【Unknown_Storage】他天体との接触について【file02】
軌道を外れた他天体、いわゆる彗星や小惑星等との接触被害については、以下の段階に振り分けられます。
なお、ここでは質量二〇キログラム以上の落下物を想定いたします。
レベル1
上層の熱圏を越える事ができずに消滅する場合。厳密には地表には接触しておりませんが、被害ゼロとは限りません。例えば落下物が金属質だった場合、大量の粉塵が飛散する事で磁気圏や電離層に多大な影響を及ぼし、地磁気の大幅な乱れを促すリスクがあります。結果、該当空域直下の地域では都市クラスまたは国家クラスでコンピュータ類を丸ごと破壊され、そこから生活インフラの寸断や社会秩序の崩壊などへの発展が予想されます。電源喪失による被害規模については、人口密度や地域単位のモラルによっても変わるでしょう。
レベル2
熱圏含む高層大気を抜けたものの、高度三〇〇〇メートル以下の低層大気において空気の摩擦などにより地表へ接触せずに空中分解する場合。ここでは多大な衝撃波が直下の地上を薙ぎ払っていく事になります。威力は落下物のサイズによって変わりますが、ロシア山林を焼き尽くしたツングースカ大爆発では実に二〇〇〇平方キロメートルにわたって被害が広がりました。
なお、中層大気で空中分解が起こった場合は衝撃波が地表まで届かないので、細かな落下物以外に大きな懸念点はありません。該当空域に航空機がない限り、せいぜい大粒の雹程度の被害となるでしょう。
俗に言う、天体リスクのラストチャンスがこの中層です。
レベル3
実際に、落下物が地表まで到達した場合。摩擦による熱、大規模な空気の攪拌、地盤への打撃などと共に、落下地点より全方位へ多大な衝撃波と大地がめくれ上がっての飛散物が大量に広がります。被害規模については落下物の質量によって計算できるでしょう。
なお、質量二〇〇〇トン以上の落下物の場合はレベル3オーバーとなり、こちらの場合は地表への接触と同時に起こる爆発によって大量の粉塵が舞い上がり、高層大気に長く滞留する事で全世界的に太陽光が遮蔽される、いわゆる氷河期が確定となります。
(参考までに。地球への落下物については月の発生原因から恐竜の絶滅理由まで様々な仮説に登場していますが、少なくとも人の手で明確に回収・保存された中での最も重たい単体の落下物は鉄製で質量約六〇トンとなります。
数字を見るとありえないと判断されるかもしれませんが、例えば火星と木星の間だけでも約四万の小惑星が舵も動力もなく無秩序に漂っている事実をお忘れなく。
月の成立として有力視される巨大衝撃説では、かつて地球へ火星に匹敵する質量の他天体が衝突した結果地球が砕けて大量の塵を宇宙へ撒き散らし、それが月の材料になったとまで語られるほどです)
*荒唐無稽な想定と思われるかもしれませんが、当施設ではハイリスクな感染性検体を取り扱っております。こと大深度地下への衝撃と電源喪失、この二点においてはあらゆる事態を熟考してフローチャートを構築すべきと判断いたしました。
その時が来てから慌ててルールを作ろうとしても、もう遅いのですから。