06 金曜日 ④

 が、そのマップを拡大し、スクロールし、拡大し……大陸から離れた海上にある孤島を一つずつチェックしていくことで無人島スタートが可能になるわけだが……


「あ、うん、それそれ。その島の南端をズームしてみて」

『はい。あっ! 選択でき……あれ?』

「できなくなってるっぽいわね。これはやっぱり島からスタートできるのは一人だけにしてあると見るべきかしら?」

「っぽいすね。それなら、この情報は公開しちゃっていい感じです?」


 やり方を知ったところで、キャラを作り直して突撃される心配もなさそうで一安心。なんだけど、


「少し待ってもらえますかー? ショウ君が見つけた無人島スタートのポイントはここだけでしょうかー?」

「あ、いえ、もう十何箇所かはあります。その中で一番良さそうなここを選んだので」

「どこかもう一つ別の場所を教えてもらえますかー?」


 という話になって、もう一つ、次点候補だった場所をミオンに教えると、


『あ、ここは選択できます』

「なるほどー。これは伏せておいた方がいいかもですねー」

「なぜでしょう?」


 とベル部長。


「こういう場所は百箇所ぐらいしかないと思うんですよー。今、明かすと無人島スタートラッシュが始まってしまうんじゃないでしょうかー」


 あー……、やり方がわかれば、根気さえあればできるもんなあ。


「なるほど。流行りに乗って無人島スタートを始めてはみたものの、続かなくて放置されると困るのは運営側でしょうね」


 とベル部長。せっかく用意した無人島が無駄遣いされちゃうのか。まあ、それも覚悟の上なんだろうけど。


「それで何か問題が起きてー、ミオンさんのせいにされるのも嫌ですしねー」

「そうですね。公開はなしにしましょ。そういう質問はスルーということでよろし?」

「りょっす」

『はい』


 じゃ、検証は終わりかな。この後、ベル部長はIROやるんだろうし、俺もルピと遊ぶか。


「ミオンさんはウォルースト王国でスタートしておく? アクション系が苦手でも生産系とかもあるし、楽しみ方はいろいろあるわよ」

『えーっと……これって中断できますか?』


 中断? と思ったけど、ミオンはIROをプレイする気はあんまりないんだっけ。


「中断できますよー」

『じゃ、中断しておきます。ショウ君の島にすぐ行けるようになるかもしれないので』


 ……はい。


◇◇◇



「ワフッ!」

「おっと、おはよう。ルピ」


 飛びついてくるのを受け止めつつ配信開始。


『こんにちは』

「ようこそ、ミオン」

「ワフン」


 ん? ルピもカメラ見えてる? まあ、俺の相棒になったから見えててもおかしくないのかな。


『今日はどういう感じですか?』

「西側の探索はまだ浅い場所だけだし、今日は奥の方まで行ってみるつもり。ルピを連れてって案内してもらおうかなって」

『なるほどです』


 ルピが怪我して伏せってたあたりは前に調べたんだけど、特にモンスターがいたりもせず時間切れだった。

 あそこから奥は結構森が深かったんで、モンスターが出るとちょっとやばいかもなんだよな。


「ルピ。西側行くから案内よろしくな?」

「ワフ」


 任せろと言わんばかりに先頭を歩き始めるけど……大丈夫かな?

 ルピを怪我させた相手がいるだろうことは間違いないんだよな。まあ、気をつけつつ進んで、危なくなったら抱えてでも逃げよう。


 西側の森を進むことしばし。


「ここだったかな、ルピを見つけたのは」

「ワフン」

『奥の方、暗くて……なんだか怖いですね』


 ミオンの言葉に頷く。この前に来た時よりもなんかこう威圧感があるような……


「じゃ、ちょっと奥へ行ってみるよ」

『はい。気をつけてくださいね』

「ワフッ!」


 樹々の間が狭く、生い茂る葉に日光が遮られていて暗い。気配遮断スキルを発動し、ルピを後ろに従えて慎重に探索を始める……


 北へまっすぐ進むが特に変わったことはなし。一応【フォレビット】っていう長毛垂れ耳の兎がいて逃げていったぐらい。ノンアクなのかな?

 で、正面には切り立った崖。東西に伸びるそれは高さ二〇mぐらいある。

 一応、登れるか試してみたが、さすがにスキルなしでは無理そう。登山とかそういう系のスキルがあればワンチャンなのかもだけど。


「この崖、西の海岸までは続いてそうだなあ」


 左手側は崖がそのまま続いて、崖の高さがどんどん高くなってる雰囲気。

 逆の右手側は島の中央に向かって上りなので、崖は相対的に低くなる感じだ。


「やっぱり真ん中の方に行くべきかな。……ん?」


 その右手側、気配感知に何かが引っかかって近づいてくる。


「ウゥゥ……」


 ルピが急に険しい顔で唸り出したその先に……


「グルアァァ!」


 熊!? デカすぎ! 身長二mぐらいあるぞ!?

 ポップした赤いネームプレートには【アーマーベア】と書かれている。


「まずっ! 無理無理無理!! 逃げるぞ、ルピ!」

「ワフッ!」


 ルピが突っかかっていかないか心配だったが、ちゃんと聞き分けてくれ、しかも前を走って逃走経路に導いてくれる。

 樹々の間をすり抜け、倒木を飛び越えて南側に必死に走っていると、どうやら諦めたのか気配感知から反応が消えた。


 油断は禁物ってことでセーフゾーンの砂浜まで戻ってきたところで、ようやっと足を止めて腰を下ろす。追いかけられたせいで気配感知と気配遮断のレベル上がってるし……


「はー、助かった。めっちゃ怖かった……」

『大丈夫ですか!?』

「大丈夫大丈夫。でも、ルピがいなかったら道を選び間違えて捕まってたかな。ありがとな、ルピ」

「ワフー」


 んー、この熊に追いかけられるのもクエストの一部なんだろうか? 本当に偶然なのかな?


『あの熊がルピちゃんを怪我させたんでしょうか?』

「あ、そうか。ルピ、あいつにやられたのか?」

「ワフン」


 どうやら当たってるっぽい。


「じゃ、あいつにはいつかリベンジしないとダメだな」

「ワフッ!」


 今のレベルとか装備じゃ、かなりキツそうだし、いつのことになるやら。でも、あいつ倒さないと木を切りにも行けないよな。


「あの熊ってどれくらいの強さなんだろ? レベル上がったら倒せるんだろうけど、こっちはソロだしなあ……」

「ワフッ!」

『ルピちゃんが僕もいるよって言ってますよ』

「ああ、そうだった。もっと強くなろうな」


 そう言いつつ撫でてやると、さっき見せた険しい顔はどこへやら。

 まあ、まずはゴブリンを一掃してからかな。


■IRO公式フォーラム1


【帝国・王国・共和国】IRO雑談総合【みんな仲良く】

 雑談スレッドです。

 誰でも始めたばかりは初心者です。助け合いの心を忘れずに。

☆各国の特徴

・グラニア帝国

 血の気の多い国。討伐クエストが豊富。とにかく戦いたい奴はここ!

 けど、あまり治安が良くないし、NPCもなんかむかつく。

・ウォルースト王国

 穏和な防衛大国。探索や防衛のクエストが豊富。まったりRPG好きはここ!

 平和すぎて人が多すぎ。

・マーシス共和国

 商人の国。調達や護衛のクエストが豊富。各種生産系はここ!

 と言いたいが、ライバルも多いので注意。


【一般的な帝国民】

 適当に戦闘してるとレベル結構すぐ上がるね。

 現状のキャップって20だっけ? すぐ到達しそうな気がする。

【一般的な王国民】

 レベル5までは早いんですが、そこから先がなかなか……

 スキルレベルって10が最大なんでしたっけ?

【一般的な共和国民】

 戦闘系はまだいいけど、生産系はどうしても作業ゲーに。

 素材買って、生産しての繰り返し。

 お金は増えてるから文句はないんだけど。

【一般的な王国民】

 クローズドベータ組の話だとそうらしい。

 実際にクローズド期間中にスキルレベル10まで上げた人はいなかったって話だけど。

 まあ、始まったばっかりだし、焦る必要もないだろ。

【一般的な帝国民】

 新規に制限がかかってるし、実質クローズドベータの人数増やしただけだよな。

 あとから来る連中との差がつきすぎないようにってのもあるんだろうけど。

 新規制限は早めに解除して欲しいね。

【一般的な王国民】

 生産組には頑張って欲しいところ。

 そろそろ消耗品だけでなく、武器防具頼む……

【一般的な共和国民】

 作ってやりたいのはやまやまなんだが、失敗した時のリスクと効率を考えるとな。

 失敗しない、高品質になるナイフが一番儲けも出るんだよ。納品クエあるし。

刊行シリーズ

もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ6 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ5 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ4 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ3 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ2 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影