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吸血鬼の姉とゾンビの妹が海外旅行だというのに日本に置き去りだけどどうしましょう……こっちは壊滅してるけど
第五章

 

   1

 溶岩の活動は弱まってきた……気がする。
 素人判断だからあてにはならないだろうけど、高い所から見下ろす限り、オレンジ色に輝く場所が少なくなってきた。冷えて黒く固まっているんだ。不規則な夕立みたいだった噴石ももう飛んでこない。
 チャンス、か?
「マクスウェル」
『パリ市内の監視システムは交通、気象、防犯、各カテゴリで大幅に低下中。システムの検索能力をあてにするのは得策とは思えません』
「どうせ大掛かりな官製サーバーに外から潜る糸口なんかないだろ。このスマホのレンズで調べられる範囲から始めよう」
『具体的な指示を』
「足跡検索。カタコンベではスーツケースの車輪が作った水の跡があっただろ。過去の映像を精査して付近から床の足跡や壁の手形なんかを痕跡を抽出、この焼け野原の中に同じものがある場合は全部風景に重ねて表示」
『シュア』
「言っておくけど、僕達の足跡は除外しろよ」
『システムをぽんこつ擬人化するのはやめていただきたいものです。期待に応えられそうにありませんので』
 ヴン! と。
 小さな画面の中に、いくつか四角い光の表示が増殖した。瓦礫を積んだ高所から、横に倒したスマホを両手で掴んだままゆっくりと一周回って撮影していくと……ある程度四角がまとまった場所があるのが分かる。
 もちろんいきなりパリ市内を全部スキャンできる訳じゃない。
 だけど取っ掛かりは手に入れた。
 ピエール=スミス。
 JBの一員。
 そういえば、連中は身内の事をキャスト、なんて言っていたかな。役者、俳優。脱獄したい、って考えているなら裏を返せば今はまだ敷かれたレールの上にいる自覚はある訳だ。
 アナスタシアも僕の隣でそっと息を吐いて、
「……JBの連中。ジェイルブレイクなんだからベースは英語圏なんでしょうけど、わざわざ自分達を呼ぶのにキャストなんてつけているのは、嫌いな名前を拝借する事で敵を食らって取り込む意味でもあるのかしら」
「?」
「キャストって、罪人を投獄するって意味もあるのよ。脱獄したがる人間が好んで使うと思う?」
 皮肉を込めて、か。
 ……なんか、それこそアナスタシアみたいなハッカー臭いセンスだな。まあ脱獄なんて言葉を使っている時点で明白ではあったけど。
 とにかくピエールはこのパリに存在する。どれだけ超人的なクソ野郎かは知らないけど、壁をすり抜けたり雲の上からパリを見下ろしている訳じゃないらしい。地に足をつけて現実世界に痕跡が残るような誰かであれば追いかけられる。
「まずはあそこか」
 手形や足跡の密集地帯をスマホの地図にピンを立ててマーク。後はあそこまで行って、またぐるりと一周撮影すればJBを追うための次のスポットが見えてくるはず。
 地図アプリはあくまで平時のパリ市街を紹介しているだけで、瓦礫、亀裂、固まり始めた溶岩までは網羅していない。進むのは大変そうだけど、それはJBサイドだって同じはずだ。
 実際にガラスだらけの道路を踏み抜かないよう気をつけて歩き、斜めになった街灯の傾いていない方をおっかなびっくり迂回して広場まで向かうと、だ。
「トゥルース、足跡が消えてるわ!」
「車を使ったんだ。マクスウェル、次はこのタイヤ跡を追跡」
 あまり焦りはなかった。地面に引いてある光のラインに従って歩を進めると、二〇〇メートルもしない内に無骨なワンボックスが乗り捨ててあるのを見つける。中を覗くまでもなく盗難車だろう。かなり雑に運転席のドアガラスが割られているのが分かる。
 これだけの瓦礫と冷えた溶岩の山だ。戦車でも持ってこない限り乗り物なんか役に立つはずがない。それに立ち往生した車をそのまま路上に捨ててしまえば、それ自体が渋滞の素になりかねないんだ。車は便利で頑丈な簡易シェルターだけど、災害のレベルが一定を超えると逆に閉じ込めや転落なんかの危険が増してしまう。
 ピエール側が乗り捨てるまで気づかなかったって事は、これは計画的な行動じゃないな。顔も知らない誰かの舌打ちが聞こえてくるようだ。
 そもそも国防省地下で義母さんとかち合って、自分で破壊したパリ市街を逃げ回る羽目になった事自体、JBからすれば計画外のアドリブなのか? 元々の脱出手段は使えなくなったとか……。
「マクスウェル、足跡は?」
『いくつかありますが、分布が妙です。地面ではなく、不安定な瓦礫を伝って建物の屋上を目指しているようですね』
 足取りを消そうっていう努力をしているなら、足跡はどうやっても完全には消えない事も自覚しているはず。
 となると、
「マクスウェル、危険物サーチを併用」
『この甚大な災害下なら何から何まで全部真っ赤なアイコンで埋め尽くされますけど』
「ひとまず爆発か毒物を最優先。追跡者が自分の足跡を正確に辿ってくるって分かっていたら、それはそれで簡単なんだ。一本道の途中に罠を張るだけで簡単に引っ掛けられるんだし」
 罠にかかって追っ手の数を減らせるならよし、相手が慎重になればその分距離を離して逃げられる。ローラー作戦みたいに全方位から物凄い人数で捜索されている場合はただ自分の居場所を教えるだけになるけど、僕達みたいに人数が限定されていて一方向からしか追えないと結構厄介になってくる。
『瓦礫の踏み台の下に三〇リットル容器あり。正確に成分分析した訳ではないので概算ですが、液体に対する光の透過を見る限りは水のようです』
「水?」
『水蒸気爆発狙いなのかもしれません』
「たった三〇リットルで? 確実性に欠けるな……。家庭用品だって爆発しそうなものって結構あるのに。ガスボンベとか、アルミホイルを加工するとか」
『そういう分かりやすいのは、逆に溶岩の熱で無意味に誤爆するからでは?』
 まあ警戒を促せれば追っ手の足を止められるのか。念のため踏んづけないよう迂回しながらも、基本は足跡を追ってずらりと並んだ建物の屋根を目指す順路を進む。
「ちなみに義母さん」
「何かしら」
「エジプト神話の神官? ピエールとかいう野郎は具体的に何をする人間なんだ。実際に取っ組み合いになったんなら色々分かったはずだろ」
 確かミイラのアークエネミーもいたはずだけど……。まあゾンビのアユミとブードゥーのボコールみたいなものか。必ずしも直接作る関係とは限らないかも。
「逆に聞くけど、正真正銘のアークエネミー……つまり魔王に力業で勝てる方法っていくつくらいあると思う? この世界に」
「……、」
 ダメだ。
 対アークエネミー用に特化する形で自らの肉体を隅から隅まで人体改造した禍津タオリ……つまり実の母さん以外に何も浮かばない。
「その一つを保有しているって事よ、最低でもね。ヤツはリリスやリヴァイアサンと真っ向から戦って勝つ力を持っている。そしてピエール=スミスの切り札が一枚きりだなんて誰も言っていないわ。私がその全てを引き出したともね。サトリ、自分の考えで前提条件を設定するのはやめておきなさい。敵はあなたの都合やレベルに合わせて強さを決めてはくれないんだし」
 やっぱりこの辺はJB。
 本物の神様連中さえ手玉に取るヤツらの技術レベルなら何でもあり、か。
 この意味不明なトラップはこっちの油断を誘うためのものかもしれないし、あるいはエジプト神話的に意味のある仕掛けだって線もある。
「……核兵器以下なら何が出てきても驚けないな、こりゃ」
「何でそれ以下って分かるの、トゥルース?」
「純粋な火力で核兵器以上だとしたら、フランスの隠し球を拾い集める必要はないからさ。自前のオカルト大爆発で無数の小惑星を圧縮して新たな惑星を作れば良い」
 とはいえ、だから安心とはならないんだけど。
 形のない呪いで距離に関係なく効果は百発百中とかだったらそれはそれで最悪、見方次第では大雑把な核兵器より怖い。しかも、まあ、フィクションやエンタメの刷り込みもかなりあるんだろうけど……おあつらえ向きなんだよな。
 エジプト神話に呪いって。
 こう、ミイラとかピラミッドとか、その手の話で呪いとトラップが出てこない方が珍しいっていうか。
「マクスウェル、エジプト神話の基礎知識とかって検索できるか? できるだけ初心者向けで」
『はるか昔の古代宗教なのに資料が豊富ではありますが、それでもやはりローマ帝国や十字架の影響で伝聞が歪められていますね。まあ、近代までは文字を読み書きできる人間が限られていたので編纂者の勝手気ままな憶測や先入観が混ざるのは仕方がない話ではあるのですが』
 個人的には、エジプト神話は北欧神話と同じくらい資料が豊富で、より優遇されている気がする。世界的な観光資源になっているからかもしれないけど。
「つまり結局何なんだ」
『ピエール=スミスの取り扱う技術が源流なのか亜流なのかで危険度が大幅に変わります。「本当の本当に」原液のままのエジプト魔術を扱う場合は手に負えません。おそらく現存するあらゆるアーカイブを検索しても答えは出てこないでしょう』
 歴史の闇に埋もれた、誰も知らない断絶した秘奥まで顔を出すっていうのか。こっちは日本人だからって陰陽道だの忍術だのの奥義を好き放題に繰り出せるって訳でもないのに。
 ……いやまあ、でも反則度合いで言ったら似たり寄ったりか。アナスタシアは弱点不明の妖精にしてメイドで、天津ユリナにいたっては七つの大罪クラスの力を持ったパートのレジ打ち魔王なんだし。
 マグマの勢いが弱まったって言っても一度崩れた街並みがすぐさま元に戻る訳じゃない。
 そもそもピエールを追って屋根を目指していたはずなのに、気づけば再び瓦礫の山を下っている。ヤツもヤツで焦りや迷走を感じさせる足取りだった。
 崩れかけた壁を避けて大きな通りの真ん中を歩き、潰れた車の前ではガソリンの匂いがしないか確かめてからその横を通り抜けていく。
「……いよいよ何区の何通りか目印がなくなってきたわ」
 アナスタシアがスマホと一体化したペットロボットを抱き締めながらおっかなびっくりって感じであちこち見回していた。実際にはそれほど歩いてもいない。瓦礫の山をよじ登ったり下を潜り抜けたり……なんて運動量の問題よりも、彼女の知るパリとはあまりにかけ離れてしまったからだろう。
 初めての僕だって、ぞっとする。
 マクスウェルが表示してくれる地図アプリだと、あくまで整然とした街並みなんだ。目の前の光景と全然違う。建物っていうか、そもそも道順が成立してない。真っ直ぐな一本道の大きな通りが、もう見つからない。まるで江戸時代の古地図を手にして今の街を歩いているような、時代の隔たりすら感じられた。
 時刻は……夜の一〇時前。
 まだ一〇時。
 感覚的には三日四日は歩き通している気分なんだけど、考えてみれば食事をしていない。脱水症状や栄養失調でぶっ倒れたりはしていないって事は、その程度の時間の中で収められるのか。
『サンプルと一致する足跡を発見、路地の奥です。壁に同様の手形を確認』
「路地って……ここか?」
『シュア。これまでの傾向から考えると、絶対通らなくてはならない一本道にはトラップの可能性が大です』
 言われなければ素通りしていたはずだ。
 なんていうか、隙間がない。
 元々はビルとビルの間にある細長い空間だったんだろうけど、全部埋まってしまっていた。石とかコンクリートとかでみっちり。かろうじて犬小屋の出入り口程度の穴が地面すれすれに空いているけど……。
「トゥルース、ワタシの出番?」
「よせアナスタシア。こんな所に潜っていって途中でつかえても助けてやれないぞ」
 アナスタシアには小さなペットロボットがあるけど、これも以下略。試しに手で掴んで穴の中に突っ込んでみたら、すでに表示は圏外になっていた。無理して奥まで進めたら立ち往生して回収できなくなる。
 けど、そうだな。
「アナスタシア、そのペットロボット借りても良いか?」
「何するの」
「マクスウェル、ケモノの顔になってるスマホと情報共有設定オン」
『激しく非推奨ッ!! ガチハッカーのスマホなんて汚染の巣窟に決まっていますが!!!!!!』
「いいから」
 マクスウェルの本体はこのスマホじゃない。最悪、手の中のこいつが壊れても日本に置いてあるハードウェアにダメージは加わらないんだ。ソフトウェア方面だって、何だかんだでこれまでアナスタシアの侵入を許した事はないしな。
「仕方がないだろ……。とにかくケータイスマホが二台いるんだ、片方はお前じゃなきゃいけない」
『ノー、しかしそれならアナスタシア嬢以外にも』
「じゃあ義母さんのケータイにするか? アブソリュートノアのボスキャラ級」
『……、』
 おや珍しい、あのマクスウェルがシュアともノーとも言えなくなるなんて。
「ちょっとトゥルース、こっちはお願いされている立場なんだけどその渋々感は何なのかしら?」
「つかお母さんのケータイと繋がりたくないってどういう事? 家庭不和がここに極まっているんだけど」
 ともあれ、だ。
『そのもの』でなくとも構わない。ひとまず形さえ整えば。木の棒とナイロン糸くらいどこにでも転がっているだろう。
 アナスタシアが怪訝な顔で、
「釣り竿?」
「この状況でわざわざ不安定なドローンを飛ばす必要ないだろ。火山灰とか上昇気流とかで何気に上は大変そうだし」
 手製の竿と糸。先につけるのはもちろんアナスタシアから借りたスマホ付きのペットロボットだ。
 瓦礫で塞がった細い路地を調べたいけど、流石にあそこへよじ登ったり下を潜ったりなんていうのは危険過ぎる。
 だからこその釣り竿。
 糸に縛りつけたペットロボットをぶら下げれば、瓦礫の上から安全に状況を確認できる。
 すぐに、いくつかの四角い表示が増殖した。
 ヤツの手形や足跡がある。
「見つけた」
『奥に向かっていますが、無意味な順路です。ここを無理に抜けるくらいなら多少回り道になってでも広い道を迂回した方が早くて安全なはずなのですが』
 わざと危険な道を進む理由としてすぐに浮かぶのは尾行を撒くため。事実としてJBは義母さんと激突して撤退している。核発射コードの書き換えって目的は果たしたにせよ、追っ手を警戒していないはずがない。
 災害よりも人間が怖いか、JB。
 まだ顔も知らないけど、少しずつお前の輪郭が見えてきたぞ。
「路地の先」
『デザンヴァリッド通りとなります。地図の通りならですが』
 相変わらずフランスの地名はピンとこない。名前だけ言われても自分がパリ市街のどの辺に立っているのかイメージするのが難しい。
 明らかにトラップ臭い瓦礫だらけの路地を通る訳にはいかないので、いったん大きな通りから崩れかけた建物を迂回する形で路地の反対側を目指す。
 すると、気づいた。
 いきなり人工物が消えた。迷路みたいだった目の前の景色が開けたんだ。
 緑の芝生に、黒々とした木々も見える。電気がないから分かりにくいけど、遠くの方に建物の影もあった。ダメージを受けてあちこち崩れつつあるけど、宮殿とか大聖堂とか、そんな感じのシルエット。
「なんだっ、自然公園? それとも何かの庭園かっ?」
『オテルデザンヴァリッドはナポレオン関係の記念施設ですね。彼の墓や軍関係の博物館などを収めています。こちらは周辺の広場でしょう』
 足元にあちこち亀裂が走っているのはどこも同じだけど、それでも硬い石やコンクリートばかりの街並みよりも土や緑で覆われた平地の方がダメージが少ないように見える。水気が多く、青々とした芝生や木々の葉が火の粉を弾いているからかもしれない。
 大規模な植物エリアを横目に見ながらデコボコしたアスファルトの通りを進むと、スマホに反応があった。
「手形と足跡!」
『路地の出口から広い道を渡り、そのままオテルデザンヴァリッドの敷地内に踏み込んだようですね。ただ方向からして、建物本体ではなさそうです。敷地内屋外、広場側に向かっています』
 ?
 樹木があるって言ったって彩り程度のもので、鬱蒼と茂る深い森なんて話じゃないだろう。じゃあJBの誰かさんはわざわざ開けた芝生の大地に向かって走っているのか? いくら停電下の真っ暗闇でも、逃げる人間が身を隠すにしてはリスクが高すぎる気がするけど。あるいは、ここはあくまで中継地点で、さっさと広場を横断して別の場所に向かっているとか……?
「……おかしいわ、トゥルース」
 アナスタシアがペットロボットを抱き締めながら呟いた。
「オテルデザンヴァリッドは倒壊の危険があるかもしれないけど、それにしたってその広場は緑の芝生と雑木林で飾られたかなり開けた土地よ。これだけ立て続けに災害がきたら安全も何もあったものじゃないけど、でも崩れかけたコンクリの中に留まるより公園や広場なんかに集まりたがるのが人間の心理ってヤツじゃない? それなのに……」
「人の気配が、ない?」
 アナスタシアと二人で、オテルデザンヴァリッドの広い敷地のあちこちにスマホを向ける。
 義母さんは自分の細い顎に手をやって、
「なるほど。どうやってズタボロのパリから脱出すると思ったら……。そういう方法なら、確かに開けた場所が必要ね」
「何かゆっくりと点滅してる」
 人の目には映らない。
 だけど機械を通して分析してみれば、スマホのレンズは確かに捉えていた。
「かなり強い光だ、紫外線だから僕達には分からないだけで!」
 隣から小さな画面を覗き見て、義母さんが息を呑んだ。予測が確定に変わったって顔だ。
「航空標識か、目には見えない紫外線でやる人間なんか滅多にいないけど。JBのヤツ、ヘリでも呼ぶ気みたいね!」
 道理で開けた場所から人を追い払った訳だ。いきなりヘリがやってきたらそれこそ助けを求める人達が四方八方から殺到してくる。
 しかし小康状態に入ったとはいえ、火山灰、水蒸気爆発、火災旋風とやりたい放題の噴火活動中に良くやる。並の技量じゃ助けに来たヘリまで墜落しかねないはずだ。
 急がないと取り逃がす。
 JBの目的は無差別な核攻撃じゃない。だけど放っておけば、念のために、追跡防止のために、そんな考えだけでこの先どれだけの街や国が吹き飛ばされるか分かったものじゃない。実際に、フランスの首都はその程度の理由で流星雨を浴びる羽目になったんだから。
 ここまで見てきたんだから分かる。
 JBはやる。
 空港があるとかミサイル基地があるとかたまたま近くの海を空母や潜水艦が往来していたとか、そんな理由が一個あれば世界中の街をお構いなしに消し飛ばす。
 だから見逃す選択はありえない。
 災いの芽はすでに出た。そいつは阻止できなかった。せめてこんな災厄がタンポポの種みたいに全世界へばら撒かれる前に、ここでJBを止める。ピエールから絞り出せば、世界のどこかに隠れたJBの全体像が見える。分かれば、そこから反撃できる。