第二章 「お兄ちゃん♀」
ラジオを何時間も聞いているとある問題が出てくる。それは視覚情報の問題だ。すなわち音声だけじゃ実物を見ることが出来ない。胃や腸などと言われても形や色はいまいちピンとこない。他にも問題はある。大事だと思ったことを形として残しておけない。
だが、フウはこれを自分の知恵で解決した。上級学校に通う、〈ドテン〉の学生が捨てた教科書とノート。これを再利用することで視覚情報の問題は解決した。教科書は図が豊富で、フウにとっては宝のようだった。
教育チャンネル〈タイラク教育学校〉のプログラムは日曜日に単語の復習プログラムやリスナーの気になった単元のハイライトなどがあるので、意識的に活用すれば学習の効率は高くなる。さらに、道中で気になった単語をメモし、それをノートに書きためていけばいつでも学習を振り返ることができる。
初歩的な識字と算術を教えてくれた母にフウは感謝せざるを得ない。
こうして一人の少女は小さな学校を携えて、何百回もチオウと第五管轄区の砂漠を往復した。教育はいつしか当たり前になり、フウはその自覚も無く枯れ果てた知識の泉に水を注いでいった。だが、フウはこうも考える。
――私が水で満たされるのは、私が空っぽだからでは。
学習は楽しかったが、フウの人生は充実しているとは言えなかったのだ。
