【Search Engine】特設会場へ走る少女【Absolute NOAH】
あの子は昔から引っ込み思案で、押しに弱かった。
小さな頃から頭の悪い男子達にからかわれる事も多かった。
中学に上がる時、無理して自分と同じ学校についてきたのは、きっと私立の女子校だったから、っていうのもあったんだろう。
だけど結局、それは根本的な解決にはならない。
あの子自身が変わらなければ意味はない。
ひょっとしたら自分の存在があの子の成長を妨げているんじゃないか。そんな風に思った事だって何度もあった。自分はあの子の盾になっているつもりで、実は上から蓋をしているんじゃないかと。
もちろん、あの子自身に『変わる』よう努力を求めてきた。そのために必要な事なら何でも手伝った。あの子自身も嫌がる素振りは特になくて、自分から色んな事を学んでいった。勉強、運動、人付き合い……。人を測るパラメータはいくつもあると思うけど、正直、今の自分があの子に勝っているとは思っていない。五分五分か、あるいはそれ以上。あの子はもう、自分を踏み台にして次のステージへ駆け上がれる位置にいる。
なのに、しない。
それを、やらない。
まるで狭い所を好んで潜り込む子猫のように、あの子は何故だか自分の背中に隠れる事を好んでいる。この部分だけは変えられないようで、すでにこの関係は歪なものになっているって自覚もある。
いいや。
そもそも、あの子が『人とは違う』のは何となく分かっていた。
それが顕著になってきたのはここ最近の事だけど、表に出てきて隠しきれなくなってくる前から、何となく、テレビの中で切り取られた有名人がそのまま目の前を歩いているような、そんな不思議な感じはしていたんだ。
住んでいる世界の違う人。
本来だったら一方的に切り離されてそれっきりだったかもしれない人。それでも。それでもあの子が最後の最後にすがってくれたのが自分だっていうんなら。
「待っていて、ミノリ。君はわたしが助ける……!!」