第九章 『休息場所の非休息者』
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風呂に入れて良かったと、アデーレは心底思った。

「あー……、ホント、何か今日はいろいろありましたね……」
奥多摩、地下にある鈴の湯屋”鈴の湯”だ。ここは自分達武蔵勢の溜まり場になっており、空詠みや卓球台も完全完備。夜に店を閉めてからは脱衣場を中心に皆で雑魚寝スタイルになりつつ作戦会議などが行われる。
武蔵において、他にこのようなことが出来るのは浅間神社と、青雷亭本舗だ。
しかし浅間神社は境内に天幕を張ったり、神楽舞台が寝所になるため、ちょっとキャンプ感覚が強い。
そして青雷亭本舗は総長の家で、名前の通り、多摩にある青雷亭の元となった店だ。かつては閉店していたが、今は総長がいる時間帯に限って軽食屋として営業する。菓子類が異様に美味いのが特徴だが、ここは総長だけではなく、ホライゾンに浅間、第五特務も共に住む空間だ。
寝泊まりの時、男連中は店舗側で椅子寝、女子勢は浅間達の部屋の壁を抜いて大部屋扱いにして過ごすことになるが、

「……ちょっと”生々しい”ときあるよね。調度の位置とか……」

「ティッシュの箱とか、枕の位置とかみると、”あらあら”って想像するわね……」

「片付けないと駄目ですわよ? また最初から出来ないじゃありませんの」

「そういうの全部言わなくていいですからね!? ね!?」
などと、全く否定がないところが凄まじい。
それらに比べ、”鈴の湯”は良い感じだ。風呂に入るので着替えを持って来る必要があるが、最悪、洗濯を得意とする白藻の獣に服を”掃除”して貰えばいい。
そして鈴が、番台に備え付けられた小型調理器と氷室から色々出してくるのも有り難い。
今夜は久し振りにダベり大会というか、作戦会議だが、

「デカい人達が……」

「あら? どうしましたの?」

「従士は各艦の警備や確認でお疲れであろうよ」
デカい……。背丈の話です。現実は見たくないです。
ともあれ風呂の中で、既に作戦会議が始まっている。
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「明日で一気にカタがつきますかねえ」

「流石に無理だろう。ただ、今日は実質半日強で三艦分クリア出来た。明日、倍くらい一気に行けたら御の字だなあ」

「初期とは随分と考え方が変わりましたわね。――でもまあ、明日の小田原征伐のあたりから、難所になると思いますわ」
というミトツダイラの声に、手が挙がった。世話子だ。彼女は皆を見渡し、

「明日以降、どのような流れになると思いますか?」

「逆に聞こう。――貴女にとって、今日の記録はどのようなものだった?」
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問われ、世話子は本日中に手元に来た記録のことを思い出す。
武蔵勢。今は羽柴勢が松平勢に合流した”武蔵勢”だ。かつて自分が三征西班牙で別の襲名を得ていた頃、羽柴勢はまだ正体を明らかにしておらず、ミステリアスな存在だったが、

「……まだ記録の範囲内だと、羽柴勢は不明な処の多い存在ですね」
そして、己は正直な感想を述べる。

「――武蔵が、三河を経て世界に出ようとして、アルマダ海戦にて手応えを得つつも、しかしマクデブルクで痛い目を見せられた、というところでしょうか。
――つまり、武蔵は、世界レベルの局地戦を凌ぐことが出来ても、世界全体を相手にするにはまだまだであったと、そういうことだと思います」

「ウヒョー、厳しいねえ」

「まあ実際の結果として、そう言われても仕方ないな」
武蔵副会長が、一つ頷く。

「次、――だから三国会議だ」

「……ここから先は、どうなるのですか?」

「再起だ」
即答が来た。武蔵副会長が、最上総長と伊達家副長、そして周囲の皆に視線を向け、

「自分達が何も出来なかったことに、私達は燻った。今でもあれを憶えている。皆が記憶から消せないでいるだろう。――その分、私達も武蔵も、強くなった」
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浅間は、三方ヶ原の結果と、その後を憶えている。
これはもう、次の前振りが始まっているんですね、と思いながら、

「……結構、大変だったんですよ? 武蔵が、本拠とすべき江戸に入れず、北にある水戸、そこに浮上している有明に保護されたことから、これまで武蔵に期待を掛けていた国々が離反的態度を取りましたから」

「――関東での敵は真田と北条だよね。まあ、仕方ない」


■ハイディ・オーゲザヴァラー
■呼名:オゲちゃん
■役職など:武蔵生徒会会計補佐 全方位商人
・シロジロの嫁で、儲かるためなら何でもする金銭ジャンキー。昔にシロジロと共にかなりやらかしたので、神罰として、やらかすと尻からうどんが出るようになったが、何とか執行猶予でのりきったらしい。しかし神罰の二発目が入ったりした。



■シロジロ・ベルトーニ
■呼名:シロ
■役職など:武蔵生徒会会計 全方位商人
・儲かるためなら何でもする金銭ジャンキーの親玉。基本的に武蔵や他の連中も金を稼ぐ手段としか思ってないが、解りやすいので味方として使える感。たまに裏切って神罰食らうが、なかなか懲りない。土下座の使い手で、要所で戦局や交渉をひっくり返す。


「おおお!? 何か今更出たよ!? ついでにシロ君のも!」

「”ついで”とか言わない……!」

「――でもまあ、やはり北条と真田の離反というか敵対は厳しかったな。P.A.Odaに近い位置にあって、武田が滅びてるから、向こうに付かざるを得ない」
その通りだ。だが、

「……真田は十勇士の襲名者が乗り込んで来ていて、改修されている武蔵改に爆弾しかけたり、正純達の暗殺を企んだりと、まあやらかしてくれたさね」

「こっちとしては、里見が羽柴勢に乗っ取られてしまい、羽柴の東側拠点になってしまったのは心苦しいところだったな……」

「まあ後で取り返せたし、羽柴の残したもので結構潤ったから良しとせえよ」


■大久保・忠隣/長安
■呼名:無し
■役職など:武蔵代表委員長 全方位交渉士
・二重襲名で眼鏡で左腕が義腕でエセ関西弁で後輩とか盛り過ぎ系。クール+辛辣だが、それは身内に対してであって、外面は非常に良い。歴史再現の関係で本多・正純に謀反を働き、失脚に追い込む予定があるが、なかなか上手くいかない。策士であり、戦術、交渉において正純の代理を務めることがある。

大久保さんは湯船に眼鏡で曇らないんですかね……、と思うが、キャラという処か。
ただこの大久保が、代表委員長として、当時は自分達の敵に回った。
そのことを想起したのか、話としても丁度のタイミングだ。大久保が世話子に向かって手を前後に振る。

「話の整理が、ちょう付いておらんな」
ええか、と彼女が言う。左肩から先、義腕で湯を掻き、世話子に波を送る。

「副会長は、敗戦からの再起を強く願ったんや。
せやから後ろ盾を得るため、奥州方面の三国に同盟の申し出に行った。
上越露西亜、最上、伊達の三国や」

「……どれも大国、強国ですね。羽柴との繋がりもある国です。
敗戦した武蔵に、何の交渉材料がある、と?」

「後の極東覇者である”松平”だということと、将来性やな。折しも奥州の三国、羽柴には全面的に従っている訳ではないし、問題を抱え取った。――こんな感じの、な」
・上越露西亜
:羽柴側についた浮上都市ノヴゴロドとの内戦。
:ノヴゴロドは大罪武装の所有者マルファが治めている。
:将来発生する松平の上杉への戦争”会津征伐”について。
・伊達
:いろいろと不安定な政宗を巡る問題。
・最上
:事変によって処刑され、霊体化した娘、駒姫を人質にされている。
表示枠に言葉を示し、複製。それを世話子に投げた上で、大久保が更に台詞を作る。

「この三国会議は、いろいろな提案をもって進められとる。たとえば将来を見据えて関東に集合的な大商業施設や、街道を作るとか、な。つまり極東の東を統合発展させるという計画で、これは大規模な高速輸送が出来る武蔵と輸送艦群の得意とする処や」
そして、と彼女が新しい表示枠を開いた。

「三国の問題は、一部が解決され、一部は後々での解決が約束された。
伊達家副長が、伊達家出奔の歴史再現をもって武蔵に入ったりもしている」

「Jud.、……拙僧の姉攻略スキルによって、成実を嫁に迎えたのだ」

「まあ、あれだけアプローチされて応えないのは粋じゃないわね」
この二人はちょっと常人じゃないレベルでクールだったり無茶なのだが、だからこそ良い相方同士だとも思う。正直、戦力や対外として、かなり救われているのだ。

「しかしまあ、そんなことがあっても、三国の協力については結局が”武蔵が実力を見せる”ことが条件や。それについては――」
あ、と浅間は思った。

……今までの大久保さんの説明って、コレ、実際は正純が指揮してやった事ですよね。
思う視線の先、大久保が視線を逸らすように言う。

「――面倒な処、まとめたったで、他、何があったんや、副会長、言うてみ」
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……ホント、大久保はよく解らんなあ……。
実のところ、大久保は、当時において重要な役割をもった人物の一人だ。
なので、彼女が語ったこちらの三国会議と、彼女自身の為したことを語る事で、当時の武蔵の状況を説明することが出来る。だが、

「――こっちが話す前に、遺跡関連とかそういうのあったろ。浅間ちょっと頼む」
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……うわあ、大久保さんが半目を向けてきてますよ……。
何故こっちに、と思うが、まあそういうものだろう。
ともあれ皆の視線が向いたので、自分は表示枠を開く。見せるのは水戸周辺の概要図だ。

「ええと、アレです。私達がこっち来て有明に保護される際、援護に出てくれた勢力があります。それが奥州平泉に住まう長寿族達、藤原家の方達でした」

「――――」
世話子が口元を歪めた意味は解る。

「三征西班牙は長寿族が多くいて、特に大内家として極東系にも加わってますけど、彼らは元々がこっち、平泉藤原からの流れですよね」

「思わぬ処で過去がつながったものだと思っています……」
ともあれ話が通じやすくて何よりだ。

「私達はそちらの代表である藤原・泰衡さんと会議しまして、後の協力や他勢力との連携を取って貰う約束の代わり、不可侵などの話をまとめました。その際、教えて貰ったのが、遙かな過去、黎明の時代にあった”天津乞神霊教導院”の実在についての話ですね」
告げた単語に、世話子が顔を上げる。

「……三征西班牙でも、優秀な者の教育機関として似たような名前のものがありましたが――」

「後に解ったことだが、そちらの機関は、これを模したというか、孫的な存在だ」
割って入ってすまんな、という手振りを正純が見せた。それに対し、こちらは会釈で返して、

「――これまで、創世計画から芋蔓式に二境紋を追って行く中で、たびたび”何処にもない教導院”の話が出ていました。どうやら、元信公が末世解決のために優秀な者達を集めていたのでは、という話ですね。
そして黎明の時代の、”あるのかどうか解らない教導院”が出て来たので、私達は調査に向かうことにした訳です」

「それは――」

「ノヴゴロドです。浮上都市の地下に、遺跡としてそれが遺っていることが解りました。ただノヴゴロドはP.A.ODAの支配下にあり、上越露西亜と抗争中だったんですね」
そこまで言って、自分は正純に視線を向けた。先を任せるという促しだ。
大久保さんが満足げに頷くのが可愛らしいというか。
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大体の流れは説明されたな、というのが、正純の感想だった。
とりあえず、という感じで言葉を作る。

「そんな訳で、私達の再起への流れは固まりつつあったんだ。
・三国の協力を得るために、実力を見せる。
・末世解決の手を探るため、関係していると思われるノヴゴロドを調査。
というところだな。だが、そこの大久保が謀反した」

「謀反?」

「臨時生徒総会だ。――武蔵は敗北した。被害も受けた。ならばここで、おとなしくしようと、そういう提案を出したんだ。
実際、水戸に封じられていても、外に出ない限りは羽柴勢も攻撃をしてこない。そしてP.A.Odaは創世計画を進めている。だから、末世解決など望まず、水戸を治めて満足していればいいだろう、と、そういうことだな」

「実際、拙者とキヨ殿が、そのあたりの警告に出ているので御座ります」

「あの時は王賜剣を思い切り叩き込んでしまって御免なさいねジェイミー」

「人としての器が違う……」
一般市民は大変だよな。

「――で、その臨時生徒総会は、どのように解決を?」
ああ、と己は応じた。

「公衆の面前でスカートとタイツを引き摺り下ろしたら解決した」

「オイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
いやでも実際そうだったぞ?
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「ともあれ武蔵は身内の争いを収め、内部工作していた真田十勇士を退け、武蔵改でノヴゴロド制圧に向かう上越露西亜の援護に出たのだえ」
義光は憶えている。
歴史再現の一つ”秀次事件”。羽柴の甥、秀次が、羽柴との行き違いによって処刑された事件だ。このとき、側室の一人であった最上・駒姫も同じく処されているが、彼女は霊体として残念し、ノヴゴロド方面に派遣されていた。

「ノヴゴロドで、武蔵勢はP.A.Odaの柴田と御市の夫妻、そして前田や佐々を退け、地下の遺跡へと到達したな。しかしそこにいたのは――」

「……元信公の”どこにもない教導院”の生徒だった阿蘭陀総長ウィレムだ。そして彼が二境紋に飲まれた事で、私達は謎を抱えた。
・元信公の創世計画と”何処にもない教導院”
・二境紋
・黎明の時代の”天津乞神令教導院”
これらに何らかの繋がりがあると、そう解ったからだ」
一気に事態は複雑化する。再起したと思えば課題を抱え込むのが此奴ららしいと、そう思うが、

「ノヴゴロドが落ちる際、駒姫は武蔵によって救われ、去って行った。――満足な親離れであったのだえ? ――手が空いた母狐は以後、手の掛かる子達を世話しに来ておると、そういうことであるのよ」

「なお、ノヴゴロドを落とした際、ノヴゴロド市長のマルファから、彼女が持つ大罪武装”憤怒の閃撃”を返却して貰ってますの」

「コレがまた当たらない武装でしてねえ……」

「ま、まあ、そんなこんなで、武蔵は三国の協力を取りつけることに成功し、再起を宣言した訳ですね」
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浅間は、言葉を続けた。ここで言っておくべきことがあるのだ。

「私達の方針は、敗戦から再起の中で随分と悩んだり、いろいろ考えて変わりました。
英国を出るあたりでは”哀しくなることを止めよう”という意味で”失わせない”だったのが、しかし三方原の戦いの際、私達は”哀しくなること”で救われましたし、死地に向かった当人達が実はそんなことを考えていない。
――寧ろ逆に”生きに行く”と、そうも教えられたんですね」
だから、

「生きるために必死になる人を”哀しい”と外から言うのは、その人の誇りを穢すことです。だから”哀しいことを止める”では足りない。
じゃあどうしよう、という問いかけの答えが、ノヴゴロドでは何となく見えたんですね。
駒姫さんは、救われることで満足して去って行きましたけど、それをどう言うべきなのか。
これは次の流れで、ホライゾンの言葉として明確になります」

「オタノシミニィ……!」
これ、ホライゾンは照れ隠しなんでしょうか。
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何だか入浴なのに休みになってませんわねえ、というのがミトツダイラの感想だった。
ただまあ、入浴会議も末世事変の中ではよくやったものだ。ゆえに自分は表示枠を出し、

「まあ、まとめてみるとこんな感じですわね。
◆三国会議------------------
・再起を目標として、武蔵の改修が始まる。
・羽柴勢が、再起と活動の中止を求め、警告に来る。
・武蔵は再起の後ろ盾を得るため、三国会議に向かう。
※三国=上越露西亜・最上・伊達
・三国会議を終了。実力を見せれば協力という結果に。
:伊達家副長が武蔵に入る。

「三国会議、でアッサリすませてますけど、ここが一番重いんですのよね。そしてまあ、並行して進んでいた事案が、次のものとなりますの」
◇末世解決について
・”天津乞神令教導院”の情報を得た。
・ノヴゴロドにその遺跡があると知った。
◇臨時生徒総会
・代表委員長、大久保の謀反によって臨時生徒総会が発生。
:再起を止め、水戸で上手くやっていこうという提案。
・正純の相対によって解決。武蔵は再起へと向かう。

「これが全部合流して、ノヴゴロドへ向かった訳だ」

「ノリノリですわねえ。――で、ノヴゴロドに向かいますのね?」
・ノヴゴロドにて、遺跡の調査。
:元信公の生徒であったオラニエ公ウィレムが先に来ている。
:しかし彼は公主隠しで消えてしまった。
:つまり遺跡と創世計画は関係してる?
・ノヴゴロドでP.A.Odaに勝利する。
:最上・駒姫の親離れ。
:三国の協力が約束される。

「とまあ、こういう流れで、私達は有明に戻っていく訳ですのね。――再起をして、さてこれからどうしよう、という話になっていきますの」
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「フフ、でもこれ、最後にコレを付け加えるべきじゃないかしら?」
・浅間とミトツダイラの、愚弟への好き好き度がアップ。

「モロバレでしたものねえ」

「アサマチのソーチョーへの心配具合とか、段々アップしていってて、尋常じゃなかったからねえ。それでいて自分で気付いたら”蓋”するから凄いんだコレが」

「狼騎士のキャンキャン振りも尋常じゃなくなってたわね……」

「満足に戦えるようになって、王との信頼度がアップしただけですのよ!?」

「いやまあ、トーリ君の加護設定とか私の担当ですからねー……」

「この期に及んで言い訳する意味あるのかしら……」

「私が最高に楽しいから最高です……!」

「豊! 疲労回復中なんですからおとなしく……!」
疲労回復中じゃなくてもおとなしくしていいんですのよ?
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ただまあ、と嘉明は脱衣場に敷かれた布団の上で呟いた。今、風呂上がりの身体や翼を温風術式で乾かしながら、

「私達が対武蔵特殊部隊として動き出したのも、この頃だったのよね」
言うと、同じように湯から上がってきた世話子が振り向いた。彼女は、短い髪を肩に広げたタオルに乗せつつ、

「……何故、正体を明かさなかったのです?」

「ぶっちゃけ二境紋。――アンジー達の過去と二境紋ってケッコー直結してて、アンジー達が過去について話そうとするとほぼ確定で出るんだアレ」
成程、と世話子が頷いた。そして彼女は、今日まとまった記録と、明日にアタック掛ける三国会議の概要を幾つかの表示枠で確認し、

「……密度が濃い……」

「私達の方も入ると、偉いことになりますが、流石にそれは無しで済むようですね」
そうだと有り難い。
だが疑問に思うのは明日の事だ。三国会議の概要は聞いたが、

「これの、何処がターニングポイントになるのでしょうね」
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あ、と大久保は手を挙げた。こっちは先に湯から出ていた派だ。卓球台を隅に出して、この手のものが全く苦手な義康相手にいろいろと教えている。

「自惚れで言うけど、私のところはターニングポイントにならんぞ。
あれはもう、結果が先に出ていたようなもので、私のは、その確認や」
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そして夜の内、今日の突入組と待機組が情報交換などを行い、記録の表出とその再現、クリアにおけるルールの推測や、体感的な現象について話し合った。
多くの部分でお互いが納得し、今後に活かしていくものとなったが、最も同意があったのは突入組の、

「成功するとブワーっと流体光が全面アゲになって”大成功――!”って感じになるんですよね。あのエフェクトだけ光学エフェクト加護にして販売したら、結構ウケると思いますよ!」
ということで、浅間が無言で術式作成の予定を入れたのであった。
ともあれ翌日。
攻略二日目が始まる。スタートは多摩、三国会議である。



