声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない?

 佐藤さとう由美子ゆみこはギャルである。
「んー……、よし」
 メイクを確認したあと、ぱちんとコンパクトミラーを閉じた。
 今日もばっちり、と頷く。
 アイロンをかけた髪はゆるく巻かれ、長さは背中に届く程度。顔には化粧をしっかり乗せて、つけまつ毛は長さ重視のストレートタイプ。耳たぶには銀色の飾りが光っていた。
 ブラウスのボタンをふたつ開けてハートのネックレスを覗かせる。
 キャラメル色のカーディガンを着込み、スカートの長さは限界まで短く。
 これが由美子の、学校で過ごすときの格好だ。楽しい学校生活を送る高校二年生。
 教室ではいつもだれかと話し、明るく笑っている。
「ねー、由美子。今週の土日、どこか行かない?」
「うん? 若菜わかな、バイトないの?」
「そなのー。暇なのー。ね、どう? 服とか見てさー、遊ぼうよぉ」
 今だってそう。クラスメイトの川岸かわぎし若菜わかなに、前の席から話しかけられている。若菜はにへへ、と気の抜けた笑みを浮かべていた。つられて由美子も頬を緩める。
 遊びの誘いは大歓迎だ。しかし。
「……あー、ごめん。店の手伝い入るかも」
「あ、そうだったね。お母さんとこのスナック、今も人足りないの?」
「そうそう。当日、急に手伝って、って言われることもあってさ」
「大変だねえ。んー、じゃあ、土曜日に空いてたら行こっか」
 若菜はにっこり笑い、穏やかに言う。良心がじくりと痛んだ。
 さっきの言葉は半分本当で半分嘘だ。
 急に行けなくなるかもしれない。それは本当だが、店の手伝いではない。
 親友である若菜にも秘密の仕事を、由美子はしている。
 それは、前日だろうが当日だろうが、するりとスケジュールが埋まる仕事だった。
「えー、なになに。どっか行くの?」
「土日? 遊びに行くなら連れてってよー」
 周りにクラスメイトが集まってくる。
 彼女たちの声に紛れ込ませるように、そっと息を吐いた。