Episode1:百姫夜行 ③

 どうていを卒業するのは難しい。

 まずふうぞくは卒業じゃなくて中退だから絶対に認めない。第一俺は高校生だから無理だしな。

 それを念頭に置いた上で考えると、どうていにはえるべきハードルが多すぎる。

 まず当たり前だけど、自分から女の子にアプローチをかけないといけない。

 みなとのようなイケメンでもない限り、女の子は基本的に向こうから来てくれるものじゃない。常にいる競合のオス共から勝ち取る必要がある。

 そのためにはおしゃれを研究したり、女子ウケのいい話題を習熟するのはもちろんのこと、こういうだれとくな自分語りをしないように自制したり、男からするとつまらんなあという話でもしんぼうづよく聞いてあげたりと、とにかくマメな努力を重ねないといけない。

 しかもこれだけがんっても、れんあいじようじゆりつは100%じゃない。競合の男に取られたり、色々なアンマッチが起きて失敗するのはザラである。

 だから重要なのは試行回数だ。

 フラれてもフラれても折れずに、前回の失敗をかして次の女の子に向かえるたんりよくだ。

『彼女にしてもいい』と思える女の子を、機械的に探し続けるクールさだ。

 たかがセックスのためにこれだけやるのという、じやなプライドを捨てる覚悟だ。

 それらを全てそろえた上でようやくとうたつできるのが、どうていそつぎようという頂きなのだ──。

 ……ということをみなとに力説したら、やつは首をかしげてこう言った。


「分かってんならやりゃいいじゃん?」

「正論は死ね!」


 しばらくケンカした。おそらく人生で一番ムダな戦いだったと思う。

 教室を出るころにはすっかり日も暮れていて、俺はばこでため息をらす。


「何をやってるんだ、俺は……」


 分かってんならやりゃいいじゃん。そんなの言われなくても分かってる。

 でも分かっててもできないことってあるじゃないかと、俺は情けなくさけびたくなる。

 ──なんで心ですることに、頭で考えた理論を当てはめなきゃならない?

 ──そもそも人を好きになるために努力が必要って、根本的にちがってるだろ。

 理想のこいに期待するのは悪いことなのか。運命的な出会いをして、自然にこいに落ちていって、もうこの人しかいないとたがいに思える相手と手をつなぎ、初めての夜を過ごす。

 そんなこいに、俺は──。



『──……すまない。やはり私は、こうのことを、男としては……』



「……くそっ」


 またいやなことを思い出した。

 何回この負のループにまれば気が済むんだ。いい加減進歩がなさすぎる。

 これは対策を打つ必要があるだろうと、俺は天才としようされる頭脳を回転させる。


「…………よし、だつしよう。出家してそうになれば全て解決する!」


 そうと決まればさつそくしゆぎようだ。帰ってはんにやしんぎようしやきようするところから始めよう。

 俺はさとりの境地でばこを開く。

 ハートのふうろうがされたお手紙が一通、入っていた。


「──ありがとォぉおおおおおおお──────ッ!!!」


 だつ? アホか。俺は純愛に生きてやる!