いくつもの高速道路が連結し、ぐるりと円を描く立体的なジャンクションだった。
厳密にはその真下。
多くの陸橋が頭上の大空を塞いでしまうため、ここだけは人工衛星の監視も届かない。前後に何台軍用四駆を挟んでいようが、襲撃にうってつけなのは変わらない。
まず後方から閃光がいくつか瞬いた。
わずかに掠めただけで最後尾の四駆の装甲表面が溶けて派手にクラッシュし、ビビった車列全体が急加速した直後だった。高さ一メートル、道をまたぐ赤外線レーザーを遮ると同時、道路の真横から無人制御でロケット砲が飛ぶ。
「よっし結局オフルート地雷が突き刺さったあ!!」
離れた場所にいるフレンダは小さな拳をぎゅっと握ってガッツポーズ。
まともに喰らった最前列の四駆が火だるまになればこっちのものだ。
勝手に玉突き事故を起こした黒塗り高級車はバンパーを車高の高い四駆の尻に嚙ませてしまったのか、ギャリギャリタイヤを鳴らすだけで前にも後ろにも進めなくなる。
ここまでやっても、防弾と耐ショック構造がしっかりしていれば中にいる兵隊達は瀕死であっても生き永らえるだろう。火だるまになっているのも外側だけだ。ただし、分厚いドアが歪んだり焼けついたりして開かなくなれば戦力外は戦力外。なまじ防弾車は頑丈なので、高い金を払って調達したヤツら自身も閉じ込められたらそこでおしまいである。学園都市では頑丈過ぎる防弾車は体当たりで水に落とせ、なんて格言(?)もあるくらいだし。
「まだ注意よ新入り」
「超はいはい」
後からやってきたロケバスから麦野と絹旗が外に下りる。麦野は運転席のドアを『原子崩し』で薄く焼いて運転手を脱出不能に。ターゲットの黒塗り防弾車は身動きが取れないので以下略だ。絹旗は細い腕を防弾の後部ドアに突き刺し、力業でドアを丸ごとバコリと引っこ抜く。
パパパパン!! という乾いた音が連続した。
しかし車内から子犬より軽いT字のPDWで鉛弾の連射を浴びた絹旗最愛は、仰け反る素振りも見せない。凝縮した空気の壁みたいなものが小口径の専用弾を強引に押さえつけている。
「ひっひひ、ひいいいい!?」
空になった銃器を振り回すおっさんを絹旗が引きずり出す。滝壺がゴルフに使う縦長のデカいキャディバッグを持ってきた。手足を折り曲げて人を詰め込むと拘束衣の代わりになる。
滝壺は無表情でほっぺたを膨らませて、
「むぎのがまだ注意よって言ったのに」
「していましたよ、だから傷一つないんです。それよりこいつどこに超連れていくんですか?」
「防音しっかりしているって言ってもいつものアジトには案内したくないし、下部組織さんがどこか適当なスポットを見繕ってくれるよ。潰れた工場とか病院とか」
いよいよ何をされるか分かったものではない、と判断したのだろう。
汗びっしょりで気持ち悪さ五割増しになった初老のおっさんが身も世もなく叫んでいた。
「こっ、警策くぅん!!」
「ヤレヤレ」