I ―スクワッド・ジャム―

序章 ②

 その中で、わなに引っかかった相手が──、太さ40センチ、全長は5メートルはあるきよだいなミミズの化け物が、体の数カ所から赤い光をきらめかせながら、大地をたたくように暴れてのたうち回っていました。


「サポートやるよ! 全弾ぶち込め!」


 10メートルをけた黒い美女は指示を飛ばしながら足を止めて、AK─47をみぎかたしつけて構えました。


「りょーかい!」


 ピンクの少女は、その走るスピードを、一気に速めました。

 AK─47がえました。銃声が、空気をしんどうさせました。

 リズミカルなセミオートしやげきで放たれた7.62×39ミリ弾が、暴れる巨大ミミズへと吸い込まれていきます。

 銃の右側からはじき出されたにぶい緑色のからやつきようが、砂に落ちて低くねて──、そして小さな光のつぶになってはじけて、この世界から消えました。

 弾丸が走るそのすぐわきを、負けないほどの速さで、


「やー!」


 P90を、みぎかたに構えて体をぜんけいさせた少女が、小さな体でっ込んでいきました。そして、フルオートではつぽう

 ドラムロールのような連続するじゆうせいが、AK─47のきざむリズムに加わりました。

 P90の銃口から5.7×28ミリだんが飛び出し、きよだいミミズの体に次々と穴を開けていきます。銃の下には、金色のがらからやつきようが、たきのような勢いではいしゆつされていきました。

 体中にたまを食らっている巨大ミミズが、頭を半分割るような形で口を開きました。そして、不気味なほうこうを上げます。


「しっぽこうげき来るよ!」


 黒い美女が、AK─47の発砲をめてさけびました。


「了解!」


 ピンクの少女は、返事をしながら叫ぶと、それでも突っ込んでいきます。左手をP90からはなすと、ひだりもものポーチへとばし、そこに入っている、新しいマガジンをひっつかみました。

 巨大ミミズが大きくうねり、接近するピンクの少女に向けて、むちのようにしっぽをりました。


「ほっ!」


 ピンクの少女は、両足で砂を巻き上げながらジャンプ。優に2メートルほどの高さまで、び上がってきました。

 巨大ミミズのしっぽが空を切るその上空で、ピンクの少女はマガジンをこうかんします。まだ8発残っていたものをいさぎよく捨てると、機械のような素早さで新しいマガジンをたたき込みました。


「や!」


 そして砂地に難なく着地すると同時に、自分の足下にある巨大ミミズに向けて、P90の銃口を左右に振りながら、まるでほうきくような、ようしやのないフルオート連射。

 3秒後、体中に穴を開けて赤い光をき出していたミミズの化け物は──、

 細かな光の欠片かけらになって、あとかたもなくしようめつしました。



「えっと、待ちせ中にしてたのは……、なんの話だったっけ?」


 黒い美女が聞きました。ピンクの少女が、あきれ顔で答えます。


「イカがどうにかする大会の話でしょ? ピトさん、自分で言いかけてすぐ忘れる」


 ドロドロと不気味にうごめく空の下、二人はそれぞれの銃をスリングで肩にかけて、ばくをのんびりと歩いていました。さつばつとした環境と持っている物のぶつそうさを無視できれば、まるで親子の散歩のようです。


「そうだったそうだった。でも、レンちゃんにお兄さんズがいて、女子大生だってことは覚えてるよ?」

「うん、忘れて。──で、イカは?」


 ばくの散歩を続けながら、ピンクの少女が質問。


「イカはスクウィド。今回は──、スクワッド。おわかり? レンちゃん理系? 学部は?」

「え? わたしは……、まあ、それはいいから」

「お、引っかからなかった。学習したね。おねーさんうれしいよ」

「それはさておき、スクワッドって?」

「英語で〝班〟とか〝分隊〟って意味。軍隊で言う、中隊とか小隊とか、小分けの区分があるでしょ? 分隊は、その最小単位。だいたい十人くらいらしいけどね」

「ふーん……。ジャムは?」

「J、A、Mで、パンにるアレの意味もあるけど、元々は、〝ぎっしりし込む〟って意味なの。トラフィック・ジャムが交通じゆうたいの意味だって言えば分かるよね」

「うん、分かる。じゆうが作動不良起こして、からやつきようだんがんまるジャムといつしよでしょ?」

「そうそう。そっちを先に言えばよかったか」

「すると……、〝分隊が、ごちゃ混ぜ〟?」

「そういうこと。つまりはね──」

「つまりは?」

「スクワッド・ジャムってのは、この《ガンゲイル・オンライン》の中で、〝少数チームを組んでバトルロイヤルをやろう〟って大会なのよ」

刊行シリーズ

ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインXIV ―インビテーション・フロム・ビービー―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインXIII ―フィフス・スクワッド・ジャム〈下〉―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインXII ―フィフス・スクワッド・ジャム〈中〉―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインXI ―フィフス・スクワッド・ジャム〈上〉―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインX ―ファイブ・オーディールズ―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインIX ―フォース・スクワッド・ジャム〈下〉―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインVIII ―フォース・スクワッド・ジャム〈中〉―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインVII ―フォース・スクワッド・ジャム〈上〉―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインVI ―ワン・サマー・デイ―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインV ―サード・スクワッド・ジャム ビトレイヤーズ・チョイス〈下〉―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインIV ―サード・スクワッド・ジャム ビトレイヤーズ・チョイス〈上〉―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインIII ―セカンド・スクワッド・ジャム〈下〉―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインII ―セカンド・スクワッド・ジャム〈上〉―の書影
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインI ―スクワッド・ジャム―の書影