第2話 覚悟の担当 ④

 アキラはアルファを眺め、アルファはアキラを観察する。当初ランダムに変化していたアルファの姿が、その年齢、体型、髪型、衣装等が、少しずつ自分の好みに沿うように移り変わっていったことに、アキラは気付いていなかった。

 楽しげな、妖艶な、穏やかな、魅惑的な、優しげな微笑みを浮かべながら、アルファはアキラを観察し続けていた。


『服装とかのリクエストが有るなら何でも受け付けるわよ。あ、それとも全裸の方が良い? 全裸。やっぱり全裸の方が、この魅惑の裸体を堪能できるから、そっちの方が良いかしら?』


 その誘うような言葉に、アキラがまた少し慌て出す。


「何でも良いから服は着てくれ! 何でそんなに全裸押しなんだ!?」

『アキラも今の内からそういうのに慣れておいた方が、後でハニートラップとかに引っかからずに済むと思ったのよ。そういう訓練も必要だと思わない?』


 思う、と答えたら大変なことになりそうだ。アキラはそう考えて苦笑いを浮かべた。そして率直な感想の代わりに、照れ隠しを兼ねて少しねたように答える。


「……こんな子供を引っかけるやつはいないよ」


 アルファが逃げ道を塞ぐように反論する。


『今のアキラを引っかける人はいないかもしれないけれど、大金を稼ぐ有能なハンターを引っかける人は山ほどいると思うわ。アキラがそんなハンターになった時に、そういう人達にいろいろ邪魔をされたくないのよ。昔から女性で身を崩す男性は多いのよ?』


 それほど稼ぐハンターになりたいとは思うが、なれるかどうかと問われれば、そこまでの自信は無い。その自信の無さがアキラの口調に出る。


「……俺、そんなハンターになれるのかな?」


 それに対して、アルファが自信満々な態度で答える。


『なれるわ。何しろアキラには私のサポートが有るのだからね。少なくともアキラの意志以外は、私が誓って絶対に何とかするわ。意志とかやる気とか覚悟とか、そういうもの以外はね。流石にそれだけはアキラに頑張ってもらわないと、私にはどうしようもないわ』


 アキラはしばらく黙っていたが、やがて強い覚悟をはっきりと表情に出した。


「分かった。意志とやる気と覚悟は、俺が何とかする」


 アルファはとても嬉しそうに、満足げに笑った。その笑顔はアキラの覚悟をたたえる為のものであり、アキラの意志を自身の思い通りに誘導できたことへの評価でもあった。

刊行シリーズ

リビルドワールドIX〈上〉 生死の均衡の書影
リビルドワールドVIII〈下〉 偽アキラの書影
リビルドワールドVIII〈上〉 第3奥部の書影
リビルドワールドVII 超人の書影
リビルドワールドVI〈下〉 望みの果ての書影
リビルドワールドVI〈上〉 統治系管理人格の書影
リビルドワールドV 大規模抗争の書影
リビルドワールドIV 現世界と旧世界の闘争の書影
リビルドワールドIII〈下〉 賞金首討伐の誘いの書影
リビルドワールドIII〈上〉 埋もれた遺跡の書影
リビルドワールドII〈下〉 死後報復依頼プログラムの書影
リビルドワールドII〈上〉 旧領域接続者の書影
リビルドワールドI〈下〉 無理無茶無謀の書影
リビルドワールドI〈上〉 誘う亡霊の書影