01 日曜日

「やった! 無人島スタート、大! 成! 功!」


 フルダイブ型VRの新作MMORPG『Irisアイリス Revolutionレヴォリューション Onlineオンライン』、略称IRO。

 普通に選ばれる初期スタート地点は三つ。帝国、王国、共和国の首都。ほとんどのプレイヤーがそのどれかを選ぶ。

 けど、俺はそのマップを最大まで拡大し、隅から隅まで調べまくった結果、いくつかのごく微小な地点を選べることを発見。それらの場所と近辺を検討した結果、この場所に落ち着いた。


〖無人島を発見しました!〗

【無人島発見:10SPを獲得しました】

【最初の上陸者:10SPを獲得しました】

【最初の島民:10SPを獲得しました】


「おお! 予想外のラッキー」


 まさかSPスキルポイントを30もゲットできるとは。これで初期SPと合わせて40SP。

 この島で生活してくにはいろいろとスキルを取得しないとだし、SPがたくさんもらえるのはめっちゃありがたい。


「とりあえずは元素魔法を取っとくかな」


 メニューからスキル取得で【元素魔法】を確認。元素魔法の発動に必要な装備……良かった、初期装備の初心者の指輪があれば大丈夫っと。

 SPを1消費して【元素魔法】を獲得すると、れいな水を出す〈じょうすい〉と火をつける〈ちゃっ〉ができるようになった。


「セーフゾーンはこの砂浜っぽいし、ちょっと奥を探索しないとな」


 ぼっちが続くと独り言が多くなっていけない。まあ、誰も聞いてないからいいか。

 奥へ進むとして、まあ普通にモンスターが出てくるよな。

 セーフゾーンでログアウトしておけば、モンスターに殴られる心配はないけど、それだと砂浜で寝起きしないといけなくなっていまいち。

 当面はそれでいいとしても、近いうちに小屋ぐらいは作りたいところ。

 そんなことを考えながら砂浜を越えていくと右手側に林が見えてきた。密林っていう方が正しいかな。と、その前に装備を確認しとこう。


【主武器:初心者のダガー】

【頭防具:なし】

【胴防具:初心者のかわよろい

【腕防具:なし】

【足防具:初心者のブーツ】

【アクセサリ:初心者の指輪】


 まごうことなき初心者装備。

 ゴブリンとかなら勝てるはずだけど、とりあえず【短剣】を取得。ついでに【解体】も取っておこう。

 うさぎとか鹿とかいのししを倒せたら食用の肉がえられるはず。


「シャー!」


 さっそく獲物発見、蛇かー。普通のシマヘビっぽいけど【サウスネーク】って名前。

 これは【毒耐性】を取っておくべきだったかな。ともかく倒してしまおう。サクサクっと。で、解体実行。

 おお、なんか肉確保。えーっと、これだな。【鑑定】を取得!


【サウスネークの肉】


 え? それだけ? スキルレベル上げないとなのか?

 使ってるうちに上がるだろうと先へと進むと、ちょいちょいと木の実なんかが見えてきた。


【パプの実】


 パプって何だ……。一応、集めておくか。

とうてき】を取得し、足元に転がってた石を拾う。

 いきなり当てたりはできなかったが、スキルアシストに従って何度か投げてるうちに、いくつかのパプの実ってのを確保。

 まだ空腹状態にはなってないが、蛇肉を適当に焼いて食べればしばらくはもつだろう。


「ピスピス!」


 はい、出てきました、お約束のウサギモンスター。二本角の兎。名前は……【バイコビット】か。

 石を投げる。……当たらない。石を投げる。……当たらない。石を投げる。当たった!

 タゲられてこっちに来たのでダガーでザクザク。そして解体。


【バイコビットの肉】


「よしよし」


 蛇肉と比べても美味そうな予感がするので、いったん海岸付近に戻り、さっそく調理開始といきますか。


 落ちてる枯れ枝なんかを集めながらスタート地点の海岸へと戻ってきた。

 まずは火を起こす必要があるんだけど、着火の魔法であっさりと。

 さっそく肉を……串がないな。

 適当な木の枝をバッサリやって、ダガーで串っぽい何かに……失敗。

 これはスキルが必要なんだろう。えーっと、これかな。【木工】を取って再チャレンジ……木の串完成。

 最初の製作者とか出るかと思ったけどダメか。もう誰かが取ったんだろうなあ。

 ともかく、兎肉と蛇肉に串をぶっ刺して火にかける。うーん、もうちょいかまどっぽい感じにしたい。ので【石工】を取得し、適当な石を積んでかまどを作成。


「……まあ実用に耐えればいいよな」


 これなら串が焼けてしまって肉が火にドーンもなさそうだし。

 焼き上がりまでの時間に木のコップでも作っておくか。

 いい感じの焼色になったので、さっそく……蛇肉からにしよう。毒はない方に賭ける。


「ふーむ、淡白。ってか味がほとんどしない……」


 どうやら毒も無さそうで一安心。次は兎肉。


「お、これはまずまず。シンプルな肉の味がちゃんとする。けど、調味料が欲しいな……」


 衣食住のうち『衣』はまあ初期装備でひとまず大丈夫。『食』も確保できたと考えてよし。さて、最後の『住』をどうするか……

 んー、一覧に山のようにあるスキルを調べる。調べる。調べる。


「木工と大工の組み合わせでログハウスを建てることができるっぽい? けど、丸太が必要だよなあ」


 丸太を確保できそうなスキル。採集……ではなくて伐採か。で、伐採にはおのが必要。斧なんてないし……


「まあいいや。とりあえず流木集めて簡易テントでも作ろ」


 海岸をぶらぶらして、それっぽい大きさの流木を数本集める。

 セーフゾーンにはテントを作れなかったので、密林へと入る手前に移動。

 骨組みを作っていると、


【ミオンが視聴を開始しました】


 と表示が出た。


『こんにちは。初見です』


 あ、配信……

 そうだ。このゲーム、デフォルト設定で配信するんだった。まあいいか。

 その挨拶の声は女性の合成音声に聞こえるが、本人がそうだとは限らない。むしろ、おっさんの可能性もある。


「こんにちは」


 無難な挨拶を返しつつ、設定を再確認する。視聴者コメントも音声のままだし、ちょっとうかつだったかな……


『これってIROですよね?』

「そっすよー」

『なんだか雰囲気が違いませんか?』

「あー、なんていうか、全然違う場所なんですよ。ま、今日はそろそろ上がるので」

『はい、また来ます』


 この場所を探すのに時間を食いすぎたので、今日はここまで。日付変わりそうだし。

 明日はテント作ってから島の探索かな。


 ゲームをログアウトし、VRバーチャルリアリティHMDヘッドマウントディスプレイを外してベッドから起き上がる。

 サイドテーブル上のタブレットにはさっきの配信情報が出ている。来訪者は一人、ミオンさんだけ。

 限定オープンということで新規プレイヤーは制限されてるけど、それでも五万人近くが配信してるはず。どうやって俺のを見つけたんだろ……

刊行シリーズ

もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ6 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ5 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ4 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ3 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ2 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影