1 アインクラッド
3 ②
脳そのものが、言葉の意味を理解するのを拒否しているかのようだった。しかし、
脳を破壊する。
それはつまり、殺す、ということだ。
ナーヴギアの電源を切ったり、ロックを解除して頭から外そうとしたら、着装しているユーザーを殺す。茅場はそう宣言したのだ。
ざわ、ざわ、と集団のあちこちがさざめく。しかし叫んだり暴れたりする者はいない。俺を含めた全員が、まだ伝えられた言葉を理解できないか、あるいは理解を
クラインの右手がのろりと持ち上がり、現実世界ではその場所にあるはずのヘッドギアを
「はは……何言ってんだアイツ、おかしいんじゃねえのか。んなことできるわけねぇ、ナーヴギアは……ただのゲーム機じゃねえか。脳を破壊するなんて……んな
後半は
ナーヴギアは、ヘルメット内部に埋め込まれた無数の信号素子から微弱な電磁波を発生させ、脳細胞そのものに
まさに
充分な出力さえあれば、ナーヴギアは、俺たちの脳細胞中の水分を高速振動させ、
「…………原理的には、有り得なくもないけど……でも、ハッタリに決まってる。だって、いきなりナーヴギアの電源コードを引っこ抜けば、とてもそんな高出力の電磁波は発生させられないはずだ。大容量のバッテリでも内蔵されてない……限り…………」
そこまでを口にしたところで俺が絶句した理由を、クラインも察したのだろう。
「内蔵……してるぜ。ギアの重さの三割はバッテリセルだって聞いた。でも……
と、まるでクラインの叫び声が聞こえたかのように、上空からの茅場のアナウンスが再開された。
『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解または
いんいんと
『──残念ながら、すでに二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』
どこかで、ひとつだけ細い悲鳴が上がった。しかし周囲のプレイヤーの大多数は、信じられない、あるいは信じないというかのように、ぽかんと放心したり、
すでに、二百十三名のプレイヤーが。
その部分だけが、耳の奥で何度も何度もリピート再生される。
茅場の言葉が本当なら──二百人以上も、この時点でもう死んでいるということなのか?
その中には、きっと俺と同じベータテスターもいただろう。キャラネームやアバターの顔を知っている
「信じねぇ……信じねぇぞオレは」
「ただの
俺も頭の奥では、それとまったく同じことを
しかし、俺たちを含む全プレイヤーの望みを
『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることも含め、
「な…………」
そこでとうとう、
「何を言ってるんだ! ゲームを攻略しろだと!? ログアウト不能の状況で、
上層フロアの底近くに浮かぶ巨大な
「こんなの、もうゲームでも何でもないだろうが!!」
と、またしてもその声が聞こえたかのように。
『しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる
続く言葉を、俺は鮮やかに予想した。
『諸君らの脳は、ナーヴギアによって
瞬間、
いま、俺の視界左上には、細い横線が青く
ヒットポイント。命の残量。
それがゼロになった瞬間、俺は本当に死ぬ──マイクロウェーブに脳を焼かれて即死すると、茅場はそう言ったのだ。
確かにこれはゲームだ。本物の命がかかった
俺は、二ヶ月間のSAOベータテスト中に、恐らく百回は死んだ。広場の北に見える宮殿、《
RPGというのは、そういうものなのだ。何度も何度も死んで、学習し、プレイヤースキルを高めていく種類のゲームなのだ。それができない? 一度の死亡で、本物の命まで失うと? そのうえ──ゲームプレイを
「……
俺は低く
そんな条件で、危険なフィールドに出ていく
しかし、