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吸血鬼の姉とゾンビの妹が東京観光に来たようです。
……外はすごい事になってるけど
第四章

【mobile temp】第一号異種防疫手引書の取り扱いにあたって【file 06】

 ただでさえ人口過密の東京で、この水害の中、陸路を使うだけで関係省庁から一般住人までその全ての避難を完了できたかと言われれば相当苦しかっただろう。だが諸君は輸送ヘリやティルトローター機など空路も活用して迅速に渋滞や停滞の詰まりを除き、全員の避難を迅速に完了させた。感嘆に値するが、これだけでは足りない。
 以前、諸君らに貸与した資料は完全なものではない。抜け落ちを今から配布する。
 本資料は全員の一読を確認したら即時回収する。諸君の手元には残さないし、文面の写しや撮影も厳禁だ。一字一句覚え、そして死ぬまで抱えるように。
 今回のマニュアル、第一号異種防疫手引書は防衛省と厚生労働省が制作の主導を担い、光十字に外部監修を依頼した形のものだった。抜け落ち分は、特に光十字の個性が色濃く残った部分と受け取ってもらって構わない。
 諸君も知っての通り、光十字という国際組織はすでに存在しない。しかしマユツバな妖怪退治ではなく、現代戦という形で最も数多くの異種汚染源と秘密裏に実戦を重ねてきた事実は捨て置けるものではない。
 今回の事案の軸にいるものが本当に異種汚染源、通称アークエネミーの範疇に収まるかどうかははっきりしていない。しかし現状に最も想定状況の近いマニュアルは異種汚染源との戦闘・鎮圧行動のために制作された本資料となる。
 我々自衛隊に足りないのは頭数と経験だが、前者については無人機等のテクノロジーによって、そして後者については先人の知恵を吸収する事で底上げする。
 そのための資料だ。
 だから完全に覚え、決して洩らすな。
 目的は隔離領域の封鎖であり、余計な血を流す必要はない。しかし一方この混乱は、ここで食い止めなくては収まりようがなくなる。諸君らの筋骨を育て、支給された弾の一発までもが全て国民の血税に支えられてきた。よって無駄遣いは許されない。

 この国を守れ。
 諸君らの正当性は私が担保する、必要だと思う事については出し惜しみするな。
 以上。

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