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 QLESTクレスト

 《Quantum Lamellar Expansive System Terminal量子薄膜包括システム端末》の頭字語であり、《もんしよう》または《頂点》という意味の英単語Crestと似た音を持つめいしようのこのデバイスは、二〇二八年に発売されるや人々の暮らしを一変させた。

 デバイスの本体は、厚さ〇・三ミリ、直径約五センチのじゆうせきそうはくまくコンピュータ。じゆうなんしんしゆくするので、体のほとんどの場所にることができる。生体電位でどうするためバッテリー切れとはえんなこのデバイスは、両耳に装着するマイクけんイヤホンの《イヤーピース》、両目に装着するカメラけんディスプレイの《アイレンズ》と無線接続することで、完全なユビキタス・ネットワークを実現したのだ。

 人体とゆうごうしたスマートフォンとでも言うべきクレストのきゆうは、日常生活やビジネス、コンピュータ・ゲームにもまた一大変革をもたらした。

 視界にサイズ自由の仮想スクリーンを出現させられるので物理的なモニタ装置が不要になり、現実世界の風景に情報を重ねるARゲームも数多くリリースされたが、多くのゲーマーが切望した完全なVRゲーム、つまりゲームを実現するには、クレストをもってしても大きなハードルが存在した。

 アイレンズとイヤーピースが作り出す仮想世界でプレイヤーが自由に動き回るには、現実身体の運動を何らかの手段でよくせいし、またしよつかくへいこうかく、深部感覚にも情報をあたえなくてはならない。

 そのブレイクスルーをげたのは、アメリカに本社を置くじようほうつうしんぎよう《アイオテージ》だった。

刊行シリーズ

デモンズ・クレスト3 魔人∽覚醒の書影
デモンズ・クレスト2 異界∽顕現の書影
デモンズ・クレスト1 現実∽侵食の書影