わたし、二番目の彼女でいいから。8

第28話 背徳センセイ ③

 私はシャツのボタンをひとつ、ふたつ、と外します。みゆきちゃんの、濡れた白い肌が露出します。黒い下着とのコントラスト。


「せ、先生……」


 みゆきちゃんは懇願するような瞳で私をみます。

 でも私はそれを無視して、シャツと肌のあいだに手をさしこみ、ハンドタオルで胸元を拭いていきます。やわらかく大きな胸が、面白いように形を変えます。

 私は、汚れなき少女の胸を、弄んでいるのです。


「あ……やぁ……そんな……」


 みゆきちゃんは身をよじります。でも、後ろから押さえつけられるような格好で、逃げられません。それをいいことに、私はさらにスカートについた水滴も拭いていきます。

 そして、太ももの内側にも手を入れます。


「ダメっ、そこは……」


 みゆきちゃんは腰を浮かして逃げようとします。でも後ろには私がいるので、みゆきちゃんが下半身を私に強く押しつける格好になります。


「先生、こんなのいけません……先生っ……」


 水を拭き終わったとき、みゆきちゃんは完全にできあがっていました。

 乱れた制服で、喘ぐように息をし、頬を紅潮させています。

 でも、まだです。まだなんです。

 横浜高等女学校の不逞教師たる私の手練手管はこんなものではありません。


「さあ、料理をつづけなさい」


 私はそういって、今度はドレッシングをつくらせます。みゆきちゃんは私に後ろから体を押さえつけられる格好で、湿った吐息をはきながら、調味料を混ぜあわせます。


「きちんと味見をしなさい」


 私は自分の指でドレッシングをすくい、みゆきちゃんの口元に持っていきます。


「どうすればいいか、わかっているだろうね」


 私がいうと、みゆきちゃんは可憐な瞳を曇らせながら私をみたあとで――。


「……はい」


 そういって、両手で私の手を持ち、そしてその舌で、私の指を舐めはじめました。きれいなピンク色の舌が、私の指先についた調味料を、遠慮がちに舐めとっていきます。


「もっとちゃんと味見しなさい」


 私がいうと、みゆきちゃんは、「……はい」と消え入るような返事をして、私の指を口の中に迎えいれ、口の中で、舌を動かし、吸い、舐めはじめます。

 十代少女の口の中を堪能することは、それはとてもとても官能的なことでした。小さく、温かく、それでいて繊細です。私は今、真っ白な少女を、汚していっているのです。

 さらに、私は指を少女の口の奥深くに入れます。


「あ……うぁ……せ、せんせい……」


 みゆきちゃんは苦しそうにします。顎があがり、口が開き、涎が垂れ、乱れた制服の胸元に落ちます。

 私は右手の指で少女の口を犯しながら、左手でその華奢な腰を強く抱きしめます。


「あ――」


 苦しいはずなのに、みゆきちゃんはとびきり甘い声をだします。そして――。


「先生っ、先生っ! 私、なにか――」


 そういって、腰をがくがくと震わせたのでした。

 少女の内ももを、一滴の汗のような雫がつたっていきました。


「――今日は泊まっていきなさい」


 私は、腕のなかで脱力した少女にいいます。すると少女は、少しの怯えと、期待の満ちた声でいうのでした。


「…………はい」


 少女が、完全に籠絡された瞬間でした。

 ……。

 …………。

 ……………………いかん。

 完全にみゆきちゃんのペースにのせられている。ていうか、みゆきちゃんが全然照れない。

 計算ちがいだ。もしかしたら、女優の才能があって、完全に人格が変わってしまっているのかもしれない。俺が不逞教師の人格になってしまうように。

 なにはともあれ、これ以上は危険だ。ふたりで暴走してしまう可能性がある。

 さすが橘さんの妹。

 そう思って、ゲームにストップをかけようとしたときだった。


「先生、ごめんなさい」


 みゆきちゃんは俺の腕のなかで、少女だけが持つ清楚な色気をはなちながらいう。


「私、ちゃんと料理できませんでした」


 たしかに、あんなことをしていたのだから、料理はめちゃくちゃだ。


「だから……指導……してください」


 視線の先には、恋愛ノートがあった。わざわざキッチンに持ってきていたようだ。

 そして、これみよがしに開かれたページは――。


『目隠し味覚選手権』


 一人を目隠しして、さらに手を後ろで縛り、もう一人がその相手の口のなかに食材を入れて、味を当てるゲームだった。口の中にはなにをいれてもいい、と注釈がうたれている。

 つまり、相手を完全に拘束して、口の中にものを入れるゲームだ。

 当然、過激になることが予想される。

 恋愛ノートの重ねがけ、恐ろしいことだ。

 やるべきではない。でも――。

 俺は教師になるべく、様々な先輩教師から学ぶ身だ。そして、師は多いほうがいい。であればやはり、大先輩である教師としての中島敦先生をやりきるべきではないだろうか。

 だから――。


「料理がうまくなるためにはまず、味覚がよくなければいけない」


 俺は腕のなかの少女に向かっていう。


「だから、このゲームを使って訓練しよう」

「………はい、先生……いっぱい、指導してください……」


 少女は濡れた瞳で、うなずくのだった。





 ◇


 とてつもない光景でした。

 女子生徒が私の部屋で、目隠しをされ、手を後ろで縛られて、床にぺたんと座っているのです。制服のシャツの胸元ははだけ、白い肌と黒いレースの下着がみえ、スカートもめくれあがっています。


「先生……そこに……いるんですよね」


 視覚を奪われた少女は不安そうにいいます。


「ああ。安心しなさい」


 私はそういいながら、少女の首すじをさわります。


「せ、先生っ」


 みえない彼女にとって、そういう刺激はすべて突然で、新鮮な驚きなのです。肌のあちこちをなでるだけで、驚きとともに体を震わせます。

 首すじ、肩、腕、とさわるうちに、少女の息は荒くなっていきます。さらに、めくれあがったスカートから伸びる白い太ももをさわると、「せんせぃ……」と身をよじります。それが一層、私の嗜虐心を煽るのです。

 そこまでやったところで、私はゲームをはじめます。


「指導をはじめようか」


 私はそういって、スプーンに調味料をのせて、みゆきちゃんの口に持っていきます。

 みゆきちゃんの、おねだりするようにだされたピンク色の舌。

 ゆっくりと、スプーンを差し入れると、みゆきちゃんは咀嚼したあとでいいます。


「お砂糖です」

「正解だ」


 私はそこからは真面目に調味料やなんらかの食材、お菓子の欠片なんかをみゆきちゃんの口のなかに入れていきます。みゆきちゃんは答えをいっていきます。


「おしょうゆです」

「みりんです」

「にんじんです」


 もちろん、この少女は自分がなにをされても抵抗できない状態であることを知っています。

 そして、この不逞教師に自分が最終的にどんなことをされるかも予感し、受け入れています。

 でも、私が焦らすようになんの面白味もないゲームをつづけるものだから、だんだんと体をむずむずさせはじめます。


「……チョコレートです」

「…………いちご味のグミです」

「……………………ヨーグルトです」


 少女はさっきまでの行為で体に宿った熱のせいで、なにをされるかわからない怯えがあるにもかかわらず、期待して、待ち望んでしまっています。

 でも、ここでさっきと同じ、指などを入れても面白くありません。だから――。

 私は、冷凍庫から大きな棒付きのアイスバーを取りだし――。

 少女の小さな口に、それを入れました。


「せ、せんせい……お、おおきい……」


 みゆきちゃんは苦しそうに、喘ぐようにいいます。


「全部、舐めきるんだ」

「……はい」


 少女は完全に私のいいなりでした。そして少女が、いいなりになることに、まったく抵抗がなくなっていることもわかっていました。

 みゆきちゃんは私にいわれたとおり、アイスバーを一生懸命、舐めます。

 私は彼女を手伝うために、アイスバーを上下に動かします。すると小さな口から溶けたアイスがあふれ、それがみゆきちゃんの胸元と、太ももを汚していきます。


「せんせい……せんせい……」


 みゆきちゃんはアイスを突っこまれ、舌足らずになった言葉で、私を呼びます。

 私はさらにアイスバーを手前に引いていきます。すると、みゆきちゃんはアイスバーを追いかけて、顔を前にだしていきます。私は後ろで縛っていた手を解放してやりました。そうやって完成したのは――。

 四つん這いになって、目隠しをされた状態でアイスバーを必死に舐めるみゆきちゃんでした。

 教室では凛とした顔の優等生が、教師の部屋で、犬のようになって、舐めているのです。

 嗚呼、中島敦先生。

 こういうことなのですね。

 無垢な少女を自分色に染める、それを世界は文学と呼ぶんですね。

 それはなんともいえない快感でした。

 みゆきちゃんは視覚がないせいか、恥ずかしさが薄れているようで、とても淫靡な音を立てながらアイスバーを舐めます。

 涎と溶けたアイスが混じりあったものが、口の端からこぼれ、床を汚します。


「わるい子だな」

「先生……ごめんなさい……」

「わるい子には、指導が必要だ」

「はい……指導してください……きつく、指導してください……」


 みゆきちゃんは、私が今からする指導がどんなものか、明らかに期待していました。私はそれにこたえるため、四つん這いになっているみゆきちゃんのスカートを――叩きました。


「せんせいっ!」


 みゆきちゃんは、甘い声で鳴きました。

 そしてその拍子に口の端から涎が垂れ、また床を汚します。


「ダメじゃないか」

「指導……してください……お仕置き……してください……」


 目隠しをされたみゆきちゃんは頬を赤らめながらいいます。だから私は、今度は乱れたスカートからのぞく黒いレースの下着と、白い肌の部分を――叩きました。


「せんせいっ」


 また、甘い声で鳴く。


「アイスもまだ残っているぞ」

「……はい」


 みゆきちゃんはアイスを舐めます。でも、すぐにまた口の端からこぼしてしまいまず。


「また、こぼしたのか」

「お仕置き……してください……」


 私はまた、みゆきちゃんを叩きます。その、繰り返しでした。アイスをこぼす、お仕置きする。みゆきちゃんが甘い声で鳴く。


「もっと……もっとお仕置きしてください……もっとぉ……」


 みゆきちゃんは途中から、明らかに嬌声をあげていました。腰を弓なりにしならせ、叩かれるたびに体を小さく震わせます。

 さらに、私は指先で、黒いレースの下着がどんどん湿ってくるのを感じました。

 下着の黒が、より深い色になっていきます。


「本当に……わるい子だな」

「はい、せんせい、だから、もっともっとお仕置きしてください」


 少女は完全に、叩かれるたびに喜んでいました。


「こんな下着で部屋にきたのはどういう理由なんだ」

「それは……それは……」


 私は強く少女を叩きます。



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