冴島凛子
・舟歌 / ショパン
・ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲 / メンデルスゾーン
・The Entertainer / Billy Joel
真琴
「やっぱり凛子は真っ先にショパンなんだ」
凛子
「ショパンは外せないから。中でも一曲選ぶとなったら舟歌。最晩年の傑作。舟歌というと複合拍子系のゆったり流れる感じの歌曲風という意味なのだけれど、ショパンの舟歌はもうゆったりどころか息が止まりそうなくらい哀切で、わたしはこれ三途の川の渡し舟の曲だと思ってる」
真琴
「こえーよ。いくら死ぬ三年前に書いた曲だからって」
詩月
「二曲目のこれは……知らない曲ですね。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲というと私でも聴いたことがあるくらい超有名なアレがありますけど、ちがうんですよね?」
凛子
「ちがう曲。これはもうほんとにマイナーで全然演奏されないんだけどピアノとヴァイオリンのソロ二人が張り合うみたいにして交代交代で腕を披露しながら全然破綻しないものすごく端正な協奏曲。いつか演ってみたいんだけど信頼できるヴァイオリニストがいない」
朱音
「あたし! あたしヴァイオリン弾ける!」
凛子
「朱音は少しかじったレベルだから無理」
朱音
「ううううううう……返す言葉がない!」
真琴
「で、最後にすごい意外なのが来たな。でもビリー・ジョエルは"ピアノマン"だしそこまで意外でもないか?」
凛子
「これはワンコーラスが短くて、一回ごとにアレンジがどんどん華やかになっていく変奏曲形式で。すごく複雑なフレーズをビリーが弾きながら歌うのがほんとうにすごい。村瀬くんピアノもヴォーカルもがんばって。わたしはカスタネットでも演るから」
真琴
「いやおまえがピアノ受け持てよっ?」