【Pick up】エシュロンJPが傍受したスマホ越しの映像【Net files】
秘密基地と言えば橋の下に集めた段ボールやトタン板で作った小さな空間だった。でも放っておくと虫の棲家になってしまうので、定期的に掃除をしなくてはならない。当番は仲の良い友達同士で持ち回りになっていて、その日、やってきたのは小さな少年だった。
その偶然は幸か不幸か。
そこで彼は、美しい先客と出会っていたのだ。
『あら……ごめんなさい、ここはあなたの秘密基地だったんですね……』
『ねえお願い、お姉ちゃんは陽射しの下には出られないの。陽が沈むまで貸してもらえる!?』
秘密基地を使えるのは仲良しグループだけだ。
だから少年の要求は簡単だった。彼女達にも仲良しグループに入ってもらう。
『そりゃあ、まあ、そんなんで良いなら……』
『あらあら。でも、わたし達みたいなのを混ぜてしまって良いんですか』
そんなのは知らない。少年達の流儀には仲間外れという言葉はない。ああでもないこうでもないと取り留めのない話をしていく内に、彼女達の方がちょっとした変化に気づいたらしい。
『ふうん。お父さんとお母さんがケンカばっかり、ですか』
『誰だって悩みはあるもんだね』
最初は隠していたけど、でもどうにもならなかった。彼女達はあの手この手で少年から言葉を引き出していく。そして気がついたらもう止まらなかった。ボロボロ泣きながら、誰にも話した事のない『悩み』を存分にぶちまけていた。
『大丈夫、大丈夫ですよ』
下手な慰めなんて聞き飽きた。腫れ物みたいに扱って、ちっとも役に立たない奇麗ごとばっかり言って勝手に満足されるのはもう慣れた。結局、解決まで面倒見てくれる人はいないのだ。
『あはっ☆ それならわたしがお姉ちゃんになってあげましょうか?』
『あっ! ずるいナニ一人で勝手に決めちゃってんの!?』
くすくすと笑う二人に少年は目を白黒させるばかり。
『ねえ』
そして彼女達は言う。その美しい顔を寄せて、少年の目を見据え、何か試すように。
『もしもわたしが吸血鬼だったらどうします?』
『もしもあたしがゾンビだったらどうするよ?』