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 カルセドニーとのホットラインを一方的に切断したグレン・グナモアの前に、筋骨隆々のたいをした若い男が一糸まとわぬ姿で立っている。グレン・グナモアの執務室ではさきほどから、数人の女性たちがその男の全身を採寸していた。
「ええと……これはなにかの懲罰ですかね?」
「これはおまえの任務に必要な作業だ」グレン・グナモアは書類から目をはなさず返事をした。
「あのう……グレン・グナモア最高統治者様にお伺いしたいんですが。これはなにかの間違いでは……? ここにいるのはおれであってるんですか?」
「あっている」
「おれクリストバルっていいます、マリネリスの出身です」
「もちろん知っている」
「あのう、おれの成績をご存じなんですか?」
「わたしが知らないとでも?」グレン・グナモアははじめて書類から目をあげて言った。
「それじゃ……それじゃ自分は補佐官になったってことでいいんですか?」
「わたしの執務室にいるのだからな。だが正しくは補佐官候補生だ」
 女性たちは上半身の採寸を終え、今度は下半身の採寸をはじめる。グレン・グナモアはクリストバルの体つきをじっくり眺めてから言った。
「筋肉のつきがいい。いいトレーニングを重ねてきたようだ」
「はい、そりゃあもう頑張りました」
「だが思っていたより線が太い。少し落とせ、線を細く見せたい」
「あの、あの、なんでおれはいま裸でいるんでしょう……?」
「カニツァに聞け。採寸がすんだら下がっていい」
 終始無表情の女性陣による採寸がすんでほうほうていで着替えをすませると、クリストバルは禿あたまの男に連れられて執務室を出た。
 クリストバルは見ず知らずの女たちに裸体をさらすというはずかしめを受けたにもかかわらず、自分の顔がにやけているのがわかった。
 おれはどうやらほんとうにグレン・グナモア付きの補佐官になれるらしい……。
 母ちゃんは涙を流して喜ぶだろう。俸給はうわさどおりたっぷり出るだろうか? 実家にたくさん仕送りもして、いつかおれの名前を冠した学校を建てよう。退役して田舎に帰るころにはおれは故郷の英雄で、もしかしたらマリネリスの首長になれるかもしれない!
 クリストバルの幼稚な野望はどんどん膨らんでいった。
 にやつくクリストバルの前を歩く男は、背後に遠慮することなくため息を漏らしてから振り向くと、しきものに触れて汚れることを恐れるかのように手を差し出した。
「首席補佐官のカニツァです。近衛隊マウルスにようこそ」
 遠慮がちに出されたカニツァの手を、クリストバルは包み込むように力強く握り返す。
「クリストバルです。グレン・グナモアが質問はあんたにしろって言ってました。あのー、近衛隊マウルスってなんなんすか?」
「グレン・グナモア最高統治者のことは、総統とお呼びするように。グレン・グナモアと呼んでよいのは民だけなのです」
「たみだけ……」
 そんな話は初めて聞いたな、とクリストバルは思った。
 エリダニアは思っている以上に堅苦しい世界なのかもしれない。
「マゥルスは補佐官やお世話に当たる女たちなど、総統のそばに仕える者たちの総称です」
「へえぇ。あのう、腹が減ってるんですけど、昼飯はいつになったら食えますかね」
「顔合わせとミーティングを兼ねた昼食会を用意しています。ところで、総統の前でそんな言葉使いをしてはなりません」
「はあ、すんません」
「わたしは馬鹿は嫌いです」
 仕事はできるんだろうけど面倒くさいやつだな、とクリストバルは思った。その思いが顔に出ていたらしい。カニツァはクリストバルを別の補佐官に押し付けてさっさと行ってしまった。