小森友恵
・交響曲第8番ヘ長調 / ベートーヴェン
・交響曲第3番ニ長調 / チャイコフスキー
・交響曲第7番ニ短調 / ドヴォルザーク
真琴
「小森先生は全部交響曲……! ありがとうございます。ありがとうございます!」
小森
「えっお礼言われるようなことなの? 普通におすすめ選んだだけなんだけど」
真琴
「いえ、それでいいです、それがありがたいんです」
小森
「ふうん? まあいいけど。ベト8はベートーヴェンの不人気交響曲四人衆の中でも多分いちばん人気ないよね。良い曲なんだけどなあ。いきなりキャッチーなメロディで始まるし、なんで人気が出ないのかわからないよ。教授がこの曲大好きでね、『のだめは第8番を使ってほしかった、第7番なんてもともとそれなりに人気があったのに』っていつも愚痴ってたんだよね」
華園
「8番が人気ないのはみんながベートーヴェンに求める暗さが一切ないからじゃないの。ベト好きなんてみんな陰キャだし」
小森
「先輩それ教授に言ったりしてませんよね……?」
華園
「直接は言ってないけどレポートに書いた」
真琴
「もっとだめだよ! 文字で残すな!」
小森
「気を取り直して! チャイ3は、これまた不人気で……。なんでだろう。舞曲も充実しててものすごく良い曲なのに。振り甲斐があって」
華園
「これもチャイコに求める暗さがないからでしょ。ニ長調って正直に書いちゃったのが失敗だよね。あたしが出版社ならニ短調交響曲ってことにしちゃうよ。どうせイントロはニ短調の葬送行進曲じゃん。ニ短調って書いとけばお客も、お、チャイコの暗い曲か、って期待してくれるのに」
小森
「先輩! 暗いかどうかしか考えてないんですかっ? じゃあ最後はドヴォ7! お待ちかねのみんな大好きニ短調、暗い情念たっぷりの名曲ですよ! でもやっぱり人気が弾けきれない! なんでだろ!」
華園
「ドヴォは逆に明るさも欲しいから」
小森
「難しすぎますっ!」