エロマンガ先生 妹と開かずの間
序文
我が家に妹がやってきた日のことを、いつも思い出す。
三月上旬、暖かい気候が続く中、その日だけは朝から冷え込んでいて、一面まっしろな空が俺たちを見下ろしていた。
春にふった雪のように儚げなあいつは、母さんの後ろに隠れて、俯きがちに俺を見つめていたっけ。
今日からおまえの妹になるんだぞ。
この子をよろしくね。
両親の願いに、俺は笑って、はい、と答える。
母さんに促され、おずおずと俺の前に進み出たあいつは、俯いたまま頰を赤らめ、小さな声で囁いた。
「はじめまして、兄さん」
妹とは、それからずっと、会っていない。