■第六話 冒険者試験 ④
『彼らは自身のアバターを損失する度に精霊石という形で代償を支払っているんです。我々の価値基準でいうと、大体一カ月分の給料くらいですかね。強い
ということらしい。
同情なんてする気は全くないが、デスペナルティごとに月収奪われるってのは控えめに言ってもクソゲーだと思う。俺なら絶対にやらないな、ウン。
しかし種族単位でレベルアップ厨な精霊の皆様方は、どうやらこのデスペナ=月収ロストゲーに夢中らしい。彼らは巨大武器の出現に多少
逃げるって選択肢は、正直言ってあまり得策じゃない。
コボルト達が持つ紫の矢じり。ゲーム時代の設定通りならば、あれの正体は、毒矢である。刺されば当然、痛いだけでは済まないだろう。
命を脅かす可能性のある敵集団との接敵。
だが、不思議と俺の心は落ち着いていた。
裏ボスの領域で行った戦闘訓練や、プロの冒険者さん達とやった野良
『マスター、今はまだリスクを背負う局面ではありません。迅速かつ丁寧な迎撃を』
『オーケー』
息を吸い込み、視界を見渡す。
通路に挟まれた地形。幅は三メートル弱。彼我の距離は約四メートル。敵は前方に五体。近接三。遠距離二。警戒すべきはコボルトの毒矢。
ならば……。
「っしゃらあっ!」
大声と共に重心と視線を右側にずらす。
声と視線につられて敵さんが右方向へ注意を向けた瞬間に、全身を逆方向に逸らして直進。
《脚力強化》によって上昇した俺の
彼らの意識がフェイントと気づくよりも更に早く敵陣の中枢まで乗り込んだ俺は、その勢いを利用した刺突でコボルトを
「ぎゃっ」という断末魔の叫びを放ちながら白い発光体となって消えていく子犬人間。奴の完全消失を大人しく待っている時間は残念ながらない。なので消えかけのコボルト付きツーハンデッドソードを振り回して、そのまま近くにいたもう一匹の首をチョンと
沈黙、発光、そして霧散。デジタルみ溢れる退場演出の後に残ったのは、小さな精霊石が二つだけ。
俺はすぐさま向き直り、残る前衛に焦点を合わせる。
「ギャア、ギャア!」
「グギャギャギャ!」
「ギャヒィ! ギリャア!」
あっけなく消え去ったコボルト達の末路に、残されたゴブリン達は悲鳴とも怒号とも取れるような叫声を上げていた。
だがそれが命取りだ。
敵の刃が喉元まで迫っているというこの状況で、我を忘れて声だけ上げるというのは下策中の下策。
悪いが戦いそのものに価値を
「「「ギャギャギャギャアアアアア!!」」」
耳をつんざく嫌な悲鳴の三重奏。
抜き胴によって仲良く上半身と下半身を引き裂かれたゴブリン達は、そのまま白い発光体となって退場。
唐突に始まった冒険者試験の初戦は、こうしてあっさりと幕を閉じたのだった。
『上々の立ち上がりですね、マスター』
『まぁ、良い準備運動になったと前向きに捉えていこう』
戦場跡に残った小石程度の大きさの精霊石を、支給されたショルダーバッグに入れながら遥か上空を見やる。
試験はまだ序盤も序盤。出鼻こそ
「待ってろよ」
言葉で自分を鼓舞しながら追跡を再開する。
「絶対に、絶対に追いついてやるからな」
『字面だけ切り取ると完全にストーカー野郎ですね』
蒼の迷宮に心底からの



