境界線上のホライゾン きみとあさまでGTA Ⅳ
最終章『きみとあさまで?』
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翌朝になった。
皆は緩く起き始めるが、

「ウワア、十時前ですよ……」

「う、うちじゃなくてよかった……」

「うむ。湯屋だったら朝方営業もあるし、こんな長居は出来んのう」

「ここ、本舗の営業時間は大丈夫なのですか」

「気分です」
ホライゾンの即答に、皆がまばらな拍手をした。
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浅間は、昨夜に作った記録をハナミにダイジェスト化させて確認。その内容は、

「コレ、相当に手直ししないと駄目なような……」
深夜テンションとは言え、フリーダム過ぎる。
同じように、ミトツダイラもトロコに記録をダイジェスト化させているが、

「ふふ、私との生活のピックアップがちょっと多いですわね」

『……!』

「トロコの出自がこんな深いものだと思いませんでしたの」

「プチネイトとでも言える存在ですわね」
なかなか好評だ。そして一方では、

「いやあ、何もやってないで匂わせばかりだったね!」

「思った以上に出番あって驚きですよ……」

「機関部に外の状況とかリアタイで流れるようになるのは新武蔵になってからだから、チョイとノリが悪い処あるさねえ、当時のあたしは」
誰もが、結局また話を始めてしまう。
皆、これだけの大きな記録を前にすると、すぐに熱が高くなる。
その一方で、改めての感想戦も始まっている。

「三河争乱の際、教皇総長がすぐに武蔵を止めに掛かる訳だよな。今振り返ってみると、ここは大きな布石の一つだ」

『忠世も、もう少し控えめにしてくれたら良かったねんけどなあ……』

「英国では極東の情報がIZUMO経由で届きますが、流石にこれは伝わってないものが多いですね。祭で偽神が召喚されたと、その程度は聞いた憶えがあります」

「こっちはサッパリだ。武蔵が三河にいれば違ったろうが」

『そういう意味でも、当時と今は大きく変わっていると判断出来ます。――以上』

「というか、御父様が、あんなに御活躍されるなんて……」

『呆然としなくてもいいのでは?』

「私としては、当時の教皇総長回りの流れが少なからず補完出来たので充分な収穫であります」

「Tes.、同意です。この一件が全て外に漏れていたならば、本国の武蔵に対する監視強化がもっと強くなっていたと思いますが……」

「ママ達の情報、明らかに聖連に漏れてないよね……!」

「結果として、三河争乱の勝敗にも繋がるのね」
言われてみると確かにそうだ。
三河争乱の、一年ほど前のことなのだが、

「繋がっていないものなど、無いのかもしれませんね」
しかし、と声が上がった。

「前総長達は、あれからどうなったので御座る?」

「今、武蔵上にいないようで御座りますが……」
その言葉に、己は頷いた。
喜美に視線を向けると、小さい笑みが聞こえた。

「うちの父さんが、本土で武者修行兼ねた歴史再現みたいなのやってるんだけど、それについて行ってるわ」

「ときたま、戻ってきて情報交換みたいなの、ありますね。
忠世さんは、どっちかっていうと武蔵とそちらを行き来して仲介役になってます」
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「アー! また先生にまかれた! 山中でも容赦ないなあ!」

「多分、下流の方に行っているのでは……」

「スガ君、そっち上流。あと野生の狸とか追いかけない。それで一回遭難してるんだから」

『おーい、先に宿場に来てるんですけど。――武蔵土産は早い者勝ち』
あ、クッソ、という鳥居の声が、山に響いた。
周囲は木々と落ち葉の斜面。山道はすぐに昇りの陰に消えていき、

「先が見えないけど、そっちが正解か」

「まあそうでしょうね。ほら、アレ」
と渡辺が槍で指し示した上方。遠くの空に、青い影がある。
一つではない。二つだ。

「武蔵と、大和だ。――昨夜や山の陰で見えなかったが」

「……何だよ、ほら、劇場艦、横にあるじゃん。春期学園祭だっけ」

「忠世さんの土産が楽しみです」
Jud.、と鳥居が頷いた。
歩き出す。
先が見えない山道を。しかし、遠くの空に見える影に向かって、

「――なあ」
問うた。

「ボクも、少しは何か、意味のあるものになったかな」
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どうでしょう、と浅間は思った。

「……記録の大体は、まあ、今夜中にまとめますけどね」

「出番の保持、御願いします!」
頼まれてしまうが、まあ、そういうものだろう。

「私にはよく憶えがあるものでありますが……」
クリスティーナが、静かに言った。

「人は、残ることよりも、残されることで、この世界の”意味”となるのだと、そんなことを思うものでありますね」

「Tes.、私のように”恐怖の具現”という存在でもない限り、そういうものですわね。
――受け継ぎ、語り、存分に思うことで意味となりますの」

「なかなか響く話よのう」
ええ、と自分は頷いた。そして、

「豊は、今回のGTA、どう思いました? 発案者ですが」

「はい! 発案当初は、母さん達のいかがわしい話が聞けまくると思いましたが……」
言われた。

「想像以上にいかがわしかったので、これから始まる春期学園祭などでも、宜しく御願い致します!」

「あらあら、では今回の雅楽祭、オオトリですし、アンコール権を頂けるように頑張りたいですわね」

「今回の劇場艦は段差があるから、ナイトとナルゼに向いてるのよね。ちょっと仕掛けを作らないと」
おおう、と声を上げたのはナルゼとナイトだ。
彼女達は、皆を見渡し、小さく笑う。

「――来年は、これからの春期学園祭と雅楽祭のネタでGTAかしら」

「恒例行事になったりしてね」
それもまたどうしたものか。だけど、

「それが”いつものこと”になるなら、それも有りですね」
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浅間は思う。
目の前にある記録。
いろいろなことがあった。
歌。
偽神。
将来のことや、先人との衝突。
そして、

……アイス!
あれからいろいろフレーバーを試しているが、

「解散前に、アイスを出しますね」

「おお! 味は何ですか?!」
はい、と己は頷いた。
ここはもう、これしかないだろう。彼に頼んで作って貰っておいたものだ。それは、

「――ラムレーズンのとっておきです」
喜美とミトは吹き出さなくていいです。