1 アインクラッド
2 ④
俺たちはしばし、黙り込んだままそれぞれの思考を巡らせた。
ナーヴギアは、フルダイブ環境を実現するために、脳から
しかし、まさにその機能ゆえに、今俺たちは自発的にフルダイブを解除できないでいる。
「……じゃあ、結局のとこ、このバグが直るか、向こうで
相変わらず呆然とした口調でクラインが
俺は無言の首肯で同意を示した。
「でも、オレ、一人暮らしだぜ。おめぇは?」
少し迷ったが、素直に答える。
「……母親と、妹と三人。だから、晩飯の時間になっても降りてこなかったら、強制的にダイブ解除されると思うけど……」
「おぉ!? き、キリトの妹さんて
突然眼を
「この状況で余裕だなお前。
無理やり話題を変えるべく、俺は右手を大きく広げた。
「なんか……変だと思わないか」
「そりゃ変だろさ、バグってんだもんよ」
「ただのバグじゃない、《ログアウト不能》なんて今後のゲーム運営にもかかわる大問題だよ。実際こうしている間にも、お前が
「…………冷めたピッツァなんてネバらない納豆以下だぜ…………」
クラインの意味不明な
「この状況なら、運営サイドは何はともあれ一度サーバーを停止させて、プレイヤーを全員強制ログアウトさせるのが当然の
「む、言われてみりゃ確かにな」
ようやく真剣味の増した表情で、クラインがごしっと
もしゲームのアカウントを消去すれば、その
「……SAOの開発運営元の《アーガス》と言やぁ、ユーザー重視な姿勢で名前を売ってきたゲーム会社だろ。その信用があっから、初めてリリースするネットゲームでもあんな争奪戦になったんだ。なのに、初日にこんなでけえポカやっちゃ意味ねぇぜ」
「まったく同意する。それに、SAOはVRMMOってジャンルの先駆けでもあるしな。ここで問題起こしたら、ジャンルそのものが規制されかねないよ」
俺とクラインは、仮想の顔を見合わせ、同時に低く息を
アインクラッドの四季は、現実に準拠している。ゆえに今は向こうと同じく初冬ということになる。
冷たく乾いた仮想の空気を深く吸い込み、肺に仮想の冷気を感じながら、俺は視線を上向けた。
時刻は五時半を回り、細く
直後。
世界はその有りようを、永久に変えた。