『チェイン・キャスト』の基本設計書を基に、作り出したとされる新たな戦略級魔法。
術者や詳細は現時点では不明だが、海上の広範囲に魔法式を展開し、海水を一斉に気化させ大規模な水蒸気爆発を引き起こすものと見られ、海面及びその直上においては戦略級魔法『トゥマーン・ボンバ』と比べても遜色のない威力を有していると思われる。
司波達也の新スーツ『フリードスーツ』
四葉家が開発した飛行装甲服。国防軍が開発した『ムーバルスーツ』と比較するとパワーアシスト機能は備わっておらずデータリンク機能で劣っているが、防御性能は同等以上に向上している。
ステルス性能や飛行性能に秀でており、司波達也曰く『追跡にはムーバルスーツよりも適しているとさえ言える』。
国防陸軍第一師団所属・遊撃歩兵小隊──通称『抜刀隊』
九島烈が組織した奇襲攻撃を得意とする白兵部隊。
『抜刀隊』の異名は、所属する魔法師は刀剣型のデバイスを携え、魔法白兵戦技能『剣術』で戦う戦闘魔法師集団である事に由来する。
渡辺摩利、千葉修次もこの部隊へ一時的に配属されている。
古式魔法『蹟兵八陣』
東亜大陸の古式魔法の流れをくむ隠蔽結界。九島光宣が潜伏先として選んだ、周公瑾が残した青木ヶ原樹海にある屋敷に術式が施されていた
地上からの死人をカモフラージュするだけでなく、空中からの探索、魔法による探知も妨害する。
その正体は『鬼門遁甲』を応用した大規模結界構築技術とされている。
イリーガルMAP
USNA軍非合法(illegal)魔法師(Mystic)暗殺者(Assassin)小隊(Platoon)の略称。
その名の通り暗殺任務などに当たる。
2097年7月10日、司波達也の暗殺を目的とし、イリーガルMAP所属の『ホースヘッド』分隊10名が日本へ入国したと見られている。
アストラル・ディスパージョン
パラサイトとの戦闘で苦戦する達也が、ついに開発した新魔法。霊子情報体をこの世界から完全に駆逐することができる。
今まで達也が使用してきた情報体を想子の球体に閉じ込める無系統魔法『封玉』の効果は一時的なものであり、精神干渉系魔法に高度な適性を持つ他の魔法師によって追加的な封印措置が必要だった。
しかし、アークトゥルスとの戦闘中に達也は、精神体(霊子情報体)がこの世界に存在するためには、世界へアクセスする為の媒体となる想子情報体が必要不可欠であることを突き止める。彼は精神体の活動に伴う情報の変動を観測し、そこから逆算的にアクセス媒体として機能している想子情報体を把握、これを破壊することで、精神体をこの世界から完全に切り離す魔法を生み出した。
それが霊子情報体支持構造分解魔法『アストラル・ディスパージョン』である。
忍術の衰退
忍術は古来――電子機器が発明されていなかった時代の諜報・暗殺技術である。『忍術』が得意とする分野は精神干渉系の幻覚魔法だが、しかし電子機器(魔法師界ではCAD)の普及により、魔法の発動速度は迅速かつ確実となり、『忍術』は諜報の分野においても駆逐されつつある。
その有用性において現代魔法に勝てない『忍術』であるが、使い手は超がつく一流の古式魔法師達が現存している。
名門・藤林家当主、藤林長正(藤林響子の実父)や、達也が師事する当代最強の忍び・九重八雲らである。
SMAT
日本における特殊魔法急襲部隊の略称。一昨年の『横浜事変』で無力さを痛感した警察が、その反省をふまえて組織した、警察内の戦闘魔法師集団のこと。
リーナの憂慮
パラサイト化したスターズ隊員らから逃れるために日本に亡命したスターズ隊長アンジー・シリウスこと、リーナ。
達也の仲介で巳焼島で匿われた彼女だが、心残りがあった。彼女がUSNAを離脱する手引きをしたのち、軍に投降したベンジャミン・カノープス少佐のことである。カノープスは現在、強力な魔法師を閉じ込めるために作られた孤立無援かつ脱出不可能な軍事収容所、ミッドウェー刑務所にて監禁されている。
リーナの願いは、カノープス少佐をミッドウェー島から救い出す事だった。彼女は達也への救出依頼を打診する代わりに、戦力として魔法師アンジー・シリウスでの協力を約束した。
北西ハワイ諸島
北西ハワイ諸島とは、カウアイ島からミッドウェー諸島までの約2200kmの距離にわたって連なる33の島々を指す。
パールアンドハーミーズ米軍基地
パールアンドハーミーズ環礁は、北西ハワイ諸島の北部に位置する環礁であり、名前の由来は1822年にイギリスの捕鯨船パール号とハーミーズ号の2隻が難破したことからつけられた。
ここにはUSNA軍による基地があり、環礁の外側に人工地盤とメガフロートを建設し、その上に作られている(基地自体に滑走路はなく、基地所属の空母が滑走路の代わりを務めている)。
光宣と水波を乗せた輸送艦『コーラル』は、このパールアンドハーミーズ米軍基地を目指している。
ミッドウェー監獄
北西ハワイ諸島を形成するひとつ、ミッドウェー島は一つの島ではなく、サンド島、イースタン島といくつもの小島からなる環礁である。
ここには、USNA軍による『ミッドウェー監獄』があり、サンド島のほぼ東半分を使った大規模なもので、軍による強固な防衛施設によって守られている。
およそ1キロメートル四方の敷地の中に、低層だが頑丈な建設物10棟からなり、監獄はそのうち5棟。1棟が管理事務所、2棟が職員・兵員用住居、1棟が武器庫、1棟がトレーニング施設となっている。
リーナが信頼するベンジャミン・カノープス少佐がここに幽閉されている。
シンクロライナー・フュージョン
ブラジル国軍に所属する『十三使徒』の一人、ミゲル・ディアスが使用する戦略級魔法。別名シンクロライナー核融合。USNAより魔法式が供与されている。
攻撃目標の上空で水素プラズマ雲を衝突させることにより、核融合反応を引き起こし、その熱と衝撃波で、対象領域を破壊する。
ブラジルがデモンストレーションで使用したこともあり、『十三使徒』が使用する戦略級魔法の中では一番知られている魔法だが、ミゲル・ディアス以外の魔法師による再現はされておらず、当該魔法に関する成功例はディアスの一件のみとなっている。また、同様の大規模な核融合爆発を起こす魔法は当該魔法以外に報告されていない。
2097年3月31日、ブラジル国軍と独立派武装ゲリラの戦闘にて使用され、犠牲者は1000人を超える結果となった。『シンクロライナー・フュージョン』の使用に関する国際世論の非難が殺到し、この事件をきっかけに戦略級魔法の実践投入の口火が切られた。
氷河期―グレイシャル・エイジ―
達也が深雪用に魔法式を構築した戦略級魔法に匹敵する超広域冷却魔法。
振動減速系広域魔法『ニブルヘイム』を拡張した魔法で、発動のプロセスに『トゥマーン・ボンバ』『海爆』で使用されたチェイン・キャストの技術が使用されている。
対象領域は海上で使用した場合、直径20キロほどに及び、長距離の照準を必要とするため、発動には遠隔照準を可能とする特殊な専用のCADが用いられる。
術式斬壊―グラム・スラッシュ―
『術式解体』や『術式解散』と同じ対抗魔法に分類される無系統魔法。『術式解体』の亜種で情報次元に存在する魔法式を想子の刃を使用して斬ることで、魔法を無効化する。相手を傷つけずに無力化できることから、魔法師犯罪者の鎮圧に最適だと警視庁からも注目されている。
雷獣
周公瑾が得意としていた化成体の獣による攻撃魔法『影獣』をアレンジした魔法。雷撃魔法を被せることで、令牌から電光を纏った獣を呼び出す。
『雷獣』は高電圧を帯びており、獣の姿は虚像であるが、その表面に纏う電気は実在している。『雷獣』の通った空気はイオン化され、電流の通り道を作ることができる。雷撃魔法と合わせることで、収束・誘導の魔法を行使せず標的をとらえることが可能となる。
接触型術式解体
身体の50センチを境界に完全に均質な高密度の想子層を生成することで、空気中の想子を撥ね返す鎧を作り出す魔法。『術式解体』を体に纏っている状態で、空気中の想子を撥ね返すことで、魔法を無効化する。
十三束鋼が同様の魔法を体質によって使用しているが、達也は高度な技術で想子をコントロールし実現している。
メイジアン・カンパニー
魔法資質保有者の人権自衛を目的とする国際互助組織であるメイジアン・ソサエティの目的を実現するための具体的な活動を行う一般社団法人。2100年4月26日に設立。本拠地は日本の町田にあり、理事長を司波深雪、専務理事を司波達也が務める。
国際組織として、魔法協会が既設されているが、魔法協会は実用的なレベルの魔法師の保護が主目的になっているのに対し、メイジアン・カンパニーは軍事的に有用であるか否かに拘わらず魔法資質を持つ人間が、社会で活躍できる道を拓く為の非営利法人である。具体的にはメイジアンとしての実践的な知識が学べる魔法師の非軍事的職業訓練事業、学んだことを実際に使う職を紹介する非軍事的職業紹介事業を展開する予定。
FEHR―フェール―
『Fighters for the Evolution of Human Race』(人類の進化を守る為に戦う者たち)の頭文字を取った名称の政治結社。2095年12月、『人間主義者』の過激化に対抗して設立された。本部をバンクーバーに置き、代表者のレナ・フェールは『聖女』の異名を持つカリスマ的存在。結社の目的はメイジアン・ソサエティと同様に反魔法主義・魔法師排斥運動から魔法師を保護すること。
リアクティブ・アーマー
旧第十研から追放された数字落ち『十神』の魔法。個体装甲魔法で、破られると同時に『その原因となった攻撃と同種の力』に対する抵抗力が付与されて再構築される。
▲リアクティブ・アーマー
FAIR―フェア―
表向きはFEHRと同じく、USNAで活動する反魔法主義者から同胞を守るための団体。
しかし、その実態は魔法を使えない人間を見下し、自分たちの権利のためには暴力を厭わない、魔法至上主義の過激派集団。
秘匿されている正式名称は『Fighters Against Inferior Race』。
進人類戦線
もともとFEHRのリーダーであるレナ・フェールに感銘を受けた日本人が作った反魔法主義から魔法師を守ることを目的としている団体。
暴力に訴えることを否定したFEHRに反して、政治や法が魔法師迫害を止めてくれないのであれば、ある程度の違法行為は必要と考え行動している。
結成時のリーダーが決行した示威行為が原因で、一度解散へと追い込まれたが、非合法化組織として再結集した。
新人類でなく進人類なのは、「魔法師は単に新世代の人類なのではなく、進化した人類である」という自意識を反映したものである。
レリック
魔法的な性質を持つオーパーツの総称。それぞれ固有の性質を持ち、長らく現代技術でも再現が困難であるとされていた。世界各地で出土しており、魔法の発動を阻害する『アンティナイト』や魔法式保存の性質を持つ『瓊勾玉レリック』などその種類は多数存在する。
『瓊勾玉レリック』の解析を通し、魔法式保存の性質を持つレリックの複製は成功。人造レリック『マジストア』は恒星炉を動かすシステムの中核をなしている。
人造レリック作成に成功した現在でも、レリックについては未だに解明されていないことが多く存在し、国防軍や国立魔法大学などで研究が進められている。
2100年の戦略級魔法師
現代魔法は高度な科学技術の中ではぐくまれてきたものである為、軍事的に強力な魔法の開発が可能な国家は限られている。
その結果、大規模破壊兵器に匹敵する戦略級魔法を開発できたのは一握りの国家だった。
ただ開発した魔法を同盟国に供与することは行われており、戦略級魔法に高い適性を示した同盟国の魔法師が戦略級魔法師として認められている例もある。
2095年4月段階で、国家により戦略級魔法適性を認められ対外的に公表された魔法師は14名。
2100年時点で、各国公認の戦略級魔法師は以下の通り。
USNA
■アンジー・シリウス:『ヘヴィ・メタル・バースト』
■エリオット・ミラー:『リヴァイアサン』
■ローラン・バルト:『リヴァイアサン』
※この中でスターズに所属するのはアンジー・シリウスのみであり、エリオット・ミラーはアラスカ基地、ローラン・バルトは国外のジブラルタル基地から基本的に動くことはできない。
新ソビエト連邦
■イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフ:『トゥマーン・ボンバ』
※2097年に死亡が推定されているが新ソ連はこれを否定している。
■レオニード・コンドラチェンコ:『シムリャー・アールミヤ』
※コンドラチェンコは高齢の為、黒海基地から基本的に動くことはできない。
大亜細亜連合
■劉麗蕾(りうりーれい):『霹靂塔』
※劉雲徳は2095年10月31日の対日戦闘で戦死している。
インド・ペルシア連邦
■バラット・チャンドラ・カーン:『アグニ・ダウンバースト』
日本
■五輪澪:『深淵(アビス)』
■一条将輝:『海爆(オーシャン・ブラスト)』
※2097年に政府により戦略級魔法師と認定。
ブラジル
■ミゲル・ディアス:『シンクロライナー・フュージョン』
※魔法式はUSNAより供与されたもの。2097年以降消息を絶っているがブラジルはこれを否定。
イギリス
■ウィリアム・マクロード:『オゾンサークル』
ドイツ
■カーラ・シュミット:『オゾンサークル』
※オゾンサークルはオゾンホール対策として分裂前のEUで共同研究された魔法を原型としており、イギリスで完成した魔法式が協定により諸国に公開された。
トルコ
■アリ・シャーヒーン:『バハムート』
※魔法式はUSNAと日本の共同で開発されたものであり、日本主導で供与された。
タイ
■ソム・チャイ・ブンナーク:『アグニ・ダウンバースト』
※魔法式はインド・ペルシア連邦より供与されたもの。
2100年現在の世界情勢
世界の寒冷化を直接の契機とする第三次世界大戦、二〇年世界群発戦争により世界の地図は大きく塗り替えられた。現在の状況は以下のとおり。
USAはカナダ及びメキシコからパナマまでの諸国を併合してきたアメリカ大陸合衆国(USNA)を形成。
ロシアはウクライナ、ベラルーシを再吸収して新ソビエト連邦(新ソ連)を形成。
中国はビルマ北部、ベトナム北部、ラオス北部、朝鮮半島を征服して大亜細亜連合(大亜連合)を形成。
インドとイランは中央アジア諸国(トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、アフガニスタン)及び南アジア諸国(パキスタン、ネパール、ブータン、バングラデシュ、スリランカ)を呑み込んでインド・ペルシア連邦を形成。
個人が国家に対抗するという偉業を司波達也が成し遂げたため2100年にIPUとイギリスの承認の下、スリランカは独立。独立とともに魔法師国際互助組織メイジアン・ソサエティの本部が創設されている。
他のアジア・アラブ諸国は地域ごとに軍事同盟を締結し新ソ連、大亜連合、インド・ペルシアの三大国に対抗。
オーストラリアは事実上の鎖国を選択。
EUは統合に失敗し、ドイツとフランスを境に東西分裂。東西EUも統合国家の形成に至らず、結合は戦前よりむしろ弱体化している。
アフリカは諸国の半分が国家ごと消滅し、生き残った国家も辛うじて都市周辺の支配権を維持している状態となっている。
南アメリカはブラジルを除き地方政府レベルの小国分立状態に陥っている。
超能力者―サイキック―とは
『魔法』が確認された当初、その能力は『超能力』と呼ばれていた。しかし、その多くは微弱な能力しかもっていなかったとされている。後に超能力が軍事開発の分野に取り組まれる過程で、超能力者の多くは魔法を身に着け『魔法師』となっていった。
その後、二十一世紀末現在では魔法師は国家にとって重要な戦力に位置づけられることとなる。
亜貿社
榛有希(通称:ナッツ)と鰐塚単馬(通称:クロコ)が所属する殺し屋組織。非公開な会社だが、株式会社の形態をとっており、表向きの仕事は貿易業ということになっている。
犯罪結社ではあるが、『「社会正義」に基づき「悪」を社会から排除する』『法で裁けない悪人を裁く』という理念を掲げている。
社長は両角来馬という60代前後の男性。
36名の暗殺者が所属しており、各々がコードネームで呼ばれている。
マネーカード
プリペイド型プラスチックマネー。1枚1枚に上限金額が設定されていて、支払いのその場で金額を書き込む。入手方法は例えば上限1万円のマネーカードを10万円で10枚購入する、100万円の小切手を切って上限10万円のカード10枚と交換する、いった形になる。
額面と利用金額の差額は1日、1週間、1か月、半年のうちユーザーが設定する期間で集計されて精算され、ユーザーの口座に戻る。
ユーザーの口座を特定するIDは支払いの際に金額と一緒に書き込まれる仕組みになっているので、未使用のマネーカードは誰に対して発行されたものなのかわからない。
未使用のマネーカードは窓口で額面金額による払い戻しを受けることも可能。裏取引に使用する場合はこの仕組みを利用して、小口に分散して換金する。
フェザー・ラッシュ
意味は『羽根による鞭打ち』
黒羽亜夜子の攻撃魔法。羽や布切れ、紙片の群れを疑似瞬間移動で敵に向かって飛ばし衝突の直前で慣性中和を慣性増幅に逆転させる。エリカの『山津波』と原理は同じ。羽は柔らかさを保ったまま、増幅された慣性で勢いを維持して敵を打つ。その柔軟な打撃が無数の鞭で打たれたようなダメージを敵に与える。
敵を殺さずに無力化したい場合に使用する。
『桜』シリーズ
四葉家が統べる旧第四研(魔法技能師開発第四研究所)に開発プロセスごと譲渡された調整体シリーズ。
特性としては、2人以上(自分と護衛対象)の人間をカバーできる対物・耐熱魔法シールドに優れた能力を発揮できるように設計されている。
しかしながら、桜崎奈穂の場合は、直径数センチから十数センチ程度の小規模なシールドしか作り出せなかったため、護衛には不向きと判断された。
術式解体―グラムデモリッション―
圧縮した想子粒子の塊をイデアを経由せずに対象物へぶつけて爆発させ、そこに付け加えられた起動式や魔法式などの魔法を記録した想子情報体を吹き飛ばす無系統魔法。魔法といっても事象改変のための魔法式としての構造を持たない想子の砲弾であるため情報強化や領域干渉に影響されない。また、砲弾自体の持つ圧力がキャストジャミングの影響も跳ね返してしまう。
物理的な作用が皆無であるがゆえに、どんな障碍物でも防ぐことはできなく、射程が短いこと以外に欠点らしい欠点がないことから、現在実用化されている対抗魔法の中では最強と称されているのだが、並の魔法師では一日かけても絞り出せないほどの大量の想子を要求するため、使い手は極めて少ない。
司波達也が得意としている魔法の一つ。
『鉄』シリーズ
国防軍の調整体開発チームによって製造された調整体シリーズ。肉体の耐久性、スタミナ、想子保有量を重視した遺伝子操作が行われており、長時間の魔法戦闘を目的として製造された。シリーズ名の『鉄』には頑丈でスタミナが豊富なアスリートを形容する『鉄人』の意味が込められている。
若宮刃鉄は調整体『鉄』シリーズの第一世代であり、その中でも特に、大きな想子保有量を備えている。
『鉄』シリーズの調整体はすべて事故死したことになっており、若宮刃鉄以外の生存者は現在のところ報告されていない。
減速領域―ディーセラレーション・ゾーン―
一定の空間を対象に、侵入した物質の分子運動を含めた運動速度を一定の比率で低下させる魔法。極限まで効果を高めることで対象物が停止することも可能となる。『石化の魔女』は魔法の発動速度を劇的に高めることによって、対象を見ただけで速度を低下させることができる。